異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
上 下
132 / 153
第一章

内閣府ダンジョン対策庁サイド-01-

しおりを挟む
 西条花蓮邸——強行突入4時間前——

 千代田区霞が関、合同庁舎ビルディングにて——

 

 その日、内閣府の外局にあたるダンジョン対策庁の職員たちは朝から市民たちからの電話対応に追われていた。

 

 もともとその性質上ダンジョン対策庁への市民からの問い合わせは非常に多い。

 

 そのため、庁では以前より専用の回線——別途コールセンター——を設けている。

 

 が……今日に限っては本庁にも電話が殺到している。

 

 それは松方が所属する冒険者管理課も同様であった。



 というのも、コールセンターは朝の9時に回線を開いたと同時に、電話が殺到し、早々にパンクしてしまったからだ。



「まったく……何が起きているんだか」

 

 松方は鳴り止まない電話にうんざりしながら、そんな愚痴を漏らす。



「松方さん! 何やっているんですか! 少しは電話取るの手伝ってくださいよ!」

 

 隣りにいる若い男……平井が、キレ気味に声をかけてくる。

 

 当然、平井以外の課員も本来ならばいる。



 だが、電話が鳴り出すのと前後して、冒険者管理課には各官庁からの照会が入った。



 他の職員はそれらに対応するために、慌ただしく席を立つことになった。



 彼らが呼び出されたのも、この電話が鳴り止まないのも、結局は同じ原因——二見敬三——なのだが……。



 現代はSNS……もといダンジョン全盛の時代である。



 インターネット、ITの加速度的進化、SNS、ダンジョン内の動画配信……。



 これらが結びつくことにより、今ではネット上の話題の大半はダンジョンにまつわる話しばかりだ。



 つまり……選挙のことしか頭にない人気取りの政治屋どもがDitterのトレンドひとつで右往左往する時代なのだ。



 結果として、嘆かわしいことに、松方たち中央官庁の役人もダンジョン内の出来事に振り回されることになる。



 まったく……まさにこれぞほまれ高き民主主義というやつか。



 松方はそう心の中で毒づく。

 

 いまこの部屋には平井と松方の二人しかいない。

 

 なぜこの二人は課に残っているのか……。

 

 まず平井についてだが、彼はこの課では新人だからやむを得ないといえる。

 

 各官庁や政治家へのレク——説明——は彼では荷が重いとされるのは当然である。



 それにたいして松方は入省30年——むろんその時はダンジョン対策庁も存在していなかった——の大ベテランである。



 そんな松方は、なぜ課に残り、暇そうにしているのか。



 それは、彼が、この課……いや庁全体で訳ありの人間だからである……。

 

 松方は平井の言葉を無視して、デスクにのっそりと座る。



 ついで、肘をついて、電話を取り続ける平井のことを興味深げに見る。

 

 7月の定例人事異動でダンジョン対策庁にやってきたこの若手の男……。

 

 最初は何か余程の大目玉をやらかして、半ば左遷、島流しでやってきたのかと思ったが……。

 

 なにせこの男は、五大省庁——特に人気がある省庁——の一角を占める警察庁から、もっとも不人気である外局のこのダンジョン対策庁に来たのだから……。



 ダンジョン対策庁は発足当初はその目新しさからそれなりの耳目を集めた。



 が……その名前の割にこの庁に与えられている実質的な権限が少ないことと、その業務の多さと内容が知れ渡るにつれて、人気は下降直線の一途を辿った。



 そういう訳で、あえてこのダンジョン対策庁を志望する人間はめったにいない。



 松方のような自他ともに認める変わり者を除けば……。

 

 しかも、平井は総合職——旧国家一種採用のいわゆるキャリア組——なのである。

 

 が……話しを聞くにこの男、なんと自らのたっての希望で、反対する上司の声をがんとしてはねのけて、この庁にやってきたのだという。



「やっぱり………変わりものだわなあ」



 いくら若手とはいえキャリア組の男が律儀にもこんな電話取りのような雑務をこなすとはねえ……。



 ノンキャリアとして、長年キャリアを見てきた松方にとって、それは単純な驚きであった。



 彼らはたいてい非常に優秀であるが、同時に合理主義者であり、良い意味でも悪い意味でも利己的である。



 いや……こいつみたいなやつもいたか……はるか昔にな……。



 遠い記憶の彼方の忘れがたき男の顔が松方の脳裏に浮かぶ……。



 松方は頭をかき、その記憶を脇へと追いやる。



 ついで、頭に手をおいて、肘掛け椅子を思いっきりのけぞらせて、伸びをする。



 平井はそんな松方を見て、完全に諦め顔で、いやみったらしく大きなため息をつく。



 そして、今も鳴り止まない電話をまた取っている。



「いえ……ですから、そもそも冒険者の個人情報は——……え!? 内閣情報調査室の関係者!? 違いますよ! いえ……公安調査庁でも——」



 平井は先ほどから何度も同じような話しをしている。



 朝からかかってくる電話……その内容は多かれ少なかれ全て同じ内容だ。



 昨日の日本アルプスダンジョン最下層で起きた出来事……いやその出来事を起こしたであろう一人の男……二見敬三についての問い合わせである。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...