19 / 141
第7話 甘美な時 1
しおりを挟む
二人の甘いデート。
一応は進学校でトップを維持している瞬だ。勉強時間を考えればバイトはできない。しかも、トレーニング関係の講習会はレベルの高いものばかりなので参加費が重い。
いつも金欠だから贅沢は出来ない。せいぜい、学校の帰りにカフェに寄るくらいだ。
天音の降りる駅にあるカフェ。ちょっとお洒落ではあるけれど、しょせんチェーン店でしかない。
けれども、親密なカレカノが会うのに場所なんてどこでも良かったのだろう。お互いを見つめ合う空間があって、とりとめのない話ができれば、それでよかったのだから。
「ふふふ。瞬はブラックを飲めるんだね。さっすがぁ」
笑顔で感心してくれるのは嬉しいが、それは単に嗜好の問題だ。「さすが」と言われても照れくさい。中学時代から眠気覚ましに飲み始めて、今では、自分でドリップするようになったのだから半ば趣味。
コーヒーを純粋に楽しもうとしたら、たまたまブラックが一番だったというだけのことだった。
それであっても、彼女という存在が褒めてくれるのは悪くない。悪くないどころか、ついつい頬が緩んでしまうのは男の子として当然なのだ。
恋人同士はお互いに褒め合い、褒められ合って魂を溶かしていくのだろう。
とりとめの無い話の合間に、周囲の耳を気にしながら「好き」が往復する。
それにしても、天音である。
「それって、一番カロリーの高いヤツだよね?」
「そうなんだ? でも、これが一番美味しいんだもん」
テヘッ、ペロ。
1杯で八百キロカロリーを超えるという、アスリートとにとっては恐ろしい飲み物を嬉しそうに飲んでいる。否。まずは、上で渦を巻くクリームをパクパクと食べ始めている。
「今は、体重をそんなに気にしてないけどさ、試合前になったら、少し気にしてね」
いきなり厳しいことを言っても始まらない。たしなめるに留めた。
「ありがとう。大丈夫。飲んだ分だけ走れば良いんだから」
消費するためにどれだけの距離が必要なんだと思っているんだと心の中だけで突っ込む。これだけ幸せそうな笑顔をしている女の子に誰が言えるだろうか。まして、甘やかな笑顔を見せる恋人に厳しいことが言えるのは鬼だけである。
優しくて甘い時間。別れがたい気持ちでギリギリまで手をつないで近所まで送る束の間の幸せ。瞬の心は甘やかな満足感で満たされた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次のUPからR18の話が続きます
タイトルに表示を入れておりますが
お気に入りに入れていただいて
UPの状況をご確認ください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一応は進学校でトップを維持している瞬だ。勉強時間を考えればバイトはできない。しかも、トレーニング関係の講習会はレベルの高いものばかりなので参加費が重い。
いつも金欠だから贅沢は出来ない。せいぜい、学校の帰りにカフェに寄るくらいだ。
天音の降りる駅にあるカフェ。ちょっとお洒落ではあるけれど、しょせんチェーン店でしかない。
けれども、親密なカレカノが会うのに場所なんてどこでも良かったのだろう。お互いを見つめ合う空間があって、とりとめのない話ができれば、それでよかったのだから。
「ふふふ。瞬はブラックを飲めるんだね。さっすがぁ」
笑顔で感心してくれるのは嬉しいが、それは単に嗜好の問題だ。「さすが」と言われても照れくさい。中学時代から眠気覚ましに飲み始めて、今では、自分でドリップするようになったのだから半ば趣味。
コーヒーを純粋に楽しもうとしたら、たまたまブラックが一番だったというだけのことだった。
それであっても、彼女という存在が褒めてくれるのは悪くない。悪くないどころか、ついつい頬が緩んでしまうのは男の子として当然なのだ。
恋人同士はお互いに褒め合い、褒められ合って魂を溶かしていくのだろう。
とりとめの無い話の合間に、周囲の耳を気にしながら「好き」が往復する。
それにしても、天音である。
「それって、一番カロリーの高いヤツだよね?」
「そうなんだ? でも、これが一番美味しいんだもん」
テヘッ、ペロ。
1杯で八百キロカロリーを超えるという、アスリートとにとっては恐ろしい飲み物を嬉しそうに飲んでいる。否。まずは、上で渦を巻くクリームをパクパクと食べ始めている。
「今は、体重をそんなに気にしてないけどさ、試合前になったら、少し気にしてね」
いきなり厳しいことを言っても始まらない。たしなめるに留めた。
「ありがとう。大丈夫。飲んだ分だけ走れば良いんだから」
消費するためにどれだけの距離が必要なんだと思っているんだと心の中だけで突っ込む。これだけ幸せそうな笑顔をしている女の子に誰が言えるだろうか。まして、甘やかな笑顔を見せる恋人に厳しいことが言えるのは鬼だけである。
優しくて甘い時間。別れがたい気持ちでギリギリまで手をつないで近所まで送る束の間の幸せ。瞬の心は甘やかな満足感で満たされた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次のUPからR18の話が続きます
タイトルに表示を入れておりますが
お気に入りに入れていただいて
UPの状況をご確認ください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説


今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。



マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる