異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

晩餐会-20-

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 クラーク氏は、



「急だったことは申し訳ないと思いますが、なにぶん状況が変わったのでね……。しかし、あなた方の態度も大分妙だとは思いますが……」



 と、言い少し間を開けた後で、みなを見回して、



「S級冒険者の西條花蓮さん、二条院美月さん。西條さんの元パートナーで、A級冒険者の西條鈴羽さん、貴国を代表する冒険者の方々が一同にかいしている。その上、普段はまったく表に出てこられない間宮三尉……民間の冒険者ではなく軍属……いえ自衛隊所属のあなたまでいらっしゃる。まさかこんなそうそうたる顔ぶれで出迎えられるとは思いもよりませんでした」

 

 と、言う。



「そうですよ! まさかこんな有名な方々がいらっしゃるなんて! はっきり言ってダンジョンウォッチャーのひとりとして感動ものですよ!」

 

 と、マスイ氏が興奮気味にまくしたてる。



 何か彼女たちにサインでも貰いかねないほどのテンションである。



 クラーク氏がジロリと睨むが、マスイ氏は気づいていないのか、目を輝かせて花蓮さんたちを見ている。



 有名冒険者として知名度がある花蓮さんたちはともかくとして、自衛隊員である綾音さんに関しても彼らが知っていることについて俺はいささか首を傾げていた。



 だが、俺以外のメンバー……とうの綾音さんもあまり嬉しくなさそうな顔色を浮かべていたが、特段驚いている表情は見せていなかった。

 

「とにかく……二見さんの周囲……いや貴国では最近色々と異常な事態が起きている。我々が彼に興味を持つのもご理解頂きたいですな」



 クラーク氏は、マスイ氏を無視して、話をすすめる。



「局長、いい加減にまどろっこしいことはやめにして、さっさと本題に入りましょうよ。わたしたちはこの男の力が本物かどうかを確認したいだけなのだから。まあ……どう見てもただのオジサンとしか思えないし、分析チームの見解が的はずれという感じがしますけれどもね」



 と、今まで沈黙を守ってきた女性……キャシーさんが言う。



「キャシー、物事には順序がある。失礼なことを言うのはやめたまえ」



 と、クラーク氏は、キャシーさんの方をみて静かに言う。



 彼の口調は穏やかであったが、その雰囲気は有無を言わせぬ圧があった。



 キャシーさんは、しぶしぶそうではあったが、



「……わかりました。申し訳ありません」



 と、言う。



「クラーク局長、それで……いったい二見に……いえ彼に何を聞きたいのですか?」

 

 麻耶さんが、相手の様子をうかがうように聞く。

  

「本当は聞きたいことが山程あるのですが。そうですね。一番確認したいことは……」



 と、クラーク氏は突然そこで言葉をきり、俺の方を向いて、



「二見さん、あなたは兵士なのですかな?」

 

 と、言う。

 

 クラーク氏のその奇妙な質問に俺は戸惑いを隠せなかった。

 

 一瞬、俺の聞き間違いかと思ったくらいだ。

 

 それは他の面々も……キャシーさんやマスイ氏にとっても……同様だったようだ。

 

 みな一様に当惑気味な顔を浮かべている。



「それはどういう意味ですか? 彼は我が国の冒険者登録はしていますが、軍の……いえ自衛隊の隊員ではありませんわ」

 

 と、麻耶さんが怪訝な顔を浮かべながら言う。

 

 クラーク氏は、麻耶さんの言葉を無視して、ただ俺の顔をじっと見ている。

 

 その顔つきは冗談や挑発といった類の顔ではなく、真剣そのものの表情であった。

 

 俺は、クラーク氏が何を確認したいのか、その時点で気づいていた。

 

 クラーク氏は軍人なのだろう。

 

 そして、彼はおそらく俺と同じく——

 

 やがて麻耶さんは観念したかのように、



「花蓮、クラーク局長の質問を二見に通訳してあげなさい。どうやら相手は二見の口からどうしても聞きたいらしいわ」

 

 と、言う。



 花蓮さんは少し当惑気味に、クラーク氏の質問を小声でささやくように俺に伝える。



「あの……敬三様、あちらの方は敬三様が兵士かどうか知りたいようですわ……そのどういうニュアンス……いえ意図なのかはわからないのですが……」



 俺は、花蓮さんの声はほとんど頭に入ってなかった。



 クラーク氏の問いかけが俺の脳裏に先程から何度も繰り返し反響していた。



 そして、それはいつのまにか俺自身の自問自答へと変わっていった。



 俺は兵士だった……それは間違いない。

 

 だが今は違う。

 

 単なる冒険者だ。

 

 そう自分に言い聞かせるが、俺の心は即座にそれを否定する。

 

 お前は今でも兵士なのだと……。

 

 俺の顔は相当こわばっていたのだろう。
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