辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第9話  憂鬱 ~天音~ 1

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 瞬のもので溢れかえっている天音だ。

 さすがにシャワーだけはしたが、時々、トロッと流れ出す感触は、かつて知っていたものとは違って、幸せそのものの感覚だった。

「健、今日だけは来ないでね」

 ふっと、そんな言葉が出ていた。

 幼馴染みの顔を、今日だけは見たくない。寝るまで、瞬のことだけで埋もれていたい。こんな風に考えるのは、幼いときからみても初めてだ。

 来ても、知らんぷりしちゃおう~っと。ゴメンね。

 最初から、ちゃんと窓にカギは掛けたままにしてあるし、カーテンは隙間無く閉めてある。電気も消えてるから、大丈夫だよね?

 それにしても、素敵だった~ 

 まだ瞬が中にいるみたい! 

 久しぶりに受け止めた感覚は、すごかった。ベッドに残ってる微かなニオイ。耳に残る声。

 それに、何よりも、嬉しかったことがある。

 あぁ、思い出しちゃうよ、あの言葉。

「過去のことだろ? 今の君が好きだから」

 もっと気にすると思ってたのに。ひょっとしたら、トコトン聞かれて、それで嫌になってってことだってあったかもしれないのに。

 知らんぷりはしてくれるかと思ったけど、まさか、それを認めて乗り越えてくれるなんて。

 なんてスゴイ人なんだろう。

 私はそんな人に愛されて、中まで満たしてもらえたんだなぁ。頑なに私の中を満たすことを拒んできた人とは違うんだよね。

 あの人は、きっと身体の快楽だけがあればいいと思ってたんだ。だから、変なことをいっぱいさせたり、エッチな言葉を言わせたり、無理やり恥ずかしいポーズをさせて、写真を撮ったり……

 そうやって興奮させておいて何度も私をイカせて喜んでた。お泊まりの時なんて、毎回、狂っちゃうほど気持ち良くされて、最後は、クタクタになって寝ちゃうほどだった。

 そうやって気持ち良くされていたのは確かだったけど、私を妊娠させないようにすることには気を遣ってた。絶対に妊娠させない。それがあの人の決意みたいなモノ。

 瞬は全然違う。

 そりゃ、最初のは失敗しちゃったからだとわかる。でも、心の中に、私と深くつながりたいって思ってくれたから、忘れちゃったんだと思うの。

 私は気が付いていたけど言わなかった。だって、ぜんぶを受け止めたかったんだもん。

 初めて身体の奥で受け止めて、やっぱりあれが女の幸せだとわかったわ。好きな人を女が一番深くで受け止められる方法だ。

 なんて嬉しいんだろう。最高の幸せだよね。

 私は横になったまま両手を上に伸ばした。空のお星様を掴むみたいに。

 ふふふ。顔が緩んじゃう。

 愛したのが瞬で良かった。愛してくれたのが瞬で良かった。

 全身が瞬に満たされている感じが残ってる。自分の身体に残された匂い。

 なんて心地良いんだろう。
 
 そして…… 気持ちよかったぁあ!

 心も身体も、こんなに満足できるって、なんて素敵なことなんだろう。

 天音は、心から嬉しかったのだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
第8話あたりから、かなり表現が変わっています。
ここから合宿までの天音の心情を読むと
最初の印象とか成り代わるかも知れません。

できれば、ご評価、お気に入り、よろしくお願いします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
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