幸せになりたい!ー兄と塔から逃げ出して自由に生きてやる!ー

氷菓

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アヴェントゥリーニス竜王国

ハウリーティス帝国に祝福を

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「「「「「ハウリーティス帝国に祝福を」」」」」




それからの動きは早かった。
今回の事件にはエルフと竜人、2種族の15年という年月の怒りと悲しみが込められている。両国は直ぐにハウリーティス帝国に対する措置を協議した。

アヴェントゥリーニス王国の一室には、今回の件に関わるエルフと竜人達が集まっていた。

竜人side
《国王》グラン=アウルム=アヴェントゥリーニス
《法務大臣》ダン=ルーフス
《財務大臣》エルドリック=ウィリディス
《外務大臣》リラ=アルブム
《宰相》ランドルフ=カエルレウス
《騎士団団長》ギディオン=ヘーリアンテス
《魔法師団団長》ゾーイ=アヴェーリア
《医術師団団長》メルティア=イオデス

エルフside
《国王代理》ルベルト=ティオ=ネフリーティス
《魔法師団団長》クルル=ティナ=カリディア
《魔法騎士団団長》オーギュスト=ティオ








「さぁ!今すぐハウリーティス帝国を消滅させに行きましょぉ!」
「おいクルル消滅なんて生温いぞ。竜人とエルフを敵に回したんだ。死ぬ方が楽だって思わせてやらねぇとな」

クルルとギディオンは黒い笑みを浮かべあった。他の面々も頷いていた。この場に居るもの達は寿命が長く、他種族と比べ魔法や武力が優れている事もあり古くから交流のあったメンバーである。そのため種族関係なく仲が良く、今回の事件ラシェルの誘拐は到底許せるものではなかったのだ。

「ギディオンの言う通りだ。ラーヴェたち家族を15年苦しめたんだ。それ相応の報いは受けてもらう」
「そうですね、我が国も同意見です。」

グランの意見にルベルトは大きく頷き賛成した。

「所で、ラーヴェはどうしたんですか?我先に帝国を落としに行くと思ってたんですが…まさかもう?」
「いいえラーヴェは今家族サービス中よ。」
「俺達が止めたんだ。ラーヴェは衰弱していたからな。それに…子供達にとってラーヴェは今まで顔も知らなかった父親だ。そう直ぐには受け入れられないだろう、だから家族で過ごす時間を取らせた。」
「なるほど。その方がラシェルも喜ぶでしょうね…争いは好まない性格でしたから…」

リラとランドルフの説明にルベルトは納得し、悲しげに目を伏せた。

「そうだ。だが…例えラシェル夫人が望んでいなくとも、俺達は帝国を落とす。これは15年間ラーヴェ達家族、そして俺達竜人とエルフを苦しめたヤツらへの報復だ。俺達の怒りを思い知らせてやろう。」

そうしてこの会議で方針は決まった。


ーハウリーティス帝国に地獄を見せてやるー










ーーーーーーーーー




雲一つないよく晴れた日

 ハウリーティス帝国帝都ガレーゼルの上空に、空を埋め尽くさんばかりのが現れた。
人々は空を見上げ、城はパニックに陥っていた。

「さぁ愚かな人間に祝福を」

エルフの魔法師団団長クルルがそう宣言すると、【竜化】した竜人に乗っていたエルフたちは地上へ向け魔法を放った。

「まずは溺れてもらいましょう」

魔法が地上に降り注いだ瞬間、人々の頭が【水球】に包まれた。建物の中でも年齢も身分も関係なく、平等に祝福苦痛が与えられる。意識を失うギリギリかつ苦しめるために、鼻から体内に入った水が腹の中で暴れる。
上空にいるエルフと竜人は口元を三日月型に歪め笑った。

