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邪神の使徒
邪神
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まだ神が住む神界とニンゲンが住む人界が近かった時代。
愛の女神サアラは人間の男に恋をした。
愛の女神サアラは美しい金色の髪に空色の瞳。彼女が大好きな赤色のドレスをいつも着ていた。
「今日も彼に会いに行ってくるわっ」
神は神子と呼ばれる者に身体を借りて人界に降りていた。神子は神界との狭間にある神殿に住み、神とニンゲンの仲介役を担う一族だった。
「サアラ様!」
「ジン!」
女神は神子の身体を借り人族の男ジンとの逢瀬を楽しんでいた。その頃は神が神子の身体で降りてくることは珍しいものではなかった。
2人は愛し合っていて、種族の差など関係なく仲睦まじい様子を何人もの人が見ていた。
だがそれを許さない者達が現れた。
愛の女神サアラ様の《愛》は平等であるべきだ
個人がその恩恵を独占するなど恥を知れ
罪人に罰を
愛の女神サアラ様を惑わせた悪魔め
悪魔に罰を女神に解放を
そうして人族の男ジンは無惨な姿で磔にされ殺された。そして人々はこう言った。
「貴方様を惑わせた悪魔はもう居ません。我々に《祝福》を。」
その瞬間世界が赤く染った。彼女が愛した男の色に。
女神は彼の亡骸を抱き深く後悔をした。『人の浅ましさを理解していなかった私のせいで、貴方を殺してしまった』
そして深く憎んだ。『身勝手なニンゲンが憎い』
愛の女神サアラは愚かな信者がいる教会を、ニンゲンの住む街を国を次々と破壊して回った。
涙流しながら笑う彼女は美しく、周囲の破壊された様子と真逆で違和感を感じる光景だった。
他の神々は女神の悲しみようをみて、最初は好きにさせていた。だが次第にニンゲンそのものを憎む彼女を放っておく事が出来ず止めに入った。
だが神子の身体を完全に自分のものにした女神に対抗出来るものはいなかった。何度も負けニンゲンは元の3分の1まで数を減らした。
その頃には女神は邪神と化し、ただ破壊とニンゲンへの憎悪のみを吐き出していた。
そんな時、自らの身体を差し出す者達が現れた。
そのもの達は強靭な肉体と魔力、洗練された身のこなしを持っていた。
『神よ我らの全てを捧げよう。代わりに…あのお方を救って欲しい……あの方はこのような事を本心からしようなど思っていない…心優しい方なのだ…』
そして神は特に強い3人の肉体を使い邪神と戦った。
邪神は完全に神子と同調し、いくら強くとも神子でない肉体を使う神々は完全に邪神を倒す事は出来なかった。
神々は邪神を止めるため3人の身体を人柱に封印した。
その3人はステータスに【王】を持ち、今もその魂は何度も転生を繰り返している。
ーーーーーーーーー
「その話のどこに今回の件が関わっているというの?」
「それがどうしたんだ…?」
シルビアとカイルは首を傾げた。そしてロメリアとマリルは説明を始めた。
「邪神の封印の要は3人の【王】の肉体よ」
「【獣王】ラウル、【魔王】ゼラディアス【聖王】セナ。神々はその3人の肉体だけを人柱に捧げ、魂は自らを捧げたんだ。だからその3人の魂は記憶は保持せず、転生して生まれ変わっている。」
「《称号》は魂に刻まれた証なの。そしてその魂に合う肉体は同じ血族に多く現れるの。」
その言葉を聞き理解したもの達は息を呑んだ。
「「【獣王】…の血族って…まさか…」」
グランとカイルの声が重なった。
「ここアモーロ王国の王族。そして」
「ロメリア達が向かった国、アモーロ王国だ。そして」
「今代の王が【獣王】だ(よ)」
誰かが唇を噛む音がした。
「じゃっじゃあカイル達が向かった方は!?【魔王】の血族が居たのか!?」
「じゃあなんで《天使》のオズが…っこんな目にあってるんだよ!?」
ダレルとカイルは叫び、ロメリアとマリルを見た。
「言ったでしょ?あくまで同じ血族に多く生まれるってだけよ。」
「【魔王】に血族は居ない。魔王と呼ばれる者は突発的に生まれる。そしてある証が身体に現れるんだよ。」
