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第2話 OK 1
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「え? いいの!」
「そんなことでよければ、簡単ですよ」
自分からOKしろと言っておいて、そんなに驚くことなのかと瞬は思った。
「で、どこへ行くんですか?」
買い物だろうか? 荷物持ちをしろってことだろうと当たりをつける。
「どこへって、どこよ」
少女のパッチリした目が、驚きを示してパチパチと瞬いた。
「付き合えっていうから。どこかに一緒に行って欲しいんでしょ? スポーツショップ? 図書館とか? それにしたって、わざわざオレに付き添いを頼む必要がわからないんですけど」
「ちがうの! 私のお願いしてる付き合っては、いわゆる、男女同士のお付き合い! 彼氏と彼女の関係になってっていうこと。OKって返事で良いのね?」
両方の二の腕にしがみついてきた。
フワリとした女の子の匂いがする。
顔が近い! 近いから!
しかし、美少女の勢いに圧倒されていても瞬はある意味、冷静だった。
「え? 当然、ノーですよ」
「ウソッ!」
『あ~ 松永さん、自分の美貌が通じなくて驚いてるんだ?』
とっくに頭は切り替えている。ガードは冷静な判断力がないと務まらないからねと頭の中で瞬は自分に囁いている。
『どうせ、誰かがスマホを向けてるんだろ?』
素早く辺りを見回したのだ。
『あれ? 動画撮影班とかいないわけ?』
恐らく陰湿な仕掛けでもしているに違いないが、仕掛け役の人間が他に見当たらないのだ。あまりにも隠れ方が上手い。
周囲へと目を配りながら、サバサバした口調で時間かせぎ。
「罰ゲームかなんかでしょ? 悲しいからやめときましょうよ。いくら美人でも男の気持ちを弄ぶのは、あんまりいいものじゃないですよ」
「違うの! 本気なの! 本気で好きなの! 罰ゲームだなんて、ひどいよ。そんなこと、アマネは、そんなひどいこと絶対にしないんだから!」
松永天音は「だから、OKしてくれる?」と、あざと可愛い笑顔で見上げてきたのだ。
さすがにたじろいだ。
『一体全体どうなってるんだよ』
これが中学時代ならわかる。バスケ部のエースとして天才とまで言われたのだ。月に一度はコクられたし、三日連続で違う女の子から、というのもあった。しかし高校ではキャラが違う。
「ごめん。えっと、申し訳ないけど、信じられないっていうのが基本です」
何しろ、接点がゼロで、瞬の身分は二軍どころか、メンバーに入っているのかすら怪しいレベルだ。
何かの誤解、あるいは騙し以外に考えられなかった。
「オレと付き合いたいって思うような接点、なかったですよね?」
「あのね、健に聞いたの」
「たけるって?」
「あ、えっと、二階堂君よ。彼、隣の家なの。幼なじみってヤツ? 彼が大竹君のことをよく褒めてるの」
「え? まさか!」
ない、それだけは絶対にないと、焦る瞬だった。
「そんなことでよければ、簡単ですよ」
自分からOKしろと言っておいて、そんなに驚くことなのかと瞬は思った。
「で、どこへ行くんですか?」
買い物だろうか? 荷物持ちをしろってことだろうと当たりをつける。
「どこへって、どこよ」
少女のパッチリした目が、驚きを示してパチパチと瞬いた。
「付き合えっていうから。どこかに一緒に行って欲しいんでしょ? スポーツショップ? 図書館とか? それにしたって、わざわざオレに付き添いを頼む必要がわからないんですけど」
「ちがうの! 私のお願いしてる付き合っては、いわゆる、男女同士のお付き合い! 彼氏と彼女の関係になってっていうこと。OKって返事で良いのね?」
両方の二の腕にしがみついてきた。
フワリとした女の子の匂いがする。
顔が近い! 近いから!
しかし、美少女の勢いに圧倒されていても瞬はある意味、冷静だった。
「え? 当然、ノーですよ」
「ウソッ!」
『あ~ 松永さん、自分の美貌が通じなくて驚いてるんだ?』
とっくに頭は切り替えている。ガードは冷静な判断力がないと務まらないからねと頭の中で瞬は自分に囁いている。
『どうせ、誰かがスマホを向けてるんだろ?』
素早く辺りを見回したのだ。
『あれ? 動画撮影班とかいないわけ?』
恐らく陰湿な仕掛けでもしているに違いないが、仕掛け役の人間が他に見当たらないのだ。あまりにも隠れ方が上手い。
周囲へと目を配りながら、サバサバした口調で時間かせぎ。
「罰ゲームかなんかでしょ? 悲しいからやめときましょうよ。いくら美人でも男の気持ちを弄ぶのは、あんまりいいものじゃないですよ」
「違うの! 本気なの! 本気で好きなの! 罰ゲームだなんて、ひどいよ。そんなこと、アマネは、そんなひどいこと絶対にしないんだから!」
松永天音は「だから、OKしてくれる?」と、あざと可愛い笑顔で見上げてきたのだ。
さすがにたじろいだ。
『一体全体どうなってるんだよ』
これが中学時代ならわかる。バスケ部のエースとして天才とまで言われたのだ。月に一度はコクられたし、三日連続で違う女の子から、というのもあった。しかし高校ではキャラが違う。
「ごめん。えっと、申し訳ないけど、信じられないっていうのが基本です」
何しろ、接点がゼロで、瞬の身分は二軍どころか、メンバーに入っているのかすら怪しいレベルだ。
何かの誤解、あるいは騙し以外に考えられなかった。
「オレと付き合いたいって思うような接点、なかったですよね?」
「あのね、健に聞いたの」
「たけるって?」
「あ、えっと、二階堂君よ。彼、隣の家なの。幼なじみってヤツ? 彼が大竹君のことをよく褒めてるの」
「え? まさか!」
ない、それだけは絶対にないと、焦る瞬だった。
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