辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第6話  理由 1

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 保冷バッグを受け取りながら、目を見開いた天音の可愛らしい唇はオーの形に開いた。嬉しさと感動と、そして感謝で声が出なかった。

「もしも、口に合わないものがあったら後で教えてくれ」

 ワタワタと受け取ったバッグを震わせて、天音がペコンと頭を下げる。

「ありがとう!」

 天音は最高の気分だ。「彼氏の作ってくれたお弁当」というだけでもポイントが高いのに、わざわざアスリート用にと高タンパク低カロリーの工夫がされているのだという。

 思わず抱きついてしまった。

「こんなことしてもらえる彼女なんていないよ! 最高の彼氏だよ!」

 大勢が見ている。瞬が振りほどこうにも、どうしたら良いのかわからない。告白は数え切れないほどされてきたが、バスケ一筋できた瞬に女の子の経験値はゼロなのである。

「いや、ついでだよ。それに、今日は妹も手伝ってくれたし」

 ドキドキしながら、そっと身体を離した。柔らかなものが当たっていたのを惜しむ気持ちが出るのはだろう。

「ごめんね。美紅ちゃんにまで迷惑をかけちゃって」

 毎晩、いっぱい話をしてる。まだ会ったことのない瞬の家族のことも目に浮かぶようだ。

『美紅ちゃんは、中学の女バスのキャプテンなんだよね』

 なんだかんだと妹思いの瞬は「ぜんぜん仲良くなんてないよ」と言いながら、ちょくちょく話題に上らせる。試合も見に行っているらしい。

『瞬のことだもん。きっとアドバイスなんかもしちゃってるんだろうな。お父さん、お母さんも優しいみたいだし』

 うらやましさは確かにあるが、それよりもむしろ「彼氏」に温かい家庭があるのが嬉しくなる天音だ。

『でも、私は自分のことを、あんまり話せてないよ』

 話せているのは父と母が離婚したという「事実」だけ。聞かれれば、勇気を出して正直に答えようと思っているが、瞬は優しさゆえに、それ以上聞いてこようとはしなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
まだまだ、長い物語です
できればお気に入りに入れて
じっくりとお読みください。
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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