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アヴェントゥリーニス竜王国
披露宴3
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パーティーも中頃、挨拶を済ませ参加者は皆披露宴を楽しんでいた頃…
「いたいた。ロゼリア、クリストファー!」
「綺麗よ2人とも!その衣装よく似合ってるわ」
「そうですね。それに先程の挨拶も良かったです。」
「あぁそうだな。」
王族やロゼリア、クリストファー、ラヴェリオ、ジルバートがいる壇上に【始祖の竜人】ら当主とその子供達が挨拶にやってきた。国王グランもその中に入り嬉しそうにラヴェリオをつついた。
「この前言っていた俺達の子供達だ。仲良くしてやってくれ!」
ダンがそう言うと、5人の同じ歳くらいの男女が2人の前に姿を現した。
「初めまして…じゃないんだけど、君らは覚えてないだろうよね。えっと…ジルバートと一緒にあの作戦に参加した【赤竜】マクシミリアン=ルーフスだよ。よろしくロゼリア嬢クリストファー殿」
「私達は初対面よ。初めましてロゼリア様、クリストファー様。私は【白竜】セシリア=アルブムよ。同じ【始祖の竜人】どうし仲良くしましょっ!それにロゼリア様とは同じ女性同士、特に仲良くなりたいわ!」
「初めまして、私は【青竜】チェルシー=ランドルフです。是非私とも仲良くして欲しいです。」
「初めましてロゼリア嬢、クリストファー殿。私の名前は【緑竜】エリック=ウィリディスです。お二人共本が好きだと聞きました。是非1度お茶と共に語り合いたいと思っています。宜しく。」
「僕が最後だね。初めましてロゼリア嬢、クリストファー殿。僕は第1王子【金竜】グラシアス=アウルム=アヴェントゥリーニスだ。これから長い付き合いになる、よろしく頼む。」
5人は順番に挨拶をした。ロゼリアとクリストファーは差し出された手を握り、笑顔で握手を交わした。
「初めましてロゼリア=アルゲントゥムと申します。至らない所も多いと思いますが、皆様に習い立派な淑女となれるよう精進したいと思います。これからどうぞよろしくお願いしますわ。」
「初めましてクリストファー=アルゲントゥムと申します。私も妹と同様、皆様から御指南頂けると幸いです。【始祖の竜人】としてこれからも精進したいと思います。どうぞよろしく。」
2人の堅い挨拶に苦笑した大人たちは、彼らが親睦を深められるようホールへ向かうよう勧めた。
「ほら、皆1曲踊ってきてはどう?ロゼリアとクリストファーは練習を頑張っていたからちょうどいいわね」
そして曲が流れ始め、ロゼリアとクリストファーはジルバートに教えをこい練習したダンスを踊り始めた。
ロゼリアの薄紫のドレスの裾がふわりと舞い、重ねられたチュール生地がヒラヒラと広がる。ロゼリアとクリストファーのダンスはまるで花の妖精が舞っているかのように美しく、見た者の目を捉えて離さない。
楽しそうに笑いながら踊る2人を周囲の者は熱いため息を零し見つめていた。
「ふふっなんだか今日はクリスがカッコ良く見えるわっ」
「えー僕はいつもはカッコ悪いの?」
「そうじゃないけど、同じ顔なのだから何とも思わないわ。でも今日はカッコ良く見えちゃうのっふふっ不思議ね!それにとっても楽しいわ」
「それもそうか。ロゼはいつも綺麗だけど、今日は一段と華やかで…まるで大輪の花のように綺麗だ。」
「ふふっ騙されないわよっ。ジルの真似でしょ?」
「バレてたか。綺麗なのは本当だけど、同じ顔を褒めるのは難しいよ。」
2人は楽しそうに笑いながら会話をしていた。その間も周囲を魅了するダンスを踊りながら、彼らはクルクルと楽しそうにしていた。
