辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
33 / 141

第11話 策略 ~健~ 3

しおりを挟む
 もちろん、その頃から、オレは復讐がすべてになっていた。

 だから親達の思惑なんて知ったこっちゃない。少なくとも、今はその時ではないのだから。天音に手を出すつもりなんてこれっぽちもなかったし、むしろ、兄妹だとその気が起きない、ってことに近かった。

 だから、目先の欲望が涌き起こるよりも、渉の復讐の方が大事に決まってる。

 結局、天音の引き出しは二度と開けることはなかったし、あの話が出ることもなかった。その後、アレがどうなったのかも知らない。

 オレ達は必死になって勉強しまくったんだから。

 おかげで、オレも天音も無事に合格した。もちろん同じ学校だ。入学式まで、オレの姿がヤツの目に触れないようにするのに気を遣った。ここで逃げられたら何のために苦労したのかわからないからな。

 それと同時に、天音への「洗脳」を開始した。

 ヤツがどれほど「いい人」なのか。

 天音の頭をヤツのこと一色にする。けっしてそれを気取られぬようにしながらだ。

 オレの言葉が麻薬のように天音の心を染め上げたのは二年生になった頃。長い長い企みだったけど、もちろん、その間も、ヤツを孤立させるための手を打っておくのも全力だった。

 ヤツを孤立させて、唯一の「理解者」は天音だけという状態にするためだ。

 孤立させる方は完璧。
 
 ヤツのあだ名「キモ竹」は定着した。完全に陰キャだ。影で何をやってるかわからないネクラキャラ。

 女子更衣室を覗こうとしているというウワサも定着した。
 教室で女子の体育着を盗んで、ニオイを嗅いでるって目撃情報もウワサになった。
 毎晩、ネコの死体をイジっているってウワサはあんまり広がらなかったけど、一部の女子がネットに上げるまでにはなった。

 全部、オレの仕掛けだ。

 今ではヤツに話しかける人間はいなくなった。あいつが大好きなバスケ部も「キャプテンの女を狙ってる」ってなウワサを真に受けたバカ達のおかげで、すっかり爪弾きだ。

 ヤツの高校生活は真っ黒になった。誰にも話しかけられない存在になった。作戦は順調だ。

 そして、天音がダメを押す。なんて言っても、暗い生活に現れた天使だぜ? ヤツも幸せの絶頂にあるはずだ。

 上げておいて落とす。

 今は幸せを噛みしめているんだろ? せいぜい、楽しめ。

 おまえがそこから地獄に叩き落とされるときが楽しみで仕方ない。


 ここからどん底に落としてやるからな。

 天音には悪いと思ったけど、あいつはそのためのコマでしかない。

 オレの復讐は、ここからが本番だ。そのためにも、コマがちゃんと動くようにしなくてはならないのだ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

処理中です...