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第2話 OK 2
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「ホントよ。高校に入ってから、ずっとあなたのことを褒めてたの。それで私、なんとなく大竹君のことを見てたら、良いなって思っちゃって。ほら、勉強もできるし、人の見てないところで一生懸命仕事をしてるでしょ?」
それにね、と天音はトーンを下げた。
「聞いちゃったの。その…… 事故のこと。子どもを救おうとしてって話」
「その話、多分、ウソですよ」
誰から聞いたんだよ、その話と瞬は内心、ムッとした。
「え? そんなことないよ! だって健が言ってたんだもん。感謝していたんだよ、彼は!」
「二階堂が? ホントに、あいつがそんなコトを言ったんですか?」
ありえない、と思ったのが最初に浮かんだ言葉。しかし、同時に『もしも本当ならば嬉しい』という気持ちも同時に浮かんでいたのだ。
ずっと瞬の心にのし掛かっていた重圧だ。それが薄れるのだろうか?
「ね! それでOKしてくれるんだよね? わたし、あの、こ、こう見えても、けっこう人気あるんだよ! どう? お買い得だよ!」
「自分で自分をお買い得っていうのもアレなんですけど……」
天音の言葉がなんとなく、ウソではない気がしたのは確かだ。中学時代に告白してきた女の子達の、あの雰囲気に近い。だが、どうしても「罰ゲーム疑惑」を消せないのが、今の自己評価でもある。
目の前の少女が破格なほどに可愛らしければ可愛いほど、自分と付き合いたがると言うことが信じられないのだ。
そこで、再度、頭の中が変化した。
『これが罰ゲームだって言うんなら、甘んじて受けるのもいいか。そうやって馬鹿にされるのも、オレらしいもんな』
瞬の心は事故以来、すっかりねじ曲がっていたのだ。
「はい。はい。わかりました。こちらこそ。若高三大美人からの告白、謹んで受けさせていただきますが」
「が?」
「あまりの幸運すぎて、現実かどうか定かでなくなってしまいました。つきましては」
罰ゲームだと言うのなら、こんなのはしないだろ。
「どうぞ、告白相手に愛情の証しとしてキスなどいかがでしょうか?」
そう言って左の頬を差し出してみせる。
『なんちゃって~ か? それとも、調子に乗るな か?』
「ちょ! ちょっと! 私、そんなに軽い女じゃないからね!」
お怒りのご様子だ。
『ほら、やっぱり』
皮肉な笑いを浮かべようとした左頬に、柔らかなモノがチュッと……
「え?」
「だ、だって、大竹君がしろって言うから! いっておくけど、男の人へのキスなんて、パパにする以外初めてなんだからね!」
天音が真っ赤になっている。
その表情を見た瞬間、『あ、これって本物の告白だったんだ』と直感した。
しかし同時に「コイツはファザコンの残念美少女ってやつだぜ」と頭の中の誰かが囁く声を聞いた気がしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
まだまだ、長い物語です
できればお気に入りに入れて
じっくりとお読みください。
ハートマークも押していただけると嬉しいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それにね、と天音はトーンを下げた。
「聞いちゃったの。その…… 事故のこと。子どもを救おうとしてって話」
「その話、多分、ウソですよ」
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「え? そんなことないよ! だって健が言ってたんだもん。感謝していたんだよ、彼は!」
「二階堂が? ホントに、あいつがそんなコトを言ったんですか?」
ありえない、と思ったのが最初に浮かんだ言葉。しかし、同時に『もしも本当ならば嬉しい』という気持ちも同時に浮かんでいたのだ。
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「ね! それでOKしてくれるんだよね? わたし、あの、こ、こう見えても、けっこう人気あるんだよ! どう? お買い得だよ!」
「自分で自分をお買い得っていうのもアレなんですけど……」
天音の言葉がなんとなく、ウソではない気がしたのは確かだ。中学時代に告白してきた女の子達の、あの雰囲気に近い。だが、どうしても「罰ゲーム疑惑」を消せないのが、今の自己評価でもある。
目の前の少女が破格なほどに可愛らしければ可愛いほど、自分と付き合いたがると言うことが信じられないのだ。
そこで、再度、頭の中が変化した。
『これが罰ゲームだって言うんなら、甘んじて受けるのもいいか。そうやって馬鹿にされるのも、オレらしいもんな』
瞬の心は事故以来、すっかりねじ曲がっていたのだ。
「はい。はい。わかりました。こちらこそ。若高三大美人からの告白、謹んで受けさせていただきますが」
「が?」
「あまりの幸運すぎて、現実かどうか定かでなくなってしまいました。つきましては」
罰ゲームだと言うのなら、こんなのはしないだろ。
「どうぞ、告白相手に愛情の証しとしてキスなどいかがでしょうか?」
そう言って左の頬を差し出してみせる。
『なんちゃって~ か? それとも、調子に乗るな か?』
「ちょ! ちょっと! 私、そんなに軽い女じゃないからね!」
お怒りのご様子だ。
『ほら、やっぱり』
皮肉な笑いを浮かべようとした左頬に、柔らかなモノがチュッと……
「え?」
「だ、だって、大竹君がしろって言うから! いっておくけど、男の人へのキスなんて、パパにする以外初めてなんだからね!」
天音が真っ赤になっている。
その表情を見た瞬間、『あ、これって本物の告白だったんだ』と直感した。
しかし同時に「コイツはファザコンの残念美少女ってやつだぜ」と頭の中の誰かが囁く声を聞いた気がしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
まだまだ、長い物語です
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