異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

束の間の遊戯-07-

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 この時ばかりは、麻耶さんの反応は当然だと俺も思った。



 いくらなんでもドアを蹴破る……いや魔法で燃やし破壊して入ってくるなどやり過ぎもいいところである。



 百歩譲って、鈴羽さんが突拍子もないことをするのは今にはじまったことではないが、それにしても花蓮さんが隣にいてなぜ止めなかったのか。

 

 俺は花蓮さんの方を見る。

 

 花蓮さんは鈴羽さんの行動に驚いていたり、咎めたりする様子もなくただじっと麻耶さんの方を見つめている。



「ご安心してください。この部屋の損害についてはわたくしが責任をもってしっかりと弁償いたしますわ。それよりも、麻耶さん、その姿は……いったいどうしたことですの?」



 花蓮さんは冷静な口調であったが、顔はまったく笑っておらずその目はなんとも言えない迫力があり、対峙する者はみな気圧されてしまう雰囲気があった。 



 そして、この段階になって、俺はようやく自分の置かれている状況を客観視することができた。

 

 つまり、俺らがいまどういう姿をしているかということを……。

 

 俺は、麻耶さんと綾音さんの二人の美女から上から馬乗りにされていた。

 

 麻耶さんがバランスを崩した時にそれぞれが体を守ろうと変な感じで倒れ込んだからなのだろう。

 

 左を向けば、麻耶さんはほとんど肌を晒した下着姿のまま、俺の上にのしかかっている。



 そして、重力の関係で、麻耶さんの豊満な胸がさらに強調されて、俺の目の前に出現している。

 

 右を向けば、綾音さんが、ドレス姿のままだったが、元々露出が多いその格好は、倒れた時に若干気崩れしたのか、控えめに言ってもかなり大胆な姿を俺の目の前に晒している。



 麻耶さんたちも、俺と同じように自分たちの今の姿をようやく自覚したらしい。

 

「か、花蓮……あ、あなた何か勘違いしているんじゃ……」



「こ、これは……た、単なる不可抗力だ」



 と、麻耶さんと綾音さんがその頬を火照らせて、言葉をつまらせながらも、花蓮さんにそれぞれ反論する。

 

「麻耶さん、ご安心ください。わたくし勘違いなどしておりませんわ。ただ、現状をありのままに見ているだけですわ」



「そ、そう、それならよいのだけれど——」



「ええ、結局わたくしの予想通りだったということですわ。そして、やはり敬三様を一人で麻耶さんの元に行かせるべきではありませんでしたわ。鈴羽、準備はよろしくて?」



「……ええ、もちろんです。ご主人様のおかげで炎龍のブレスレットを使ってもこの通り何も問題はありませんし……」



 そう言うと鈴羽さんはなぜか嬉しそうにブレスレットを撫でると、再びかまえるそぶりを見せる。



「か、花蓮、鈴羽……あ、あなた何をするつもり……」



「きまっていますわ。敬三様を麻耶さんのいかがわしい手からお守りするだけですわ」



「ええ、花蓮様のおっしゃるとおりです。ご主人様の優しさを逆手に取って誘惑する……など言語道断です」



 花蓮さんと鈴羽さんは麻耶さんたちに今にも飛びかかってきかねない様子だ。

 

 このままだと、部屋全体が炎上もとい雷が舞い散りそうな勢いである。

 

 俺はあわてて、腰を浮かす。



 麻耶さんと綾音さんも乱れた服装を直しながら、急いで立ち上がる。



 ついで、俺は花蓮さんたちの前に立ち、適当な言い訳を並べ立てて、仲裁を行う。



 が……花蓮さんたちはそれでもなお納得してない様子であった。



 チラリと後ろを振り返ると、体勢を整えた麻耶さんと綾音さんがバツの悪そうな顔を浮かべながらも、それぞれ臨戦体勢を取っていた。



「や、やはり……この二人おかしいわ。綾音いける?」



「は、はい……。ふ、不本意ですが、S級冒険者級のお二人が向かってくるというのならば、われわれもそれなりの防衛行動をしないといけませんから」

 

 俺はそんな二人の会話を聞いて、数分後にこの屋敷全体が燃えている様子をリアルに想像してしまった。



 と、俺の視界の端に美月さんの姿がとまる。

 

 美月さんだけは、他の面々と異なり、どこかその場から一人離れていて、傍観者のように見えた。



 俺はこの場で唯一冷静に見える美月さんに麻耶さんたちを止めてもらうべく、協力を仰いだ。
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