「ふふふっ楽しかったわね!」
「そうだね。初めてのダンスがロゼで良かった」
「あら私もよ?」
「ふふっありがと」
次にクリストファーはロゼリアのエスコートを父ラヴェリオに交代した。そしてロゼリアはラヴェリオに手を取られダンスを踊り始めた。
「ふふっお父様と踊れるなんて夢見たい!お父様のリードだと私綺麗に見えている気がするわ」
「楽しんで貰えて嬉しいな。ロゼリアはいつも綺麗だよ。それに今日のドレスよく似合ってる。さすがリラに頼んだだけあるよ。」
「そうですのっ!リラ様とマダム・フィオーレのお陰ですわ。それにお父様とのダンスはクリスと違って私を綺麗に見せてくれるんですよ」
「クリストファーは違うのかい?」
「クリスとのダンスは楽しむためのダンスですの。ジルがそう言っていましたわ。ダンスは相手によって女性の見え方が全然違うんですって!だからお父様と踊る私は皆には羽が生えているんじゃないかしら?ふふふっ」
「そうかもしれないな。ロゼリアはまるで女神のように美しいからね」
「もーお父様!冗談ですのに…真面目に返されると照れてしまいますわ」
2人はしばらく親子の会話を楽しみながら踊っていた。実際彼らのダンスは先程のとはまた違った美しさがあり、周囲の者は次はどんなダンスを見せてくれるのだろうと期待していた。
「リア」
ロゼリアはラヴェリオとのダンスが終わり、ジルバートに声をかけられた。
「私と踊っては頂けませんか?」
ロゼリアはジルバートの真剣な顔を見て一瞬驚いた様に目を見い開いたが、すぐに頬を染め誰もが見惚れるような笑みを浮かべ彼の手をとった。
「もちろん」
ロゼリアとジルバートのダンスは優雅であり、艶やかで会場を一瞬で呑む美しさだった。ロゼリアが頬を染め幸せそうにはにかみ、その彼女を蕩けるような微笑みで愛おしそうに見つめるジルバート。
「綺麗だよリア…誰の目にも写したくない…俺だけのものにしたいくらい…」
「ジルもカッコよくて…女性の私より色っぽいわ!何だか負けた気分よ。それに…そんな色気ダダ漏れじゃあ他の女性たちに惚れられてしまうわ!………私のなのに(ボソッ」
ジルバートはロゼリアの最後の呟きをしっかりと聞き、目を丸くした後頬を染めロメリアを抱き寄せた。
「わっ!もういきなり抱き寄せないでよ」
「リアが可愛すぎるのが悪い。それに…」
「どうしたの?」
「………頭では分かってるんだ…ようやく会えた家族とダンスを踊るのも……でも…リアが嬉しそうに踊るのを見て…」
「嫉妬しちゃったんだ?」
ロゼリアはニヤリと楽しそうに笑うと、ジルバートを引き寄せリードをし始めた。ジルバートはロゼリアの言葉に恥ずかしそうであり、気まづげに目線を逸らした。そして彼女に引き寄せられ驚いた様に彼女の紫の瞳とぶつかった。
「ほらっ!なら今から貴方が嫉妬した分楽しめばいいのよ。プライド高めなジルバート君の為に私ロゼリアが君をリードしてあげよう!ってわぁっ!」
「そうわさせないよ。」
ジルバートは強引にロゼリアを引き寄せ彼女からリードを奪うとくるくるとロゼリアを回し始めた。
ロゼリアは文句を言いながらも楽しそうで、2人のダンスは何度もその印象を変えながら続いた。
「これからはよろしくね、婚約者様。私のダンスは貴方のものよ。他の誰にも与えない。」
「こちらそこよろしく婚約者殿。俺のダンスは君だけのものだ。そして君のダンスは誰にも渡さないよう守り抜くよ。」
2人は楽しそうに笑い合い、その後も何曲か踊り続けた。
ーーーーーーーーー
「2人とも今日はお疲れ様。初めての社交界はどうだったかい?」
「夢のようで…とても楽しかったですわ!」
「そうだね…でも僕はしばらくいいや……」
