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第一章
新たな戦場へ-09-
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その唐突な様子に二人は一瞬水を差された形になり、二人を含めた全員が美月さんの方を見る。
美月さんは何故か自身のケータイ……いや今風に言うのならばスマートフォンか……を食い入るように見つめている。
「美月、いったいどうしたというの、お母さんは、鈴羽と大事な話をしているのよ、それなのに——」
と、麻耶さんが突然割って入ってきた美月さんを咎めるが、とうの美月さんは麻耶さんの言う事を無視して、
「あのお母様……先日の協会での出来事……というか二見さんの行動が全部Dtubeにアップされているんですけれども……」
と、呆然とした様子で言う。
「な、なんですって!」
「な、なんですの!」
「な、なんだと!」
彼女たちにとってよっぽどの衝撃だったらしく、麻耶さん、花蓮さん、それに今まで黙っていた綾音さんもほぼ同時に叫びに近い大声を上げる。
そして、一斉に美月さんの方へと駆け寄り、彼女のスマホの画面に目を寄せる。
一人だけ冷静だった鈴羽さんは、自身のスマホを開いて、件の動画を確認しているようであった。
「どうやら……遠方からドローンで隠し撮りされていたようですね……」
と、鈴羽さんがつぶやいている。
俺もやや遅らせながら、鈴羽さんの方へ行き、動画を見せてもらう。
そこには俺の記憶にない自身の姿があった。
デスナイト二体を魔法で倒し、そしてやはり何故か戦車まで破壊している。
麻耶さんは、戦車破損の責任はモンスターのせいにしてくれると言っていたが、映像を見る限り、どう見てもその責は俺にあるとしか思えない。
動画の俺は何をトチ狂ったのか、ペネトレイトを戦車の砲台に放って、ご満悦の表情を浮かべているのだから……。
先程の金銭的な懸念が再び頭をよぎり、俺は少しめまいがしてきた。
だが、そんな俺とは裏腹に先程まで血相を変えていた麻耶さん、花蓮さん、それに綾音さんはみなほっとした表情を浮かべている。
当時彼女たちに何があったかは不明だが、映像は編集されているのか、はたまた遠距離から映したためなのか、いずれにせよ俺に焦点が当たっており、彼女たちの姿はほとんど映っていなかった。
少なくとも彼女たちが懸念するような「女性として恥じらいを覚えるようなシーン」は俺がぱっと見た限りでは皆無であった。
だから彼女たちも安堵しているのだろう。
「すごい再生数……もう……1000万回再生超えている」
と、美月さんがつぶやくように言う。
俺からすると自分の悪行を全世界に配信されて、指名手配されているような気分であった。
「お母様……これどうされますか? 二見さんのこと……これだともう言い訳できないですよね?」
「ふう……よかったわ。わたしのあの醜態が全世界に配信されていたら、さすがのわたしも出家して尼にでもならないといけないかと思ったほどよ」
「あの……お母様……わたしの話聞いていますか?」
美月さんの問いかけに、麻耶さんはようやく気づいたらしく、
「えっ……聞いているわよ。二見のことでしょ。まあ……少しごまかすのが面倒にはなったけれど、なんとかなるわよ。きっと……」
と、かなり適当な様子でそう言う。
自分の恥ずかしい姿が動画に晒されたのかと誤解していた時とはえらい落差だ。
まあ……麻耶さんのそうした態度は、わかりやすいといえばわかりやすい性格だし、彼女の立場からすれば当然だと思うのだが……。
こうもう少し取り繕ってくれてもよい気がすると思うのは俺のわがままなのだろうか。
てっきり先程までのクラーク氏との激論では俺をかばうような発言もいくつかしてくれていて、正直感謝していたのだが、今の麻耶さんの様子を見ると、どうやらそうではないようだ。
対照的に花蓮さんは自分の笑顔の表情を引っ込めて俺が暗い顔をしているのに気づいて、申し訳なさそうな顔を浮かべている。
さすが……花蓮さん、やっぱりいい人だ。
まあ……でも麻耶さんのような性格の方が本人としては生きやすいだろうな。
花蓮さんは人の機微に敏感に気づいてしまうから、色々と気遣いを周りにして、ストレスを知らずに抱えてそうだ。
麻耶さんは自身の懸念が払拭されたからか、さっきとは一転してやけに上機嫌になっていた。
俺はそんな正反対な性格の二人の美女を見ながら、麻耶さんを少しばかりうらめし気味に見る。
「まったくあの男も所詮はブラフということだったのかしらね。なに……二見、何か言いたいことでもあるの? そんな目をしても——ああんっ! ひゃん!」
麻耶さんは奇妙な声をあげたかと思うと、一瞬自身の体を抱きすくめるような前傾姿勢になる。
