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第13話 苦手なもの 4
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彼氏を巡るささやかなマウント。
彼氏なんて影も形もない「部活命」の陽菜だ。だからこそ、ちょっとだけ羨ましくなるのは、この年齢ならではのこと。
女の子同士の微妙な機微を知らぬまま瞬は珍しく自分語りを始めた。
「うん。だから、ちょっと背負った言い方だけど、曲がったこととか卑怯なことなんかも苦手かな。ほら、時々いるじゃん、汚いことをヤッても勝とうとするヤツとか」
「あ、います、います! 汚い人って」
「バスケをやってたじゃん? あれって汚いヤツって、とことん汚いんだよ。だから汚いヤツは苦手かなぁ」
「そうなんですね! なんか先輩らしいです!」
ただの後輩が大仰に相づちを打ったのだ。ここで彼女がオチをつけるなり、のろけてみせるのが様式美というか、オヤクソクである。
とうぜん、天音の次のセリフを期待する陽菜だ。
ところが、天音が黙ってしまった。
陽菜は自分の反応のどこが悪かったのかと、とっさに青ざめた。
「アマネせんぱい?」
「え? あ、うん、大丈夫、大丈夫だよ。ほら、そういえば、カラオケもあんまりキレイじゃなかったかなぁって思ってさ」
明らかに何かを誤魔化そうとしている。
「いや、オレがカラオケを苦手なのはキレイさの問題じゃないぞ?」
空気を読まない瞬だ。
何とかして流れを「アゲ」ないと、と陽菜は必死になった。
「あ~ さては、あんまり歌が上手いからファンが増えないようにしてるんですね~ 先輩、美声ですものね~ あ、大丈夫です。天音先輩みたいに素敵な彼女さんに、私なんかじゃ太刀打ちできないのは、よーく自覚してますから!」
このあたりの持ち上げ方と自分の落とし方は、女の子のお作法だ。
ここは、天音が「そんなことないよー 陽菜ちゃんなら、もっとスゴい彼氏が現れるよー」と持ち上げ返しつつ、彼氏は渡さないと再マウントしてくるのが正しい流れである。
しかし、二人に挟まれた天音は、何かを考えるように黙ったままだった。
彼氏なんて影も形もない「部活命」の陽菜だ。だからこそ、ちょっとだけ羨ましくなるのは、この年齢ならではのこと。
女の子同士の微妙な機微を知らぬまま瞬は珍しく自分語りを始めた。
「うん。だから、ちょっと背負った言い方だけど、曲がったこととか卑怯なことなんかも苦手かな。ほら、時々いるじゃん、汚いことをヤッても勝とうとするヤツとか」
「あ、います、います! 汚い人って」
「バスケをやってたじゃん? あれって汚いヤツって、とことん汚いんだよ。だから汚いヤツは苦手かなぁ」
「そうなんですね! なんか先輩らしいです!」
ただの後輩が大仰に相づちを打ったのだ。ここで彼女がオチをつけるなり、のろけてみせるのが様式美というか、オヤクソクである。
とうぜん、天音の次のセリフを期待する陽菜だ。
ところが、天音が黙ってしまった。
陽菜は自分の反応のどこが悪かったのかと、とっさに青ざめた。
「アマネせんぱい?」
「え? あ、うん、大丈夫、大丈夫だよ。ほら、そういえば、カラオケもあんまりキレイじゃなかったかなぁって思ってさ」
明らかに何かを誤魔化そうとしている。
「いや、オレがカラオケを苦手なのはキレイさの問題じゃないぞ?」
空気を読まない瞬だ。
何とかして流れを「アゲ」ないと、と陽菜は必死になった。
「あ~ さては、あんまり歌が上手いからファンが増えないようにしてるんですね~ 先輩、美声ですものね~ あ、大丈夫です。天音先輩みたいに素敵な彼女さんに、私なんかじゃ太刀打ちできないのは、よーく自覚してますから!」
このあたりの持ち上げ方と自分の落とし方は、女の子のお作法だ。
ここは、天音が「そんなことないよー 陽菜ちゃんなら、もっとスゴい彼氏が現れるよー」と持ち上げ返しつつ、彼氏は渡さないと再マウントしてくるのが正しい流れである。
しかし、二人に挟まれた天音は、何かを考えるように黙ったままだった。
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