辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第4話  転機 3

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「瞬なら、きっとトレーニングメニューもいろいろ知っているよね?」
「陸上のことはよくわからないよ」
「それでもいいの。ね? 私、瞬に応援して欲しいんだ」
「応援?」
「うん。ハッキリ言うと陸部に来て欲しいの。そして、私の練習を見てもらいたい」
「え!!!」
「瞬なら、きっとトレーナーとして優秀なはずよ」
「だけど、部のやり方とか方針もあるだろ?」

 正直に言えば、いろいろなトレーニングや走ると言うことをアドバイスするだけなら密かに自信はある。それなりに勉強もした。けれども素人が後から入部して、いきなり練習に口をはさめるわけがない。

「陸部全体のことがあるからな。それに、そもそもあいつ二階堂が拒否るよ。キャプテンななんだろ?」

 二階堂が陸部のキャプテンになったのは知っていた。背も高くて顔も良い。走る方だって相当らしくて女子を中心に人望もある。クラスのカーストで言えば完全な一軍だ。

「大丈夫。瞬が気にしてるのはわかるけど、ぜんぜん、そんなことないからね」

 二階堂との幼なじみはダテではない。さすがにあれ事故を知っているらしい。

「だって、瞬の転部を勧めてきたのはたけるなんだよ」
「二階堂が、ホントにそんなことを?」

 幼なじみの気安さだろう。天音は二階堂を「健」と呼ぶし、何気ない話にもちょくちょく出てくる。その程度は普通なのだと受け入れるしかない。チクッとしたささくれではあるが、それを指摘するのは、何となく「小っちゃい」気がした。けれども、ささやかな抵抗のつもりで「二階堂」と言い直す程度は許されるはずだ。

「あのね、瞬のことはすごく認めてるの。プライドの高い彼としては、びっくりするくらいよ。誰かを誉めるのって初めてじゃないかな? ただ、ほら、ね? あのことがあったでしょ? 面と向かうと、キツく当たっちゃうかもしれないけど、ホントは認めてるって」
「そ、そうなんだ」

 今までのことを考えれば、とても信じられないが、ここで天音がウソをつく必要がないのは事実なのだ。

「お願い! 私をインターハイに連れていって!」

 その目は真剣だった。

 考える時間を取るまでもなかった。

「わかった。何ができるかわからないし、何が起きるかもわからないけど、天音の彼氏として、来年のインターハイ予選まで全力でサポートするよ」

 それから、3カ月もしないうちに、死ぬほど後悔する約束をしてしまったのを、その時の瞬は、まだ知らなかった。
                                           


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
まだまだ、長い物語を
本日もガンガンUPしていきます。
できればお気に入りに入れて
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とってもとっても嬉しいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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