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第一章
新ダンジョン探索-05-
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その顔は、明らかにキャシーさんに対して違和感を覚えているような様子であった。
綾音さんとキャシーさん……二人とも若い女性士官であり、ダンジョン関連の仕事に従事している。
共通点は非常に多いようだが、なんとなく先ほどの短いやり取りだけを見ても、二人はその性格や性分がまったく違うように俺には思えた。
二人とも服装や装いからしてまるで違うしな……。
俺は綾音さんの横顔をチラリと見る。
綾音さんはやはり女性らしさを極力排している。
少しそれは不自然なくらいに——。
駐屯地をざっと見た限りではやはり今でも男が圧倒的に多いから、女性でかつ士官の綾音さんは色々とこの場では周りに気を使っているのかもしれない。
それを考えるともしかしたら俺が勝手に思い込んでいるだけで、実は綾音さんもプライベートにおいては、キャシーさんと同じように女性らしさを強調した服装や出で立ちをしているのだろうか。
俺は脳裏にキャシーさんと同じような服装をしている綾音さんの魅惑的な姿を思い描いてしまう。
「……ふ、二見、さっきからわたしのことを見ているようだが、何かあるのか」
と、綾音さんが俺をジロリと見る。
俺は綾音さんに気づかれぬように覗き見していたつもりであったが、実際はあからさまな視線を送っていたらしい。
「い、いえ……すいません。特には——」
俺は脳裏に浮かんでいる綾音さんの扇情的な姿をあわてて頭から追い払い、ごまかす。
「そ、そうか……な、ならいいが」
綾音さんはなぜかほっとした様子で、その顔は少し朱色に染まっていた。
「ごほん……お前とはこれから色々と行動をともにしていかなければならない。だ、だから、こないだの件を整理しておきたい」
と、綾音さんは先ほどよりもさらに顔を赤くさせて、恥ずかしそうに顔を下に向けている。
俺がふと横を見ると、隣にいた美月さんは綾音さんのそうした様子に興味しんしんといった素振りをしている。
そして、美月さんの顔には例のうろんな笑みが浮かんでいた。
綾音さんは、美月さんの不穏な様子に気づいたのか、
「み、美月。少しプライベートな……い、いや……任務に関する重要な話しを二見とするから、悪いがはずしてくれないか」
と、言う。
「へえ……任務ですか。でも、ダンジョン探索の件なら、わたしも母に報告する必要があるので、聞いておく必要があると思うのですが」
そう言う美月さんの口調は大分わざとらしかった。
「だ、ダメだ! これから話すことは……そ、そうだ! き、機密に抵触するおそれがある。だ、だから美月とはいえ聞くことはまかり通らない!」
綾音さんは何故かは不明だが、あからさまに動揺している。
綾音さんの言動は俺から見てもだいぶ不自然であり、美月さんをその場から強引に遠ざけようとしているのがありありと見て取れた。
「機密……ですか。それならしかたがありませんね」
と、美月さんは眉根をよせながら、一応はうなずいているが、その顔はまったく納得していなさそうであった。
だが、なぜか美月さんは、そのままあっさりとその場から離れる。
綾音さんはほっとした様子で、あらためて俺に向き直り、何やら覚悟を決めたような顔を浮かべる。
その綾音さんのただならぬ様子に俺も思わずゴクリとつばを飲み込む。
そんなに重要な話しがあるのだろうか……。
「ふ、二見……その……こないだの件だが……お、お前との取引の件……その……お前のお、女になる……」
と、ボソボソと消え入るような声で言う。
さすがに耳が遠くなるような年ではないが、俺は綾音さんのその声があまりにもか細く聞き取れなかったので、申し訳ないと思いながらも再度聞き返す。
「えっと……取引……女というのは?」
と、綾音さんは顔を真っ赤に紅潮させて、プルプルと震えて下を向く。
そして、数秒くらい無言のまま、やがて、顔を俺の目の前に近づけてきて、
