辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
26 / 141

第9話  憂鬱 ~天音~ 1

しおりを挟む
 瞬のもので溢れかえっている天音だ。

 さすがにシャワーだけはしたが、時々、トロッと流れ出す感触は、かつて知っていたものとは違って、幸せそのものの感覚だった。

「健、今日だけは来ないでね」

 ふっと、そんな言葉が出ていた。

 幼馴染みの顔を、今日だけは見たくない。寝るまで、瞬のことだけで埋もれていたい。こんな風に考えるのは、幼いときからみても初めてだ。

 来ても、知らんぷりしちゃおう~っと。ゴメンね。

 最初から、ちゃんと窓にカギは掛けたままにしてあるし、カーテンは隙間無く閉めてある。電気も消えてるから、大丈夫だよね?

 それにしても、素敵だった~ 

 まだ瞬が中にいるみたい! 

 久しぶりに受け止めた感覚は、すごかった。ベッドに残ってる微かなニオイ。耳に残る声。

 それに、何よりも、嬉しかったことがある。

 あぁ、思い出しちゃうよ、あの言葉。

「過去のことだろ? 今の君が好きだから」

 もっと気にすると思ってたのに。ひょっとしたら、トコトン聞かれて、それで嫌になってってことだってあったかもしれないのに。

 知らんぷりはしてくれるかと思ったけど、まさか、それを認めて乗り越えてくれるなんて。

 なんてスゴイ人なんだろう。

 私はそんな人に愛されて、中まで満たしてもらえたんだなぁ。頑なに私の中を満たすことを拒んできた人とは違うんだよね。

 あの人は、きっと身体の快楽だけがあればいいと思ってたんだ。だから、変なことをいっぱいさせたり、エッチな言葉を言わせたり、無理やり恥ずかしいポーズをさせて、写真を撮ったり……

 そうやって興奮させておいて何度も私をイカせて喜んでた。お泊まりの時なんて、毎回、狂っちゃうほど気持ち良くされて、最後は、クタクタになって寝ちゃうほどだった。

 そうやって気持ち良くされていたのは確かだったけど、私を妊娠させないようにすることには気を遣ってた。絶対に妊娠させない。それがあの人の決意みたいなモノ。

 瞬は全然違う。

 そりゃ、最初のは失敗しちゃったからだとわかる。でも、心の中に、私と深くつながりたいって思ってくれたから、忘れちゃったんだと思うの。

 私は気が付いていたけど言わなかった。だって、ぜんぶを受け止めたかったんだもん。

 初めて身体の奥で受け止めて、やっぱりあれが女の幸せだとわかったわ。好きな人を女が一番深くで受け止められる方法だ。

 なんて嬉しいんだろう。最高の幸せだよね。

 私は横になったまま両手を上に伸ばした。空のお星様を掴むみたいに。

 ふふふ。顔が緩んじゃう。

 愛したのが瞬で良かった。愛してくれたのが瞬で良かった。

 全身が瞬に満たされている感じが残ってる。自分の身体に残された匂い。

 なんて心地良いんだろう。
 
 そして…… 気持ちよかったぁあ!

 心も身体も、こんなに満足できるって、なんて素敵なことなんだろう。

 天音は、心から嬉しかったのだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
第8話あたりから、かなり表現が変わっています。
ここから合宿までの天音の心情を読むと
最初の印象とか成り代わるかも知れません。

できれば、ご評価、お気に入り、よろしくお願いします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

処理中です...