その後、麻耶さんは何事もなかったように姿勢を正したが、突然黙りこくってしまう。
他の面々は、そんな麻耶さんの態度に怪訝な顔を浮かべている。
美月さんは何故か自身のケータイ……いや今風に言うのならばスマートフォンか……を食い入るように見つめている。
「美月、いったいどうしたというの、お母さんは、鈴羽と大事な話をしているのよ、それなのに——」
と、麻耶さんが突然割って入ってきた美月さんを咎めるが、とうの美月さんは麻耶さんの言う事を無視して、
「あのお母様……先日の協会での出来事……というか二見さんの行動が全部Dtubeにアップされているんですけれども……」
と、呆然とした様子で言う。
「な、なんですって!」
「な、なんですの!」
「な、なんだと!」
彼女たちにとってよっぽどの衝撃だったらしく、麻耶さん、花蓮さん、それに今まで黙っていた綾音さんもほぼ同時に叫びに近い大声を上げる。
そして、一斉に美月さんの方へと駆け寄り、彼女のスマホの画面に目を寄せる。
一人だけ冷静だった鈴羽さんは、自身のスマホを開いて、件の動画を確認しているようであった。
「どうやら……遠方からドローンで隠し撮りされていたようですね……」
と、鈴羽さんがつぶやいている。
俺もやや遅らせながら、鈴羽さんの方へ行き、動画を見せてもらう。
そこには俺の記憶にない自身の姿があった。
デスナイト二体を魔法で倒し、そしてやはり何故か戦車まで破壊している。
麻耶さんは、戦車破損の責任はモンスターのせいにしてくれると言っていたが、映像を見る限り、どう見てもその責は俺にあるとしか思えない。
動画の俺は何をトチ狂ったのか、ペネトレイトを戦車の砲台に放って、ご満悦の表情を浮かべているのだから……。
先程の金銭的な懸念が再び頭をよぎり、俺は少しめまいがしてきた。
だが、そんな俺とは裏腹に先程まで血相を変えていた麻耶さん、花蓮さん、それに綾音さんはみなほっとした表情を浮かべている。
当時彼女たちに何があったかは不明だが、映像は編集されているのか、はたまた遠距離から映したためなのか、いずれにせよ俺に焦点が当たっており、彼女たちの姿はほとんど映っていなかった。
少なくとも彼女たちが懸念するような「女性として恥じらいを覚えるようなシーン」は俺がぱっと見た限りでは皆無であった。
だから彼女たちも安堵しているのだろう。
「すごい再生数……もう……1000万回再生超えている」
と、美月さんがつぶやくように言う。
俺からすると自分の悪行を全世界に配信されて、指名手配されているような気分であった。
「お母様……これどうされますか? 二見さんのこと……これだともう言い訳できないですよね?」
「ふう……よかったわ。わたしのあの醜態が全世界に配信されていたら、さすがのわたしも出家して尼にでもならないといけないかと思ったほどよ」
「あの……お母様……わたしの話聞いていますか?」
美月さんの問いかけに、麻耶さんはようやく気づいたらしく、
「えっ……聞いているわよ。二見のことでしょ。まあ……少しごまかすのが面倒にはなったけれど、なんとかなるわよ。きっと……」
と、かなり適当な様子でそう言う。
自分の恥ずかしい姿が動画に晒されたのかと誤解していた時とはえらい落差だ。
まあ……麻耶さんのそうした態度は、わかりやすいといえばわかりやすい性格だし、彼女の立場からすれば当然だと思うのだが……。
こうもう少し取り繕ってくれてもよい気がすると思うのは俺のわがままなのだろうか。
てっきり先程までのクラーク氏との激論では俺をかばうような発言もいくつかしてくれていて、正直感謝していたのだが、今の麻耶さんの様子を見ると、どうやらそうではないようだ。
対照的に花蓮さんは自分の笑顔の表情を引っ込めて俺が暗い顔をしているのに気づいて、申し訳なさそうな顔を浮かべている。
さすが……花蓮さん、やっぱりいい人だ。
まあ……でも麻耶さんのような性格の方が本人としては生きやすいだろうな。
花蓮さんは人の機微に敏感に気づいてしまうから、色々と気遣いを周りにして、ストレスを知らずに抱えてそうだ。
麻耶さんは自身の懸念が払拭されたからか、さっきとは一転してやけに上機嫌になっていた。
俺はそんな正反対な性格の二人の美女を見ながら、麻耶さんを少しばかりうらめし気味に見る。
「まったくあの男も所詮はブラフということだったのかしらね。なに……二見、何か言いたいことでもあるの? そんな目をしても——ああんっ! ひゃん!」
麻耶さんは奇妙な声をあげたかと思うと、一瞬自身の体を抱きすくめるような前傾姿勢になる。
その後、麻耶さんは何事もなかったように姿勢を正したが、突然黙りこくってしまう。
他の面々は、そんな麻耶さんの態度に怪訝な顔を浮かべている。
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