異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
上 下
108 / 153
第一章

束の間の遊戯-02-

しおりを挟む
 俺は麻耶さんに壁際に追いやられて、呆気にとらわれる。



「え? い、いや……と、突然何を……」



 しかし、俺は驚くと同時に別のことも急速に脳裏を締め出していた。



 というのも、麻耶さんは非常に前傾姿勢になっていて、俺の文字通り目の前にいる。



 麻耶さんの眼光鋭い視線からたまらず俺が顔をそらすと、そこには元々ドレス姿で強調されていた彼女のたわわに実った胸が否が応でも目に飛び込んでくる。

 

 俺が目を泳がせながらも、努めて冷静なフリをしていたのだが……。



 やはり俺は相当に挙動不審だったのだろう。



 すぐに麻耶さんに見咎められ、



「あなた……ど、どこを見ているの!」

 

 と、彼女は声を荒げて、その自身の体をますます俺に寄せてくる。

 

 いや……麻耶さんが怒る理由はわかる。

 

 女性の胸を不躾な目で見るのなんて許されないことだ。

 

 しかし、この状況下だと……俺に……いや大抵の男なら選択肢はなくないか。

 

 ほとんど不可抗力……いや生理的反応じゃないか。

 

 しかも、麻耶さんは俺にますます接近してくるから、余計に俺の理性の選択肢の幅は少なくなってしまう。

 

 これで見るなという方が無理があるんじゃないのか。

 

 麻耶さんは自身のその蠱惑的な体にもっと自覚を持ってもらいたい。



 と、俺がそんな自分でも勝手だと思う言い訳を脳裏にぶちまけていると、突然麻耶さんは何かに耐えるようにギュッと眉間にしわをよせて、

「ああ! ま、またなの!? うう……」



 とうめき声を上げて、その場で不意にがっくりと膝を落とし、倒れそうになる。



 俺は慌てて麻耶さんの体を支えようと両手を差し向ける。



「や、やめなさい……さ、触らないで! あ、あなたに触れられるとまたあの変な感覚が……ああ!」

 

 麻耶さんはそう言って俺の手を乱暴に振り払うと、そのままよろけるようにして床に座りこんでしまう。

 

 その明らかにおかしい様子に俺もさすがに心配になり、



「あの……大丈夫ですか? どこか調子でも——」

 

 と、声をかけると、麻耶さんは、



「し、しらばっくれるつもりなの……あなたの……だ、旦那様の仕業で……ああ……また!」

 

 と、再び気色ばんで、一瞬俺を睨む。



 が、すぐに何かに気づいたかのように顔を真っ赤にして顔をそむけて、押し黙ってしまう。



 今まで静観していた綾音さんもさすがにこの事態に驚いたのか、



「ま、麻耶さん!? いったいどうされたのですか? 先日もかなり変でしたけれど、やはりこの男に何かされているのですか?」

 

 と、麻耶さんに駆け寄る。



「さ、三尉! だ、旦那様を……ああ!! ふ、二見を拘束しなさい!」

 

 と、麻耶さんがかなり取り乱した様子で、そう叫ぶ。



「え? い、いや……そ、それはわたしもそうしたいですが、どんな人間でも無理かと——い、いえ、しかし……だ、旦那様というのはやっぱり……」

 

 綾音さんは麻耶さんの突然の要求にただ戸惑っていた。

 

 むろんそれは俺も同様である。

 

 先程までは一応普通に話せていたのに、いったい麻耶さんに何があったのか。

 

 俺がそう不審に思っていると、麻耶さんは足元をふらつかせながらも立ち上がり、



「も、もういいわ! こ、こうなったらわたしが直接……か、覚悟なさい!」

 

 麻耶さんは声を振り絞るようにそう言う。

 

 そして、片手を上にあげて、何やら魔法を発動する素振りを見せる。

 

 また……魔法——麻耶さん……いくらなんでも直情過ぎやしないか。

 

 と、俺は少しばかり呆れながらも、麻耶さんの魔法詠唱を止めようと動こうとしたのだが……。

 

 いやしかし……先程みたいにあまり強く手を掴むとまた麻耶さんの体調が悪くなってしまうかもしれない。

 

 どれくらい手加減すればいいのか。

 

 と、そんな感じで俺がかなり長く逡巡している間に、さすがに魔法詠唱が終わってしまったらしい。

 

 俺があっと思った直後に麻耶さんの手にサンダーボルトが発現しかけたが、



「あんっ!! だ、ダメ!! うう!! ああ!! こんなのって!!」

 

 と、麻耶さんは今まで見たこともないくらい、大声をあげて、その場にへたり込んでしまう。

 

 俺と綾音さんはしばし唖然としながら、麻耶さんのその様子を黙って見ているしかなかった。

 

 麻耶さんは顔を上気させて、口をやや半開きにして、目を潤ませて虚空を見つめている。

 

 その様子はどこか放心状態のように見えた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...