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第7話 甘美な時 2【R18】
しおりを挟む明日も、これで頑張れる!
それは、瞬だけの幸福ではなかったはずだ。
何回目のデートだっただろう。カフェに入る直前、天音が恥ずかしそうに袖を引いてきた。
「ね、今日、うちに来ない?」
ドキンとした。年頃の男の子にとって「彼女の家」は一つのビッグイベントだ。
「あ、大丈夫。ママはたぶん泊まりよ。私しかいないから緊張しないでね」
さらりと恐ろしいことを言う。
『信用されてるのか? それとも、これって誘われてるのか?』
彼女からの「家に居るのは私だけ」は、別の意味のお誘いであり得る。これもまた男の子の憧れの一つだ。
思わず、天音の顔を見ると、ほんのり頬が赤い。そういうことだ。
『いいんだよな?』
あの事故以来、自己肯定感が猛烈に低くなったとは言え、この表情を見て誤解をするほど鈍感ではない。
「わかった」
お互いの緊張が伝わって、だからこそ、さらに緊張してしまう。そこから天音の家まで何を話したか瞬は覚えてなかった。
覚えていることは限定的。
家に行くまでの恋人つなぎで、天音の手がヒンヤリしていたこと。だから『あ、天音も緊張しているんだ』と思ったこと。
そして、部屋に通されてから「シャワーしてくるね」と恥ずかしそうに言った時の可愛らしさとドキドキ感。
再登場した時の、パイル地のオフショルダーの部屋着で見えた肩口のドキリとする色気。日焼けした首の部分とドキッとするほど対照的な、胸元の白くて柔らかそうな肌。
サラッとした髪を流してはにかむ笑顔。
スズランの匂い。そして初めて触れる女の子の柔らかさ。
女の子の匂いに満たされたシングルベッドに二人が横になりながら、天音がさっきまでと少しだけ違ったトーンの緊張を見せた。
「あの、ガッカリしないって約束してくれる?」
奇妙な頼みではあったが、彼女との「初めて」を前にした男は、どんな約束だって飲むだろう。
コクコクコクと頷けば、ふわりと腕の中に可愛らしい身体が預けられる。
「瞬。大好き」
「好きだよ、天音」
オフショルダーのワンピースは、肩から容易に脱がせる。その時は気付かなかったが、女の子が初めての瞬に、気を遣ってくれたのだろう。
愛を確かめ合う恋人達に理屈も言葉もいらない。何度もお互いに「好き」と声に出しながら、ギュッと抱きしめ合った。
『柔らかい。いい匂いだ』
背中も、脚も、腕も、触れるところ全てに筋肉を感じるのに、途轍もない柔らかさを持っている。
「恥ずかしいよ」
顔を隠すが、全てを見つめる瞬を邪魔しようとはしなかった。窓からの日差しは、日焼けした部分と白いからとのコントラストをハッキリとさせている。
男を誘う魅惑的な弾力を見せつける膨らみの頂点では、待ち望むように桜色の先端が尖っていた。
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