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第一章
晩餐会-19-
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が……俺はここまでの会話の内容を幸か不幸か全てわかっている。
俺はそのことを予想はしていたとはいえ、実際に英語が理解できていることに驚いていた。
俺は異世界に行くまでむろん英語に日常的に接していなかったし、話せるほどの理解力もなかった。
ところで、俺が異世界に転移した時に、当初からその地域の言語を理解できたし、話すことができた。
むろん異世界といっても、一つの言語だけが話されている訳ではない。
少なくとも俺の観測範囲では、言語はこの世界と同じほど……いやそれ以上に無数に存在していた。
異世界の全ての言語に接した訳では当然ないが、少なくとも俺が接触した限りの言語についてはそのどれもが理解することができた。
それは俺にとっては大変有り難いことではあったが、その理由、原理は最後まで不明であった。
俺なりに考えた推測としては、スキルと同じような何らかの『加護』のようなものが俺に働いているのではないかというものだ。
とはいえ、それがこの世界でも機能するかどうかは未知数であった。
まあ冷静に考えれば、俺が異世界で使用していた魔法がこの世界でも使えているのだから、異世界での『加護』も有効に作用していても不思議ではないか……。
そういう訳で俺は目の前で繰り広げられていた英語でのやりとりについて全て理解していた。
とはいえ、理解できると言っても、母国語でない以上、どうにも違和感を覚えるが。
異世界で俺が暮らし、ずっと使用してきた王国の主要言語ですら、25年間の月日の中でようやくしっくりときたのだから、当然といえば当然か……。
おそらく異世界でのことを考えれば、聞くだけではなく、話すこともできるのだろうが……。
俺が流暢な英語をしゃべっている姿はどうも変な気がする。
そういえば、他の人達は英語を解せるのだろうが。
俺が、そんなことを疑問に浮かべている間に、クラーク氏がもう一度、咳払いをして、簡単な自己紹介をし、ついで、マスイ氏とキャシー氏の二人を紹介する。
おそらく日系人と思われるマスイ氏が、それを日本語で通訳している。
そして、今度はこちらの番となった。
各々がそれぞれ短く自身の紹介を兼ねて、挨拶を交わすが、みな流暢な英語で話していた。
俺はその様子にいささか驚いてはいたが、よく考えて見れば、花蓮さんや鈴羽さん、それに美月さん、綾音さん、彼女たちはいずれもかなりの教養を要求される立場にある。
彼女たちがこの世界の共通言語たる英語を解せるのはある意味で当然なのかもしれない。
最後に俺の番となり、俺はどちらの言語で話すべきかいささか悩んでいたが、結局日本語で話すことにした。
おそらくみな俺が英語を話せるとは思っていないし、このままそう思われている方がなんとなく都合が良いと思ったからだ。
それに、俺はチートで英語を理解できているだけだから、後ろめたさもある。
なにより、やはり俺自身英語を話すことにどうにも違和感……というか気持ち悪さを覚えてしまう。
言語を理解できていることとそれが心情的に馴染んでいることととはやはり大分異なる。
その後、会は滞りなくというより、特段変わったことなく進行していった。
料理が来て、飲み物で喉を潤し、食事をする。
出席しているメンバーや料理、装飾の豪華さを除けばいたって普通のディナーに思えた。
麻耶さんが中心となり、相手方と簡単な談笑をしている。
そんなありふれたものなのだが、俺はこの世界における格式高い場には慣れていない。
そのため、主にテーブルマナーに悪戦苦闘しながら、おそらく今後あまり口にいれることがないであろう豪華な食事に俺は、なんとかありつこうとしていたから、まわりの話はあまり耳に入ってこなかった。
やがて、会がはじまってから小一時間ほど経ったころ、おもむろにクラーク氏が話を切り出す。
「ところで……今回の会にも出席して頂いている二見さんだが、彼と話させてももらってもいいですかな?」
今まで和やかな空気とうってかわって神妙な面持ちであった。
これまで両者は、特段「俺のこと」について、何ら触れていなかった。
俺は俺で、麻耶さんから極力喋るなと言明されていたから、何も喋っていなかった。
そもそも俺は人の前で話すことが得意ではない。
それに、豪華な料理を食べ、その味に感動していたから、それどころではなかった。
麻耶さんに言われるまでもなく黙々と食事をしていただけであった。
若干の沈黙の後で、麻耶さんが、
「もちろん、自由に話してもらって構いませんわ。彼もこの会に参加しているのですし。ただ、彼はただの冒険者ですし、英語も解せないので、うまく意思疎通ができるかどうか……」
と、言う。
「通訳はマスイがするので、その件は問題ない。ただどうにもこの場で、彼と話すのには色々とやりにくいようですな……」
と、クラーク氏は周りを見回してため息を漏らす。
というのも、花蓮さんと鈴羽さんが、あからさまと言ってよいほどに、かなりの剣呑な視線をクラーク氏に送っていたからだ。
「二見さんはよい仲間に恵まれているようですな……しかし、何やら誤解があるようですが、我々は二見さんの……いえあなた方の敵ではないのですが……」
「敵などとは思っていませんわ。ですが、あまりにも突然の要請……しかも、あなたのような高官が来るのであれば、こちらも身構えてしまうのは当然なのではありませんか?」
