異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

新ダンジョン探索-08-

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 そもそも美月さんが綾音さんに俺が言ったこととはまるで違うことを話すから、変なことになったのではないか……。



 俺が思わず面白がっている美月さんを不審な目で見ると、美月さんは、



「そんな目をしないでください。わたしはこう見えても、ダンジョン探索を可能な限り危険なく行っていただくために、お二人の関係を改善しようとしたんです。結果はご覧の通り成功したと思うのですが」

 

 と、言って心外だという表情を浮かべている。

 

 どう見ても関係が改善したとは思えないが……。

 

 むしろ悪化した気がする。

 

 俺が顔をしかめていると、美月さんは片手を前に出して、待ったというポーズをする。

 

 そして、美月さんは、



「安心してください。わたしはこう見えても綾音さんとの付き合いは長いんです。だから、綾音さんのことをそれなりにわかっているつもりです。そして、そんなわたしから二見さんに僭越ながらこれからの綾音さんとの関係をさらに上手く運ぶためのアドバイスをさせていただきます」



 と、やけに妙にかしこまった顔を浮かべて、若干の間を取ると、



「わたしの長年の分析によれば、綾音さんはああ見えて、年上の……自分を守ってくれるような強い父親のような男性に弱い……いえ憧れているんです。だから、二見さん、さっきみたいに男らしく振る舞えば、きっと綾音さんとの関係はもっと上手くいきますよ」



 自信満々にそう言い放つ。



 その美月さんの表情を見て、俺は一瞬麻耶さんの顔を思い出した。



 美月さんと麻耶さん……この母娘の性格はかなり違うと思うのだが、やはり本質的なところでは似ているのだろうか……。



 美月さんが妙に確信を持っているのはよいが、そもそも俺は男らしいところを見せるどころか、先ほども綾音さんとほとんど会話していないのだが……。



「まあ……だといいんですが……。がんばります」



「二見さん、その意気です。この機会に綾音さんとの関係を深めて……って。あまり深めすぎてしまうと、母の立場が……。いえ……それはそれで見ものではありますけど」



 と、美月さんは小首を傾げて下を向くと微笑している。

 

 俺はその様子を見て、このまま美月さんとここにいても、ろくなことになりそうにないという確信に近い予感がしたので、さっさと綾音さんの後を追うことにした。

 

 新ダンジョンの探索の件について、結局綾音さんとロクに話せなかったしな。



「では、自分はこれで……。案内ありがとうございました」

 

 と、俺がその場から離れようとすると、美月さんは何かを思い出したかのように、



「あ……そうだ。大事なことを忘れていました。花蓮さんと鈴羽さんにはちゃんと新ダンジョンに行くことを二見さんの口から言っておいてくださいね」



 と、言う。



 そして、ややあって、美月さんは



「わたし……お二人に恨まれたくないので」

 

 と、ぼそりといやに深刻そうな口調で言う。



「いやでも……自分はお二人の連絡先を知らないのですが」

 

 そう……俺はそもそも花蓮さんと鈴羽さんの連絡先をしらない。

 

 ここ数日なぜか縁があって一緒にいる機会が多かったが、そもそもお二人と俺の関係はその程度のものである。

 

 むろんそれにもかかわらず、花蓮さんたちがそんな赤の他人に近い俺のことを心配はしてくれるのはありがたい。



 だがあえて連絡するというのも……なにかおこがましい気がするのだが。



 そんなことを思いながら久々にスマホを手に取る。



 俺はあまりスマホをこまめに見る習慣がない。



 未だに90年代の習慣から抜けきれずに小さい画面でネットをするというのはなんとなく慣れない。



 それに、交友関係が皆無の俺は連絡手段としての純粋な携帯機能としてのスマホもあまり使わない。

 

 そういう訳でほとんど半日以上、俺のスマホはいつも通り放置状態だった。



 もっとも、それで困る訳でもなく、普段と同じく何らの通知もないはずなのだが……。



 が……しかし、俺のスマホには見たこともないほどのメッセージと着信履歴がきていた。
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