ロゼリアとクリストファー、ラヴェリオはアルゲントゥム公爵邸に戻り、談話室で紅茶を飲んでいた。
「あら、どうして?」
「ロゼはジルが付きっきりで踊ってたからいいけど、その分僕に挨拶やら品定めやらがひっきりなしに来たんだよ。それに………ご令嬢方の勢いが…後半何を言っているのか分かんなかったよ。」
「途中私と離れてからのクリストファーは人気だったな…。」
「まぁ!………おめでとうとは言えない様子だったのね」
ロゼリアはクリストファーの疲れきった様子と、それを心配するラヴェリオを見た。そして令嬢の押しがそれ程だった事を察したのだった。
ーーーーーーーーー
「ねぇロゼ。」
ロゼリアが部屋で寛いでいるとクリストファーが訪れた。ロゼリアはクリストファーを部屋に入れ侍女に紅茶を用意させた後、部屋から退出させた。
「ロゼは親友が欲しいんじゃなかったの?」
「あらクリスこそ。あんな他人行儀の挨拶じゃ難しいわよ?」
「それはロゼにも言える事だよ。どうしてロゼも?」
「……クリスと同じ、私はまだ誰も信用する事は出来ない。それはお父様もよ」
ロゼリアは紅茶をソーサーに起き、真剣な顔でクリストファーを見つめた。紫の瞳がぶつかり合う。クリストファーはその眼差しを受け止め口を開いた。
「そうだね。僕達はまだ誰も信じる事が出来ない。……ジルは?彼は【番】何だろう?」
「………そうね。でも盲信するほど私の理性は弱くないわ。【番】は確かに居ると安心するし離れ難い。心から彼に対する愛情を感じるの。
だけどね…私はまだ彼を信じられない。彼に私達の秘密を伝えて拒絶される事を考えただけで息が…苦しくなるの…。」
「ロゼ…」
ロゼリアは顔を歪め胸を抑えた。クリストファーは悲痛な顔をし、拳を握り締めた。
「私は彼が私を受け止めてくれると信用出来るまで、本当の意味で彼と幸せになる事はないわ。」
「うん……それが…僕達への罰なんだろうね。」
クリストファーは俯き、悲しげに笑った。ロゼリアは窓の外から見える街の様子をただ見つめていた。
「いたいた。ロゼリア、クリストファー!」
「綺麗よ2人とも!その衣装よく似合ってるわ」
「そうですね。それに先程の挨拶も良かったです。」
「あぁそうだな。」
王族やロゼリア、クリストファー、ラヴェリオ、ジルバートがいる壇上に【始祖の竜人】ら当主とその子供達が挨拶にやってきた。国王グランもその中に入り嬉しそうにラヴェリオをつついた。
「この前言っていた俺達の子供達だ。仲良くしてやってくれ!」
ダンがそう言うと、5人の同じ歳くらいの男女が2人の前に姿を現した。
「初めまして…じゃないんだけど、君らは覚えてないだろうよね。えっと…ジルバートと一緒にあの作戦に参加した【赤竜】マクシミリアン=ルーフスだよ。よろしくロゼリア嬢クリストファー殿」
「私達は初対面よ。初めましてロゼリア様、クリストファー様。私は【白竜】セシリア=アルブムよ。同じ【始祖の竜人】どうし仲良くしましょっ!それにロゼリア様とは同じ女性同士、特に仲良くなりたいわ!」
「初めまして、私は【青竜】チェルシー=ランドルフです。是非私とも仲良くして欲しいです。」
「初めましてロゼリア嬢、クリストファー殿。私の名前は【緑竜】エリック=ウィリディスです。お二人共本が好きだと聞きました。是非1度お茶と共に語り合いたいと思っています。宜しく。」
「僕が最後だね。初めましてロゼリア嬢、クリストファー殿。僕は第1王子【金竜】グラシアス=アウルム=アヴェントゥリーニスだ。これから長い付き合いになる、よろしく頼む。」
5人は順番に挨拶をした。ロゼリアとクリストファーは差し出された手を握り、笑顔で握手を交わした。