「ぁ」
カイルは横たわり苦しそうにしているオズワルドを見て固まった。マリルは難しい顔をして2人を見つめた。
「ねぇロメリア…せ…聖王って…」
「マリル……それだと【聖王】セナの生まれ変わりが……ルキアなのか?」
シルビアとカイルはロメリア、マリルをまさかという目で見つめた。視線を受けた2人は2人から目を逸らし脱力した。
「「ルキアは【聖王】セナの生まれ変わよ(だ)」」
「そして邪神の封印の要でもある。これで3人【聖王】【魔王】【獣王】3つの鍵が揃ったわけだ。」
「【獣王】はもう手遅れね。【魔王】は分からないけど今回の【邪】の引き起こしたことから時間の問題だと思うわ。」
2人の言葉を聞いた者達は一斉に立ち上がり、今すぐ《隠れ家》に帰ろうとした。しかしロメリアとマリルは座ったままだった。
「おいロメリア何してんだよっ!すぐに帰ってルキアの守りを固めねぇと!!」
「急ごうっマリル!オズとルキアを守らねぇと」
急かす声を聞いても2人は立ち上がらず、ははっと乾いた笑い声を上げた。今でも泣きそうな笑顔で。
「ばぁか…お前うちのシリウスの能力わすれたのかよ…」
「シリウスが居て、わざわざ私達主力メンバーの8人を…ルキアから遠ざけるわけないでしょ…」
「「私達はわざと遠ざけられた。そしてルキアは…」」
2人の声は風にかき消された
ねぇ…どうして記憶が無い転生をしたはずの【聖王】セナが、邪神が堕ちる前の女神の事をよく知っているの?
どうしてあんなに悲しんでいたの?
ーーーーーーーーーーーーーー
コツコツと暗い階段の奥からヒールの足音が登ってくる。
穏やかなそよ風が黒髪を揺らし、ルキアは《隠れ家》の塔の最上階から月を眺めていた。
「お久しぶりですね、裏切り者のルキアさん♪」
「5000年ぶりかな自己中の阿婆擦れさん」
水色の腰まである髪を揺らし、猫のような金色の瞳を細め美女は笑った。瞳は冷たいまま、じっとルキアの瞳を見ていた。
その視線を受けた青色の瞳に変化はなく、2人は塔の上で見つめあっていた。
愛の女神サアラは人間の男に恋をした。
愛の女神サアラは美しい金色の髪に空色の瞳。彼女が大好きな赤色のドレスをいつも着ていた。
「今日も彼に会いに行ってくるわっ」
神は神子と呼ばれる者に身体を借りて人界に降りていた。神子は神界との狭間にある神殿に住み、神とニンゲンの仲介役を担う一族だった。
「サアラ様!」
「ジン!」
女神は神子の身体を借り人族の男ジンとの逢瀬を楽しんでいた。その頃は神が神子の身体で降りてくることは珍しいものではなかった。
2人は愛し合っていて、種族の差など関係なく仲睦まじい様子を何人もの人が見ていた。
だがそれを許さない者達が現れた。
愛の女神サアラ様の《愛》は平等であるべきだ
個人がその恩恵を独占するなど恥を知れ
罪人に罰を
愛の女神サアラ様を惑わせた悪魔め
悪魔に罰を女神に解放を
そうして人族の男ジンは無惨な姿で磔にされ殺された。そして人々はこう言った。
「貴方様を惑わせた悪魔はもう居ません。我々に《祝福》を。」
その瞬間世界が赤く染った。彼女が愛した男の色に。
女神は彼の亡骸を抱き深く後悔をした。『人の浅ましさを理解していなかった私のせいで、貴方を殺してしまった』
そして深く憎んだ。『身勝手なニンゲンが憎い』
愛の女神サアラは愚かな信者がいる教会を、ニンゲンの住む街を国を次々と破壊して回った。
涙流しながら笑う彼女は美しく、周囲の破壊された様子と真逆で違和感を感じる光景だった。
他の神々は女神の悲しみようをみて、最初は好きにさせていた。だが次第にニンゲンそのものを憎む彼女を放っておく事が出来ず止めに入った。
だが神子の身体を完全に自分のものにした女神に対抗出来るものはいなかった。何度も負けニンゲンは元の3分の1まで数を減らした。
その頃には女神は邪神と化し、ただ破壊とニンゲンへの憎悪のみを吐き出していた。
そんな時、自らの身体を差し出す者達が現れた。
そのもの達は強靭な肉体と魔力、洗練された身のこなしを持っていた。