「まだまだよ。姫様達の苦しみは…私達の怒りは…こんなものじゃないわよ」

そう言うとクルルは右手を挙げ、合図をした。その手が振り下ろされた瞬間、また魔法が地上へ降り注いだ。

「次は感電」

その瞬間人々の体に電気が纏わり付いた。

「ガァァァァァァァッ!!!!!!」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!」

先程の水攻めで意識が飛びかかっていた者たちは、電気の衝撃で目を見開き叫んだ。地上は人間たちの叫び声が轟いてる。上空にいる者たちはそれを楽しそうに笑い合っていた。

「ロゼリア様とクリストファー様に守られ、のうのうと幸せを享受していた事を知り後悔しなさい。」
「今頃城の上層部は結界が意味を成してない事に、感電で苦しみながら慌てているだろうよ!ガハハハハッ!!」

【竜】となった《騎士団団長》ギディオンと《副団長》シシルは地上を見て言い放った。
実際、城内は突然現れた竜とエルフの軍勢に慌て、対応する間もなく魔法による拷問にかけられている。本来、あらゆる物理攻撃、魔法攻撃を弾くはずの【結界】が作動していない事に彼らは苦しみながら混乱していた。

「報告どうりだすねぇ~。ロゼリアちゃんとクリストファー君が施した術をそのまま、なんの疑いもなく使っていたなんて笑えるだすねぇ!ぷくくっ。」

【竜化】はせず、ギディオンの上に乗っていた《魔法師団団長》ゾーイは笑い転げていた。
それもそのはず、帝国の魔法師は優秀な者たちは既にこの国を出ていて、残ったのは3流魔法師達だけだった。彼らはロゼリアとクリストファーが身代わりとしてかけた、魔石を核とした結界を維持する為の魔法を『問題ない』と判断していた。そのため数日で魔石の魔力は無くなり結界は既に解けていたのだ。

「はー笑っただす!クルルン~民はそのままで、そろそろ王侯貴族の顔を直接拝みに行きたいだす~」
「そうねぇ。皆!民にはそのまま【祝福拷問】を。指揮は《副団長》ラゲッタよ。
そして1番隊は私と竜人達と共に城に乗り込むわ。作戦どうり、王侯貴族を《王の間》へ【転移】させて。」
「騎士団第一部隊と第二部隊も俺に続け。指揮は《副団長》シシルだ!」

各団員達は「おう!」と返事をした。エルフの魔術師達は対象の【転移】を始めた。

「クルル団長!王侯貴族の【転移】完了しました。」

それを聞いたエルフと竜人達はニヤリと笑い、城へ向かうチームの竜はエルフ乗せ降下を始めた。




ーーーーーーーーー



「一体何事だ!結界はどうなっているのだ!?」
「どうして竜人が空に…」
「うぇぇぇん怖いよぉぉぉ!」
「王はどこにいる!?誰か説明しろ!」
「溺れかけ電気で殺されかけたわ!どういう事よ!」

《王の間》では転移させられた全ての貴族や王族が集まっていた。部屋から出ることも出来ず、魔法も使えない中で彼らはただ恐怖と苛立ちで声を荒らげていた。

パンパンッ

当然手を叩く音が聞こえ、その瞬間口が不自然に縫い付けられたように閉ざされた。人々は慌てたように口を開こうとするが叶わず、王座の前に立つ2人のに気がついた。

「やぁハウリーティス帝国貴族諸君。我が名はグラン=アウルム=アヴェントゥリーニス。アヴェントゥリーニス竜王国の国王である。」
「そして我が名はリヒト=ティオ=ネフリーティス。ネフリーティス森王国の国王であり、世界樹ユグドラシルの守人である。」

2人の王からの【威圧】によりその場にいる全員が顔を白くさせ、大粒の冷汗をかき震えながら膝まづいた。幼い子供も恐怖で声を出し泣くことも出来ず、意識を飛ばしかけていた。

