辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
31 / 141

第11話 策略 ~健~ 1

しおりを挟む
 元々、天音とは仲が良かった。好きな食べ物も同じだったり、遊ぶときだって妙に気が合ったし。足の速いことも同じで、小学校との時なんて、学級対抗リレーの常連だった。

 うちの両親も、天音の両親も一緒になってオレ達を応援してくれたっけ。そして、運動会が終われば、お隣と一緒になって「祝勝会」だと言って、一緒に晩ご飯を食べるのも、その日にどっちかの家にお泊まりするのも、お決まりのことだった。

 子どもの頃から、オレと天音、そして渉は一つの兄妹みたいなものだった。

 しかも、中学3年の時期に、天音には特別な事情ができたんだ。

 天音の父親が急に出て行って家の中が荒れ模様になった。あれだけ優しくて真面目そうなお父さんが急に出て行くなんて思わなかった。そして母親は冷たい目になっていた。

 今になって分かるけど、あれはおそらく、お父さんの浮気だったんだろう。 

 玄関先で土下座してる父親の姿が最後だったってのが近所の噂だった。

 わからないもんだよな。あんなに子煩悩こぼんのうで、天音をちょくちょく旅行に連れて行っては、ウチにもお土産をくれた良い人だってのに。

 そもそも、渉と一緒になって年中お泊まりしたり、されたりの関係だった。三人でお風呂に入るのだって当たり前。ホントの兄妹以上に仲が良かったんだ。

 オレ達の両親も、天音の両親も結婚してすぐに建て売りのこの家に越してきたらしい。ベランダがくっつくようにして建てられた二軒は、構造まで同じだった。

 当然のように、うちの両親と天音の両親は、すぐに仲良くなったのだとか。

 親父は良く言っていた。

「オレが出張がちなだけに、松永さんと仲良くなったのは心強かったよ」

 両家は健達が生まれる前から家族ぐるみの付き合いだったわけだ。 

 それぞれの家には長男オレ長女アマネが同じ時期に生まれた。だから、オレと天音が仲良しになるのも当然だっただろう。

 オジさんもオバさんも、あの頃は優しかったよなぁ~

 ただ、オバさんは、もともと仕事が忙しい人だった。しょっちゅう遅くなったし、家に帰ってこない日だって珍しくなかったから、あれじゃあ、オジさんだって浮気したくなるんじゃないの?

「健君のママには、ずいぶんお世話になったんだよ。ウチのが帰って来ないときは、よく晩ご飯を作りに来てもらったんだ。スゴく優しくてね。いろいろお世話してもらった。今でも本当に感謝してるんだ」

 そんな風にしみじみと言われたことも二度や三度ではなかった。

 でも、天音の親との交流がなくなったのは、ちょうど渉の事故があった後だよ。オジさんの顔をいつの間にか見なくなったのと、オバさんの顔が鬼のようになっていたことだけは確かだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...