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アヴェントゥリーニス竜王国

披露宴1

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あっという間に1ヶ月が過ぎ、ロゼリアとクリストファーのお披露目が王城で大々的に開催される日がやってきた。城下も2人の事を人目見ようとパレードが行われる予定の大通りには朝から沢山の人で溢れかえっていた。


ー宮殿の一室にてー

ロゼリアとクリストファー、ラヴェリオはお披露目の為、国王グランの計らいで城の一室で支度をしていた。

「ど…どうかしら?」
「とてもお綺麗ですお嬢様。お嬢様の前では美の女神ですらしっぽを巻いて逃げ出してしまいますわ…」

ロゼリアの支度を手伝っていた侍女たちは口々に褒めたたえた。それ程までに彼女は美しかったのだ。
キラキラと輝く銀髪は複雑に編み込まれ、彼女の白く艶かしいうなじを顕にしている。まるで紫水晶のような見るものを魅了する瞳は不安に揺れ、それが彼女を年相応の愛らしさを見るものに与えている。彼女の美しさを引き立てる薄い化粧を施された顔に、耳にはジルバートとお揃いのピアスと、後日贈られたダイヤモンドのスタッドピアスが輝いていた。
そしてそんな彼女を少女と女性の間の美しさを引き立てるドレスは最高級の生地で仕立てられた、マダム・フィオーレの店《セリー二》の新作だ。
オフショルダーのAラインドレスで、肩口には彼女の瞳と同じ様々な布の花が咲き乱れ、細い腰や首に巻きついた深紫のリボンと、何層にも重ねられ広がる薄紫のチュール生地のドレスは、彼女を花束のように見せていた。

侍女の言葉に笑顔を見せたロゼリアは、顔を赤くする侍女を不思議そうにしながらクリストファーとラヴェリオの迎えを待った。

コンコンッ

ドアがノックされ入ってきたのは、待っていた2人と…

「ジル?」

ジルバートはロゼリアを見た瞬間笑顔で固まった。その様子をニヤニヤしながらみるクリストファーと娘の着飾った姿を褒めまくる父親でロゼリアは困惑した。
クリストファーは白の燕尾服でラペルや胸ポケットなど一部が深紫でよく似合っていた。装飾はなく、唯一服のボタンが宝石で凝った意匠になっていた。
ラヴェリオはライトグレーの燕尾服にグレーのベストを着て、彼の荘厳な雰囲気にピッタリだった。
そして2人の様子を伺いながらロゼリアはジルバートに視線を移した。
ジルバートは黒のシンプルなデザインの燕尾服だったが、彼のスタイルの良さが際立ち黒髪も相まって、彼の瞳の魅力が引き立てられている。

ロゼリアはジルバートの姿に見蕩れていた。そしてジルバートも。
2人はお互いの姿に見蕩れ見つめ合っていた。そんな2人をやれやれとクリストファーが声を掛け現実に引き戻す。

「はーい。2人ともお互いに見惚れるのは良いけどそろそろ行かないといけないよ。ほらジル、ロゼをエスコートするんだろ?」
「あ…あぁ。リア…凄く綺麗だ……今にも押し倒して誰にも見せないように部屋に閉じ込めたくなる…」
「あ…ありがと…閉じ込められるのは嫌だけど……えっと…ジルも…凄くカッコイイし綺麗だわ」

2人は頬を少し赤く染めながら歩みを進めた。




ーーーーーーーーー

「わぁぁ……凄い人…」
「そう…だね……」

ロゼリアとクリストファーは城下の様子を写した魔道具を見て驚いた。それ程までに大通りに人が溢れかえっていたからだ。

「ふふっ2人を一目でも見たいんだろうね。あ、そろそろ陛下の演説が始まる…準備しないといけないよ。リアおいで。」

ジルバートはそう言うとロゼリアをエスコートし、ラヴェリオ、クリストファーと共に4人で国王の居るバルコニー横に控えた。










「15年前、【始祖の竜人】【銀竜】アルゲントゥム公爵の妻であり番のラシェル夫人が拐われた事は皆も知っているだろう。我々は友のため、同じ竜人である仲間のためこの15年間彼女の捜索を続けてきた…」

国民は真剣な表情で国王の言葉を聞いていた。国王の様子は街中にある魔道具から映像と音声が放送され、国民は当時を思い出したのか、涙するものまで居た。竜人は仲間意識が強く、それが敬愛する【始祖の竜人】ともあれば、他人事などと言えない。

「だが……我々の力及ばず…彼女は10年前に既に儚くなっていた事は皆も知っているだろう…。我々は…せめて亡骸だけでもと…この10年探し続けた。
そして我々は!遂に彼女を拐った国を突き止めた!!そこで我々が切望し続けた宝を見つけた!そうだ皆ももう知っているのだろう!?
紹介しよう!【銀竜】ラヴェリオとその番ラシェルの子、ロゼリアとクリストファーだ!!」

ロゼリアはクリストファーにエスコートされながら、2人は笑顔でバルコニーに立った。城内の庭には招待した各国の使者や、自国の貴族や有権者が集まっていた。彼らや国民にとって2人は15年前の悲劇に差し込んだ光であり、国民の宝であった。2人が現れた瞬間空気が震えるほどの大歓声が沸き起こり、魔法師団が魔法で花吹雪を王都中にまいた。式典の際に空を滑空する竜騎士も飛び、王都は歓喜に震えていた。






「くくっ…言っただろ?お前達が何か言う前に国民が大騒ぎしてそれどころじゃなくなるってっ」
「まさかあそこまでとは……普通は思いませんもの」
「【始祖の竜人】の人気は書物では書き表せないほどのものということですね…」

国王グランの言葉に2人は苦笑いを浮かべ頷いた。実は本来ロゼリアとクリストファーから国民に向けて、今回のことでお礼の言葉があったのだ。だが国王は竜人の事をよく知っていたため最初から諦めていたのだ。

ジルバートとはここで別れ、ロゼリアとクリストファー、ラヴェリオは馬車に乗り、パレードに参加した。
店があるのは下級貴族街までだが、今回は特別ということで上級貴族街の中ほどまで出店が立ち並び、国民は上級貴族街まで大通りにごった返していた。
ロゼリア達がのるオープン馬車が王城から出てくると国民は大歓声で迎えた。ある者は泣き叫び、ある者は歓声をあげ続け、ある者は3人を見ようと懸命に飛び跳ねたりと、皆それぞれ親子3人の再会を喜びあっていた。
またロゼリアとクリストファーがラシェル姫の再来と謳われるほどの美貌と、敬愛する【銀竜】の色を持っていたこともあるのだろう。翌日早くも2人のファンが増え、彼らの姿絵が飛ぶように売れたのは言うまでもない。

「すっごい人ね……こんなにも私達の事を喜んでくれる人が居たなんて………嬉しいね…クリス…」
「うん…僕達は幸せ者だね…母上も見てる…かな…?」




この時誰も2人の声を聞いたものは居ない。彼らは笑顔の裏で固く手を繋ぎ、過去に冒した罪に震えていたことを…。


誰も知らない。


ラシェルの遺体の行方を


それを知るのは彼女を看取った2人のみ


ロゼリアとクリストファーは笑顔でパレードを終え、ラヴェリオと3人で王城のパーティーに参加するため、ホールへ向かった。

















































「これは僕とロゼの秘密だ。」

あの日幼いロゼリアとクリストファーは涙を流し誓い合った。
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