そんな中一人の男が声を上げた。

「発言の許可を」
「許す」
「はっ!有難く。私はこの国の《宰相》を務めているローレン=クローノスと申します。」
「そうか。なら説明出来るな、国王は何処にいる?」

《宰相》ローレンは顔を白くさせつつも、ハッキリとした口調で返答した。

「この国に《》は居ません。国が死んだ今、王は意味を成さないただの飾りとなりました。」
「………ならここに座っていた男をやった?」
「その者は私が責任を地獄へ墜しました。」
「では今回の件は全てお前首謀で行ったということか」
「間違いございません。」

《宰相》ローレンはハッキリとそう答えた。顔をあげる許可は出ていないため、表情は分からない。しかしその声色は覚悟の決まった者の声であった。
グランとリヒトは男を見下ろし、チラリとお互いに視線を合わせた。

「そうか、ではそれ相応の罪を償ってもらう。」

リヒトがそう言った瞬間、《王の間》に何人かの竜人とエルフが現れた。
そしてエルフは膝を着いている帝国貴族にあるを飲み込むよう【操作】した。貴族たちは抵抗したが、魔法で勝てるはずもなく身体が勝手に動き木の実を飲み込んだ。

「全員飲んだな。それは我らエルフに伝わる毒、罪人を裁く《罪の実》だ。服用した者の豪の深さによって苦痛を感じる度合いが異なる。さて、お前達はどれ程の苦痛を味わうのだろうな?」

ニヤリと笑ったリヒトは貴族らを拷問部屋へ運ぶよう指示を出した。今回の件に直接関わったとされる、《宰相》ら各機関のトップは事情聴取の為別の部屋へ連れていかれた。

後に残ったのは王座の前に立つ2人の国王だけとなった


「あーあー!おっさんも残念だったなー。報告じゃただの愚王だったから油断してたわ。まさかヤツに忠誠を持って助ける殺す者がまだ居たとは。」
「えぇ……ユグドラシルも殺る気満々だったのに…残念です。」
「一応聞くけど何する気だった?」

リヒトはグランにとっておじさんと呼べるほど年が離れ親しくしている。グランが即位してからも息子のように接してきただけあって、お互い《王》出ある時以外は砕けた口調をしていた。
グランは殺る気満々のユグドラシルと親バカが何をする気か、顔を引き攣らせながら聞いた。

「そうですねぇ~痛覚を最大限に引き出し、まずは全身の毛を1本1本抜きます。」
「わぁエグい」
「次に爪を剥ぎます。それは不器用なユグドラシルが担当するので指の一、二本は折れるでしょうね」
「わざとじゃん。絶対意図的に折ってるよ、あいつ根っこで、缶詰開けるレベルの器用さだったもん。」
「次に木工職人による全身ヤスリがけマッサージです。」
「なるほど全ての皮を剥ぐ…削ぐ?わけだな」
「そして高濃度の塩水風呂に入っていただきます。」
「もちろん正気を失わせない魔法ありだろうなぁ」
「はい。ここまでが第1段階でこれをあと15回ほど行います。」
「あー回復薬ポーション便利だなぁ」
「次に第2段階です。ここまで何も食べていないわけです。さらに元国王、最高のおもてなしをしようと食べたことの無い料理を出させて頂きます。」
「なるほどなるほど……抜いた髪の毛とかか?」
「惜しいです。自身の肉体です。」
「拷問の為に一体いくらの回復薬ポーション代がかかる予定だったのか…」
「最後はユグドラシルが担当するそうです。多分九つの世界を回るツアーでも行く予定だったんじゃないですか?」


グランは思った。愚王に出来なかった分帝国貴族らへこの方法が使われるんだろうなと。暗い目をして笑っているリヒトとユグドラシルの拷問内容を聞き、これからそれを実行するであろう部下たちへ特別手当を出してやろうと。

そうして2人は今後について話し合うため部屋を移動した。


































拷問部屋からは人々のくぐもった悲鳴が響いていた。
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