異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

新ダンジョン探索-16-

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 車はそのまますぐに港エリアに入り、一隻の船の前で停まる。

 

 全体が白色で、「海上保安庁」と書かれた横幅が20メートルほどある船だった。

 

 船と同じ白色の制服を着た男が数人降りてきた。



「間宮三尉、みなさま、お待ちしておりました」



 一番年長の男……おそらく船長だろう……がそう言うと、綾音さんに敬礼をする。

 

 そして、隊員たちを見た後、俺とキャシーさんを見て、そこで怪訝な顔を浮かべる。



「この方たちは……」



「……この二人とわたしが今回の対象です」



「……なる……ほど」

 

 船長は眉根を寄せて顔をしかめたが、すぐに表情を戻してうなずいた。



 あまり俺等については詮索しない方が良いと思ったのかもしれない。



「……ではみなさま、さっそくですが、準備のほどをよろしくお願いします」

 

 船長がそう言うと、他の乗組員たちが何人か船から降りてきて、綾音さんの部下たちと何やら話して、荷物を積んでいる。



 綾音さんがその作業を見守りながら、キャシーさんの方を見て、



「ウォーカー少尉……準備はよろしいでしょうか?」

 

 と、やや含みがある表情を浮かべる。

 

 それもそのはずでキャシーさんは未だに白のスーツ姿のままだった。



「はあ……さすがに着替えないといけないか……」

 

 キャシーさんは、やれやれと大きなため息をつくと、



「じゃあちょっと着替えてくるけど……ケイゾウ? 覗かないでよ」

 

 と、突然俺に話しかけてくる。



「え……い、いや」

 

 そのあまりに脈絡がない話しの展開に俺が戸惑いの声を返すと、



「あなたはかなり女癖が悪いというレポートを読んだわ。色々な冒険者の女性たちに手を出しているそうじゃない? だいたいはじめて会った時もいきなりわたしの体に触れてきたしね……」

 

 と、キャシーさんに睨まれる。

 

 てっきり何かの冗談かと思ったが、キャシーさんの表情は真剣そのものだった。

 

 というか若干怒っているようにすら見える。



「ごほん……ウォーカー少尉、あまり時間がないので……」

 

 と、ありがたいことに綾音さんが助け舟を出してくれる。

 

 キャシーさんは俺への冷たい視線を向けながら、荷物を抱えて、船内に入っていく。



 いったいどんな内容が書かれているのだろうか……。



 いずれにせよ風評被害も甚だしい。



 あの晩餐会のときは、確かにキャシーさんの体に触れてしまったが、あれは不可抗力だしな。



 それにしても、サバサバしているように見えて、キャシーさんは意外と根に持つタイプなのかもしれない。



 両手を組んでうなっていると、綾音さんが俺をじっと見ていることに気がついた。



 顔を上げて、綾音さんの方を見ると、



「ふ、二見……やはりお前は、わたし以外の女性にも……」

 

 綾音さんはそう小さな声でつぶやくと、顔を赤らめてすぐに俺から視線をそらしてしまう。

 

 船長が、



「こちらの準備は完了しました」

 

 と、声をかけてくる。



「わかりました。そ、それでは我々も乗り込むぞ。二見」

 

 綾音さんはそういうと、そのままやや駆け足気味に船に乗り組む。

 

 俺もあわててその後を追う。

 

 数分後にキャシーさんも着替えが終わったようで、迷彩柄の戦闘服姿で、船に乗り込んでくる。

 

 当然先ほどのような派手さはないが、それでもキャシーさんの美貌は大分目立っているように思えた。



 とうの本人にしても無骨な姿は嫌だと言っていた割には今も大分自信満々に振る舞っているように見えた。

 

 ふと、俺はキャシーさんが着ている戦闘服の細部に目がとまった。

 

 見慣れた素材が使われていたからだ。



 傍目から見ると、軍のオースドックスな戦闘服に見えるが、よくよく見るとルーンが使われていた。



 どうやら、キャシーさんの戦闘服はルーンを随所に施して、魔法防御を向上させているようだ。

 

 これなら簡単な魔法ならばほとんどダメージを受けることはないだろう。

 

 まあ……本当に簡易な魔法に限るが……この世界のダンジョンに出現するモンスターや存在する魔法に対処するのにはこれで十分なのだろうか。

 

 綾音さんはキャシーさんが乗り込んだことを確認すると、船長に出港の要請をしていた。
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