と、今まで沈黙を守っていた花蓮さんが言う。
俺はそのことを予想はしていたとはいえ、実際に英語が理解できていることに驚いていた。
俺は異世界に行くまでむろん英語に日常的に接していなかったし、話せるほどの理解力もなかった。
ところで、俺が異世界に転移した時に、当初からその地域の言語を理解できたし、話すことができた。
むろん異世界といっても、一つの言語だけが話されている訳ではない。
少なくとも俺の観測範囲では、言語はこの世界と同じほど……いやそれ以上に無数に存在していた。
異世界の全ての言語に接した訳では当然ないが、少なくとも俺が接触した限りの言語についてはそのどれもが理解することができた。
それは俺にとっては大変有り難いことではあったが、その理由、原理は最後まで不明であった。
俺なりに考えた推測としては、スキルと同じような何らかの『加護』のようなものが俺に働いているのではないかというものだ。
とはいえ、それがこの世界でも機能するかどうかは未知数であった。
まあ冷静に考えれば、俺が異世界で使用していた魔法がこの世界でも使えているのだから、異世界での『加護』も有効に作用していても不思議ではないか……。
そういう訳で俺は目の前で繰り広げられていた英語でのやりとりについて全て理解していた。
とはいえ、理解できると言っても、母国語でない以上、どうにも違和感を覚えるが。
異世界で俺が暮らし、ずっと使用してきた王国の主要言語ですら、25年間の月日の中でようやくしっくりときたのだから、当然といえば当然か……。
おそらく異世界でのことを考えれば、聞くだけではなく、話すこともできるのだろうが……。
俺が流暢な英語をしゃべっている姿はどうも変な気がする。
そういえば、他の人達は英語を解せるのだろうが。
俺が、そんなことを疑問に浮かべている間に、クラーク氏がもう一度、咳払いをして、簡単な自己紹介をし、ついで、マスイ氏とキャシー氏の二人を紹介する。
おそらく日系人と思われるマスイ氏が、それを日本語で通訳している。
そして、今度はこちらの番となった。
各々がそれぞれ短く自身の紹介を兼ねて、挨拶を交わすが、みな流暢な英語で話していた。
俺はその様子にいささか驚いてはいたが、よく考えて見れば、花蓮さんや鈴羽さん、それに美月さん、綾音さん、彼女たちはいずれもかなりの教養を要求される立場にある。
彼女たちがこの世界の共通言語たる英語を解せるのはある意味で当然なのかもしれない。
最後に俺の番となり、俺はどちらの言語で話すべきかいささか悩んでいたが、結局日本語で話すことにした。
おそらくみな俺が英語を話せるとは思っていないし、このままそう思われている方がなんとなく都合が良いと思ったからだ。
それに、俺はチートで英語を理解できているだけだから、後ろめたさもある。
なにより、やはり俺自身英語を話すことにどうにも違和感……というか気持ち悪さを覚えてしまう。
言語を理解できていることとそれが心情的に馴染んでいることととはやはり大分異なる。
その後、会は滞りなくというより、特段変わったことなく進行していった。
料理が来て、飲み物で喉を潤し、食事をする。
出席しているメンバーや料理、装飾の豪華さを除けばいたって普通のディナーに思えた。
麻耶さんが中心となり、相手方と簡単な談笑をしている。
そんなありふれたものなのだが、俺はこの世界における格式高い場には慣れていない。
そのため、主にテーブルマナーに悪戦苦闘しながら、おそらく今後あまり口にいれることがないであろう豪華な食事に俺は、なんとかありつこうとしていたから、まわりの話はあまり耳に入ってこなかった。
やがて、会がはじまってから小一時間ほど経ったころ、おもむろにクラーク氏が話を切り出す。
「ところで……今回の会にも出席して頂いている二見さんだが、彼と話させてももらってもいいですかな?」
今まで和やかな空気とうってかわって神妙な面持ちであった。
これまで両者は、特段「俺のこと」について、何ら触れていなかった。
俺は俺で、麻耶さんから極力喋るなと言明されていたから、何も喋っていなかった。
そもそも俺は人の前で話すことが得意ではない。
それに、豪華な料理を食べ、その味に感動していたから、それどころではなかった。
麻耶さんに言われるまでもなく黙々と食事をしていただけであった。
若干の沈黙の後で、麻耶さんが、
「もちろん、自由に話してもらって構いませんわ。彼もこの会に参加しているのですし。ただ、彼はただの冒険者ですし、英語も解せないので、うまく意思疎通ができるかどうか……」
と、言う。
「通訳はマスイがするので、その件は問題ない。ただどうにもこの場で、彼と話すのには色々とやりにくいようですな……」
と、クラーク氏は周りを見回してため息を漏らす。
というのも、花蓮さんと鈴羽さんが、あからさまと言ってよいほどに、かなりの剣呑な視線をクラーク氏に送っていたからだ。
「二見さんはよい仲間に恵まれているようですな……しかし、何やら誤解があるようですが、我々は二見さんの……いえあなた方の敵ではないのですが……」
「敵などとは思っていませんわ。ですが、あまりにも突然の要請……しかも、あなたのような高官が来るのであれば、こちらも身構えてしまうのは当然なのではありませんか?」
と、今まで沈黙を守っていた花蓮さんが言う。
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