「……お、お前の女になるということだ!」
と、先ほどとはうってかわって大声でそう言う。
綾音さんとキャシーさん……二人とも若い女性士官であり、ダンジョン関連の仕事に従事している。
共通点は非常に多いようだが、なんとなく先ほどの短いやり取りだけを見ても、二人はその性格や性分がまったく違うように俺には思えた。
二人とも服装や装いからしてまるで違うしな……。
俺は綾音さんの横顔をチラリと見る。
綾音さんはやはり女性らしさを極力排している。
少しそれは不自然なくらいに——。
駐屯地をざっと見た限りではやはり今でも男が圧倒的に多いから、女性でかつ士官の綾音さんは色々とこの場では周りに気を使っているのかもしれない。
それを考えるともしかしたら俺が勝手に思い込んでいるだけで、実は綾音さんもプライベートにおいては、キャシーさんと同じように女性らしさを強調した服装や出で立ちをしているのだろうか。
俺は脳裏にキャシーさんと同じような服装をしている綾音さんの魅惑的な姿を思い描いてしまう。
「……ふ、二見、さっきからわたしのことを見ているようだが、何かあるのか」
と、綾音さんが俺をジロリと見る。
俺は綾音さんに気づかれぬように覗き見していたつもりであったが、実際はあからさまな視線を送っていたらしい。
「い、いえ……すいません。特には——」
俺は脳裏に浮かんでいる綾音さんの扇情的な姿をあわてて頭から追い払い、ごまかす。
「そ、そうか……な、ならいいが」
綾音さんはなぜかほっとした様子で、その顔は少し朱色に染まっていた。
「ごほん……お前とはこれから色々と行動をともにしていかなければならない。だ、だから、こないだの件を整理しておきたい」
と、綾音さんは先ほどよりもさらに顔を赤くさせて、恥ずかしそうに顔を下に向けている。
俺がふと横を見ると、隣にいた美月さんは綾音さんのそうした様子に興味しんしんといった素振りをしている。
そして、美月さんの顔には例のうろんな笑みが浮かんでいた。
綾音さんは、美月さんの不穏な様子に気づいたのか、
「み、美月。少しプライベートな……い、いや……任務に関する重要な話しを二見とするから、悪いがはずしてくれないか」
と、言う。
「へえ……任務ですか。でも、ダンジョン探索の件なら、わたしも母に報告する必要があるので、聞いておく必要があると思うのですが」
そう言う美月さんの口調は大分わざとらしかった。
「だ、ダメだ! これから話すことは……そ、そうだ! き、機密に抵触するおそれがある。だ、だから美月とはいえ聞くことはまかり通らない!」
綾音さんは何故かは不明だが、あからさまに動揺している。
綾音さんの言動は俺から見てもだいぶ不自然であり、美月さんをその場から強引に遠ざけようとしているのがありありと見て取れた。
「機密……ですか。それならしかたがありませんね」
と、美月さんは眉根をよせながら、一応はうなずいているが、その顔はまったく納得していなさそうであった。
だが、なぜか美月さんは、そのままあっさりとその場から離れる。
綾音さんはほっとした様子で、あらためて俺に向き直り、何やら覚悟を決めたような顔を浮かべる。
その綾音さんのただならぬ様子に俺も思わずゴクリとつばを飲み込む。
そんなに重要な話しがあるのだろうか……。
「ふ、二見……その……こないだの件だが……お、お前との取引の件……その……お前のお、女になる……」
と、ボソボソと消え入るような声で言う。
さすがに耳が遠くなるような年ではないが、俺は綾音さんのその声があまりにもか細く聞き取れなかったので、申し訳ないと思いながらも再度聞き返す。
「えっと……取引……女というのは?」
と、綾音さんは顔を真っ赤に紅潮させて、プルプルと震えて下を向く。
そして、数秒くらい無言のまま、やがて、顔を俺の目の前に近づけてきて、
「……お、お前の女になるということだ!」
と、先ほどとはうってかわって大声でそう言う。
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