辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第11話 策略 ~健~ 3

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 もちろん、その頃から、オレは復讐がすべてになっていた。

 だから親達の思惑なんて知ったこっちゃない。少なくとも、今はその時ではないのだから。天音に手を出すつもりなんてこれっぽちもなかったし、むしろ、兄妹だとその気が起きない、ってことに近かった。

 だから、目先の欲望が涌き起こるよりも、渉の復讐の方が大事に決まってる。

 結局、天音の引き出しは二度と開けることはなかったし、あの話が出ることもなかった。その後、アレがどうなったのかも知らない。

 オレ達は必死になって勉強しまくったんだから。

 おかげで、オレも天音も無事に合格した。もちろん同じ学校だ。入学式まで、オレの姿がヤツの目に触れないようにするのに気を遣った。ここで逃げられたら何のために苦労したのかわからないからな。

 それと同時に、天音への「洗脳」を開始した。

 ヤツがどれほど「いい人」なのか。

 天音の頭をヤツのこと一色にする。けっしてそれを気取られぬようにしながらだ。

 オレの言葉が麻薬のように天音の心を染め上げたのは二年生になった頃。長い長い企みだったけど、もちろん、その間も、ヤツを孤立させるための手を打っておくのも全力だった。

 ヤツを孤立させて、唯一の「理解者」は天音だけという状態にするためだ。

 孤立させる方は完璧。
 
 ヤツのあだ名「キモ竹」は定着した。完全に陰キャだ。影で何をやってるかわからないネクラキャラ。

 女子更衣室を覗こうとしているというウワサも定着した。
 教室で女子の体育着を盗んで、ニオイを嗅いでるって目撃情報もウワサになった。
 毎晩、ネコの死体をイジっているってウワサはあんまり広がらなかったけど、一部の女子がネットに上げるまでにはなった。

 全部、オレの仕掛けだ。

 今ではヤツに話しかける人間はいなくなった。あいつが大好きなバスケ部も「キャプテンの女を狙ってる」ってなウワサを真に受けたバカ達のおかげで、すっかり爪弾きだ。

 ヤツの高校生活は真っ黒になった。誰にも話しかけられない存在になった。作戦は順調だ。

 そして、天音がダメを押す。なんて言っても、暗い生活に現れた天使だぜ? ヤツも幸せの絶頂にあるはずだ。

 上げておいて落とす。

 今は幸せを噛みしめているんだろ? せいぜい、楽しめ。

 おまえがそこから地獄に叩き落とされるときが楽しみで仕方ない。


 ここからどん底に落としてやるからな。

 天音には悪いと思ったけど、あいつはそのためのコマでしかない。

 オレの復讐は、ここからが本番だ。そのためにも、コマがちゃんと動くようにしなくてはならないのだ。



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