異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

束の間の遊戯-23-

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 再び先ほどと同じ車に乗ると、美月さんは運転手の人に行き先を告げる。



「習志野の駐屯地にむかってください」

 

 運転手の人は「わかりました」と一言いうと、すぐに車を発進させる。



 と、美月さんは俺の方を向くと、



「二見さん、駐屯地で綾音さん……間宮三尉と合流してください。後は三尉と部隊の方々が二見さんを新ダンジョンまでエスコートしてくれる手はずになっていますので……それと昨日会った米国政府の人間……あの女性も駐屯地で合流するはずです」



 と、言う。

 

 美月さんの口調は事務的なトーンであったが、何故かその表情は思い詰めたような暗い顔を浮かべている。

 

 美月さんの話しが唐突すぎたのもあったが、何よりも彼女の見たこともない表情に俺は驚いてしまう。



 と、美月さんは俺の表情を見て、わかっていますとばかりに丁寧に説明をしてくれた。



 美月さんの話しによると、どうやら新ダンジョン探索のメンバーは俺と、綾音さん、それにキャシーさんとのことだった。



 美月さんは説明をしている間、終始不安と苛立ちが入り混じったような表情を浮かべていた。



「本来ならこんな少人数で新規のダンジョンの探索などありえません……。どんなモンスターがでるかも含めて全くの未知数で危険も計り知れないのに……。政府はいったい何を考えているんでしょうか。いえ……そもそも母はなぜこんな決定を受け入れてしまったのか……」

 

 と、美月さんは首を傾げて、難しい顔を浮かべている。

 

 そして、俺の目を見て、



「……二見さん。二見さんの実力は十分に認識していますけど、それでも今回のダンジョン探索にわたしは断固として反対です。こんな危険なことを二見さんたちに押し付けるなんて……。百歩譲って、綾音さんは自衛隊員ですし、米国政府の女性も軍所属らしいので、まだ納得できますけれど……二見さんは兵士じゃなくて単なる民間人なのに……」



 と、眉根を寄せて、唇を固く結び、憤りの表情を浮かべている。

 

 俺は美月さんのその言葉に思わずドキリとしてしまう。

 

 幸い美月さんは俺の不審な様子に気づくことなく、話しを続ける。



「わたし……やっぱりもう一度母と話しをしてみます。そして、この決定を覆してもらうようお願いしてみます。母は、新ダンジョンの探索がどれほど危険なのか誰よりもよくわかっているはずなんです。だから——」

 

 美月さんはそこまで言うと、言葉を詰まらせる。

 

 美月さんの表情は固く、唇はわずかに震えてさえいた。

 

 俺は美月さんのその苦悶に満ちた表情に驚くとともに、一方では若干とまどってもいた。



 というのも、美月さんの考えは俺が抱いているダンジョン探索の認識……つまりそれは異世界でのダンジョン探索の常識だ……とかなり違っていたからだ。



 異世界でのダンジョン探索は原則として少人数で行われることが多い。



 パーティーを組むのはよい方で、腕に覚えのある人間はソロで挑む場合も少なくない。



 これは純粋に経済的な問題——コストとリターンの問題——である。

 

 冒険者の数が増えればその分、リスクは確かに軽減されるが、一人一人の得られる利益は減る。

 

 それに人数が多ければ、当然利益の分配を巡っての揉め事も多い。

 

 もとより冒険者家業をする人間はハイリスク・ハイリターン思考の人間でアウトサイダー色の強い人間が多い。

 

 冒険者といえば聞こえはよいが、要は金や名誉のために、命をかけてモンスターと闘い、未踏査の危険地域を探索するような輩たちだ。



 当然色々な意味で、少しばかり頭のネジの外れた人間が集まることになる。

 

 異世界にだって……この世界よりはそもそもリスクの総量が全体的に高いが……リスクが低い仕事——農家、商人、職人など——は多くあるし、こちらの職業に就く者が大半である。

 

 そういうローリスクだけどローリターン……要は地味でコツコツ毎日働く仕事……を嫌う者、人付き合いが嫌いな者、あるいは何らかの事情で普通の職につけない者が冒険者になるのだ。



 そんなはみ出し者たちが全員武装している状態で、大人しく話し合いをする訳もない。



 当然利益の配分の揉め事が殺し合いに発展するケースもざらにある。



 一応フォローしておきたいのだが、俺は元来オタクであり、数年とはいえサラリーマン生活を送っていたような人間である。



 当然、本来は冒険者気質の人間ではない。



 が……着の身着のままで、異世界に飛ばされて、身一つで生きていかざるをえなくなり、どんなアウトサイダーでも……そう異世界人でもなれる冒険者になったのだ。



 まあ……朱に交われば赤くなるというもので、俺もなんだかんだで冒険者業が性にあってはいたのだが……。



 ひょっとしたら気づいていなかっただけで、もともと俺も社会に馴染めないアウトサイダー気質があったのかもしれない。
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