辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
40 / 141

第13話 苦手なもの 4

しおりを挟む
 彼氏を巡るささやかなマウント。

 彼氏なんて影も形もない「部活命」の陽菜だ。だからこそ、ちょっとだけ羨ましくなるのは、この年齢ならではのこと。

 女の子同士の微妙な機微を知らぬまま瞬は珍しく自分語りを始めた。

「うん。だから、ちょっと背負しょった言い方だけど、曲がったこととか卑怯なことなんかも苦手かな。ほら、時々いるじゃん、汚いことをヤッても勝とうとするヤツとか」
「あ、います、います! 汚い人って」
「バスケをやってたじゃん? あれって汚いヤツって、とことん汚いんだよ。だから汚いヤツは苦手かなぁ」
「そうなんですね! なんか先輩らしいです!」

 ただの後輩が大仰に相づちを打ったのだ。ここで彼女がオチをつけるなり、のろけてみせるのが様式美というか、オヤクソクである。

 とうぜん、天音の次のセリフを期待する陽菜だ。

 ところが、天音が黙ってしまった。

 陽菜は自分の反応のどこが悪かったのかと、とっさに青ざめた。

「アマネせんぱい?」
「え? あ、うん、大丈夫、大丈夫だよ。ほら、そういえば、カラオケもあんまりキレイじゃなかったかなぁって思ってさ」

 明らかに何かを誤魔化そうとしている。

「いや、オレがカラオケを苦手なのはキレイさの問題じゃないぞ?」 

 空気を読まない瞬だ。

 何とかして流れを「アゲ」ないと、と陽菜は必死になった。

「あ~ さては、あんまり歌が上手いからファンが増えないようにしてるんですね~ 先輩、美声ですものね~ あ、大丈夫です。天音先輩みたいに素敵な彼女さんに、私なんかじゃ太刀打ちできないのは、よーく自覚してますから!」

 このあたりの持ち上げ方と自分の落とし方は、女の子のお作法だ。

 ここは、天音が「そんなことないよー 陽菜ちゃんなら、もっとスゴい彼氏が現れるよー」と持ち上げ返しつつ、彼氏は渡さないと再マウントしてくるのが正しい流れである。

 しかし、二人に挟まれた天音は、何かを考えるように黙ったままだった。
                                            
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...