「初めましてロゼリア=アルゲントゥムと申します。至らない所も多いと思いますが、皆様に習い立派な淑女となれるよう精進したいと思います。これからどうぞよろしくお願いしますわ。」
「初めましてクリストファー=アルゲントゥムと申します。私も妹と同様、皆様から御指南頂けると幸いです。【始祖の竜人】としてこれからも精進したいと思います。どうぞよろしく。」
2人の堅い挨拶に苦笑した大人たちは、彼らが親睦を深められるようホールへ向かうよう勧めた。
「ほら、皆1曲踊ってきてはどう?ロゼリアとクリストファーは練習を頑張っていたからちょうどいいわね」
そして曲が流れ始め、ロゼリアとクリストファーはジルバートに教えをこい練習したダンスを踊り始めた。
ロゼリアの薄紫のドレスの裾がふわりと舞い、重ねられたチュール生地がヒラヒラと広がる。ロゼリアとクリストファーのダンスはまるで花の妖精が舞っているかのように美しく、見た者の目を捉えて離さない。
楽しそうに笑いながら踊る2人を周囲の者は熱いため息を零し見つめていた。
「ふふっなんだか今日はクリスがカッコ良く見えるわっ」
「えー僕はいつもはカッコ悪いの?」
「そうじゃないけど、同じ顔なのだから何とも思わないわ。でも今日はカッコ良く見えちゃうのっふふっ不思議ね!それにとっても楽しいわ」
「それもそうか。ロゼはいつも綺麗だけど、今日は一段と華やかで…まるで大輪の花のように綺麗だ。」
「ふふっ騙されないわよっ。ジルの真似でしょ?」
「バレてたか。綺麗なのは本当だけど、同じ顔を褒めるのは難しいよ。」
2人は楽しそうに笑いながら会話をしていた。その間も周囲を魅了するダンスを踊りながら、彼らはクルクルと楽しそうにしていた。
「ふふふっ楽しかったわね!」
「そうだね。初めてのダンスがロゼで良かった」
「あら私もよ?」
「ふふっありがと」
次にクリストファーはロゼリアのエスコートを父ラヴェリオに交代した。そしてロゼリアはラヴェリオに手を取られダンスを踊り始めた。
「ふふっお父様と踊れるなんて夢見たい!お父様のリードだと私綺麗に見えている気がするわ」
「楽しんで貰えて嬉しいな。ロゼリアはいつも綺麗だよ。それに今日のドレスよく似合ってる。さすがリラに頼んだだけあるよ。」
「そうですのっ!リラ様とマダム・フィオーレのお陰ですわ。それにお父様とのダンスはクリスと違って私を綺麗に見せてくれるんですよ」
「クリストファーは違うのかい?」
「クリスとのダンスは楽しむためのダンスですの。ジルがそう言っていましたわ。ダンスは相手によって女性の見え方が全然違うんですって!だからお父様と踊る私は皆には羽が生えているんじゃないかしら?ふふふっ」
「そうかもしれないな。ロゼリアはまるで女神のように美しいからね」
「もーお父様!冗談ですのに…真面目に返されると照れてしまいますわ」
2人はしばらく親子の会話を楽しみながら踊っていた。実際彼らのダンスは先程のとはまた違った美しさがあり、周囲の者は次はどんなダンスを見せてくれるのだろうと期待していた。
「リア」
ロゼリアはラヴェリオとのダンスが終わり、ジルバートに声をかけられた。
「私と踊っては頂けませんか?」
ロゼリアはジルバートの真剣な顔を見て一瞬驚いた様に目を見い開いたが、すぐに頬を染め誰もが見惚れるような笑みを浮かべ彼の手をとった。
「もちろん」
ロゼリアとジルバートのダンスは優雅であり、艶やかで会場を一瞬で呑む美しさだった。ロゼリアが頬を染め幸せそうにはにかみ、その彼女を蕩けるような微笑みで愛おしそうに見つめるジルバート。
「綺麗だよリア…誰の目にも写したくない…俺だけのものにしたいくらい…」
「ジルもカッコよくて…女性の私より色っぽいわ!何だか負けた気分よ。それに…そんな色気ダダ漏れじゃあ他の女性たちに惚れられてしまうわ!………私のなのに(ボソッ」