『神よ我らの全てを捧げよう。代わりに…あのお方を救って欲しい……あの方はこのような事を本心からしようなど思っていない…心優しい方なのだ…』
そして神は特に強い3人の肉体を使い邪神と戦った。
邪神は完全に神子と同調し、いくら強くとも神子でない肉体を使う神々は完全に邪神を倒す事は出来なかった。
神々は邪神を止めるため3人の身体を人柱に封印した。
その3人はステータスに【王】を持ち、今もその魂は何度も転生を繰り返している。
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「その話のどこに今回の件が関わっているというの?」
「それがどうしたんだ…?」
シルビアとカイルは首を傾げた。そしてロメリアとマリルは説明を始めた。
「邪神の封印の要は3人の【王】の肉体よ」
「【獣王】ラウル、【魔王】ゼラディアス【聖王】セナ。神々はその3人の肉体だけを人柱に捧げ、魂は自らを捧げたんだ。だからその3人の魂は記憶は保持せず、転生して生まれ変わっている。」
「《称号》は魂に刻まれた証なの。そしてその魂に合う肉体は同じ血族に多く現れるの。」
その言葉を聞き理解したもの達は息を呑んだ。
「「【獣王】…の血族って…まさか…」」
グランとカイルの声が重なった。
「ここアモーロ王国の王族。そして」
「ロメリア達が向かった国、アモーロ王国だ。そして」
「今代の王が【獣王】だ(よ)」
誰かが唇を噛む音がした。
「じゃっじゃあカイル達が向かった方は!?【魔王】の血族が居たのか!?」
「じゃあなんで《天使》のオズが…っこんな目にあってるんだよ!?」
ダレルとカイルは叫び、ロメリアとマリルを見た。
「言ったでしょ?あくまで同じ血族に多く生まれるってだけよ。」
「【魔王】に血族は居ない。魔王と呼ばれる者は突発的に生まれる。そしてある証が身体に現れるんだよ。」
「ぁ」
カイルは横たわり苦しそうにしているオズワルドを見て固まった。マリルは難しい顔をして2人を見つめた。
「ねぇロメリア…せ…聖王って…」
「マリル……それだと【聖王】セナの生まれ変わりが……ルキアなのか?」
シルビアとカイルはロメリア、マリルをまさかという目で見つめた。視線を受けた2人は2人から目を逸らし脱力した。
「「ルキアは【聖王】セナの生まれ変わよ(だ)」」
「そして邪神の封印の要でもある。これで3人【聖王】【魔王】【獣王】3つの鍵が揃ったわけだ。」
「【獣王】はもう手遅れね。【魔王】は分からないけど今回の【邪】の引き起こしたことから時間の問題だと思うわ。」
2人の言葉を聞いた者達は一斉に立ち上がり、今すぐ《隠れ家》に帰ろうとした。しかしロメリアとマリルは座ったままだった。
「おいロメリア何してんだよっ!すぐに帰ってルキアの守りを固めねぇと!!」
「急ごうっマリル!オズとルキアを守らねぇと」
急かす声を聞いても2人は立ち上がらず、ははっと乾いた笑い声を上げた。今でも泣きそうな笑顔で。
「ばぁか…お前うちのシリウスの能力わすれたのかよ…」
「シリウスが居て、わざわざ私達主力メンバーの8人を…ルキアから遠ざけるわけないでしょ…」
「「私達はわざと遠ざけられた。そしてルキアは…」」
2人の声は風にかき消された
ねぇ…どうして記憶が無い転生をしたはずの【聖王】セナが、邪神が堕ちる前の女神の事をよく知っているの?
どうしてあんなに悲しんでいたの?
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コツコツと暗い階段の奥からヒールの足音が登ってくる。
穏やかなそよ風が黒髪を揺らし、ルキアは《隠れ家》の塔の最上階から月を眺めていた。
「お久しぶりですね、裏切り者のルキアさん♪」
「5000年ぶりかな自己中の阿婆擦れさん」
水色の腰まである髪を揺らし、猫のような金色の瞳を細め美女は笑った。瞳は冷たいまま、じっとルキアの瞳を見ていた。
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