異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

露国対外情報庁サイド-04-

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「どうやら、ヘスティアさん達は無事プレイヤー達の避難を終え、一斉砲火の準備が整ったみたいです。五分後に────中央大陸の集中砲火が開始されます」

 さ、さすがは『紅蓮の夜叉』。めちゃくちゃ早い。

 『まだ別れてから一時間も経っていないのに』と驚愕しつつ、私は地上を見下ろす。

 ウチのメンバーも、きちんと避難しただろうか?
空中に待避しているメンバーはさておき、地上で活動しているメンバーは心配だなぁ……特にシムナさん。
避難誘導を呼び掛ける『紅蓮の夜叉』のメンバーに、めっちゃ反抗してそう。
さすがに手は出ていないと思うけど……説得に時間は掛かってそうだなぁ。

「念のため、結界を二重に張っておきますね。ヘスティアさんの火力は計り知れませんから」

 アヤさんは人差し指をクルクル回して、私達を覆う結界の外にもう一つ結界を展開させた。
元々あったものより分厚いソレを前に、アヤさんはふと顔を上げる。

「あと三秒で約束の五分です。3、2、1……一斉砲火開始」

 その言葉を合図に、地上は真っ赤な炎で覆われた。
かと思えば、ゴーレム達は次々と光の粒子へ変化していく。
その光景はまさに圧巻だった。

「うわぁ~、瞬殺じゃ~ん」

「火炎魔法に多少耐性のあるファイアゴーレム以外は、ほとんど瞬殺ですね。アイスゴーレムなんて、炎に触れた瞬間、光の粒子に変わっていますし」

「さすが炎帝って、感じだね~」

「少しやり過ぎな気もしますけどね」

 ヘスティアさんの……いや、『紅蓮の夜叉』の無双っぷりに肩を竦めるアヤさんは、どこか呆れたような表情を浮かべる。
火焔かえん地獄とも言うべき状態に、若干引いているのだろう。

 この調子だと、一瞬で片が付きそう。
炎耐性のあるファイアゴーレムでも、ここまで高温の炎に焼かれれば倒れるだろうし。

 などと思いつつ、私はゲーム内ディスプレイに目を向けた。

 時刻は深夜の二時半。
ナイトタイム及びイベント終了まで、あと一時間半……それだけ時間が余っていれば、充分だ。

「な~んか、苦労した割に呆気ない終わり方だね~」

「ゴーレム討伐に勤しんでいた徳正さん達には、そう感じるかもしれませんね。でも────あなた方がここで一生懸命頑張ってくれたから、“今”があるのです。中央大陸で奔走した過去は、無駄じゃありません」

「ま、それもそうだね~。ラーちゃんが治療しなかったら、死んでいたプレイヤーも大勢居るだろうし~。他のプレイヤーだって、生き残るために剣を振るい続けたから、“今”がある。生存率を上げるっていう観点では、充分な働きをしたかな~」

 確かに。私達は私達なりに、精一杯頑張ったよね。

 『何かしら意味のあるものだったんだ』と納得する中────不意に機械音声が流れる。

『おめでとうございます。只今を持ちまして、ゴーレム討伐イベントクリアとなります。詳しい説明は『箱庭』から、送られたメールをご確認くださいませ』

 そう言うが早いか、メールの受信を知らせる通知音が響いた。
と同時に、中央大陸を覆っていた炎が跡形もなく消える。
だけでは終わらず、失われた筈の草木を、割れた大地を元通りにした。時間を巻き戻すが如く。
また、爆破された大陸を繋げる橋カンティネン・ブリッジや干上がった海も元の姿を取り戻す。

「イベント後の修復作業は一応やるんだね~」

「そうみたいですね。この様子だと、破壊の限りを尽くした街の方も修復されていそうです」

「復旧作業とか面倒なことがなくて、助かったよ~。街の復興が済むまで、野宿とか勘弁だも~ん」

「……まあ、街や建物の復旧作業が終わっても────失われた人達は戻って来ませんけどね」

 空中をタップしていたアヤさんは、悲しそうに呟いた。
かと思えば、空中をタップしていた手が不意に止まる。

「────限界突破オーバーラインって、どういうこと……?」
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