ジルバートはロゼリアの最後の呟きをしっかりと聞き、目を丸くした後頬を染めロメリアを抱き寄せた。
「わっ!もういきなり抱き寄せないでよ」
「リアが可愛すぎるのが悪い。それに…」
「どうしたの?」
「………頭では分かってるんだ…ようやく会えた家族とダンスを踊るのも……でも…リアが嬉しそうに踊るのを見て…」
「嫉妬しちゃったんだ?」
ロゼリアはニヤリと楽しそうに笑うと、ジルバートを引き寄せリードをし始めた。ジルバートはロゼリアの言葉に恥ずかしそうであり、気まづげに目線を逸らした。そして彼女に引き寄せられ驚いた様に彼女の紫の瞳とぶつかった。
「ほらっ!なら今から貴方が嫉妬した分楽しめばいいのよ。プライド高めなジルバート君の為に私ロゼリアが君をリードしてあげよう!ってわぁっ!」
「そうわさせないよ。」
ジルバートは強引にロゼリアを引き寄せ彼女からリードを奪うとくるくるとロゼリアを回し始めた。
ロゼリアは文句を言いながらも楽しそうで、2人のダンスは何度もその印象を変えながら続いた。
「これからはよろしくね、婚約者様。私のダンスは貴方のものよ。他の誰にも与えない。」
「こちらそこよろしく婚約者殿。俺のダンスは君だけのものだ。そして君のダンスは誰にも渡さないよう守り抜くよ。」
2人は楽しそうに笑い合い、その後も何曲か踊り続けた。
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「2人とも今日はお疲れ様。初めての社交界はどうだったかい?」
「夢のようで…とても楽しかったですわ!」
「そうだね…でも僕はしばらくいいや……」
ロゼリアとクリストファー、ラヴェリオはアルゲントゥム公爵邸に戻り、談話室で紅茶を飲んでいた。
「あら、どうして?」
「ロゼはジルが付きっきりで踊ってたからいいけど、その分僕に挨拶やら品定めやらがひっきりなしに来たんだよ。それに………ご令嬢方の勢いが…後半何を言っているのか分かんなかったよ。」
「途中私と離れてからのクリストファーは人気だったな…。」
「まぁ!………おめでとうとは言えない様子だったのね」
ロゼリアはクリストファーの疲れきった様子と、それを心配するラヴェリオを見た。そして令嬢の押しがそれ程だった事を察したのだった。
ーーーーーーーーー
「ねぇロゼ。」
ロゼリアが部屋で寛いでいるとクリストファーが訪れた。ロゼリアはクリストファーを部屋に入れ侍女に紅茶を用意させた後、部屋から退出させた。
「ロゼは親友が欲しいんじゃなかったの?」
「あらクリスこそ。あんな他人行儀の挨拶じゃ難しいわよ?」
「それはロゼにも言える事だよ。どうしてロゼも?」
「……クリスと同じ、私はまだ誰も信用する事は出来ない。それはお父様もよ」
ロゼリアは紅茶をソーサーに起き、真剣な顔でクリストファーを見つめた。紫の瞳がぶつかり合う。クリストファーはその眼差しを受け止め口を開いた。
「そうだね。僕達はまだ誰も信じる事が出来ない。……ジルは?彼は【番】何だろう?」
「………そうね。でも盲信するほど私の理性は弱くないわ。【番】は確かに居ると安心するし離れ難い。心から彼に対する愛情を感じるの。
だけどね…私はまだ彼を信じられない。彼に私達の秘密を伝えて拒絶される事を考えただけで息が…苦しくなるの…。」
「ロゼ…」
ロゼリアは顔を歪め胸を抑えた。クリストファーは悲痛な顔をし、拳を握り締めた。
「私は彼が私を受け止めてくれると信用出来るまで、本当の意味で彼と幸せになる事はないわ。」
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