異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
上 下
59 / 153
第一章

英雄、目覚める-07-

しおりを挟む
「あれは……いったい!」



「なんて大きさですの!」



 後ろから二人の声が響く。 



 デスナイトの足元には人が複数倒れている。



 そして、デスナイトの前方100メートル向こうには複数の人々が逃げ惑っている。



 避難したここの職員だろうか。



 部隊が必死に交戦しているが、状況は、劣勢のようだ。



 俺の頭に過去の何度も見た情景が浮かぶ。



 この光景……まるで魔族——敵——に襲われている村のようだ……。



 いや……違う。



 ここは異世界ではないし、ここは戦場でもない。



 本当にそうなのか……同じじゃないか。



 敵がいて、戦闘が行われている。



 守るべき味方がいる。



 ならば……俺がやるべきことは——。



 そして、『彼女』の声が耳に響く。



『よかったじゃない? こいつならあなたの不殺の対象外でしょ。もともと生きていないものね』



 そう……その通りだ。



 確かにデスナイトなら制約の対象外だ。



 ならば……制約も……暗示も不要だ。



 そう……俺の……ようやく英雄の出番だ。





「一般の人が……このままじゃ……」



「陸自の異能部隊が苦戦するほどのモンスターがいるなんて——」



 後ろには女たちの耳触りな声が響く。



 足手まといを守りながら闘うのは面倒以外のなにものでもない。



 たかがデスナイトごときに驚いているこの女たちも、俺の重荷にしかならない。



『フフ……自己暗示も大分解けてきたようね。わかっているんでしょう? あなたはこの世界でも……いえこんなに脆弱な者しかいない世界なら——あなたは前よりももっと英雄になれる……』

 

 そうだ……。



 この世界の者たちは人もモンスターも脆弱な者たちしかいない。

 

 そんなことはとっくにわかっている。

 

 帰還した時に……はじめてダンジョンに行った時に……。

 

 だから、俺は制約を守るために自身に暗示を……精神操作を——。

 

 だが、今の俺には喜ばしいことに制約は不要だ。



 デスナイトは、あいかわらず脆弱な兵士たちと交戦している。



 やはり、所詮はせいぜいC級の汎用品のアンデットか。



 あの程度の兵士などさっさと屠ってしまえばよいのに……。



 チッ……このままじゃ魔法が使えないじゃないか。



 デスナイトに魔法を放ってもいいが、近くで倒れている兵や闘っている兵まで消滅させてしまう。



 まあ……あいつらはそもそも俺に敵対している兵士なのだから、本来別に死んでしまってもいいのだが……。



 だが、面倒なことに俺には制約がある。



 俺自らが手を下す訳にはいかない。



 とはいえ、デスナイトがこの体たらくではな。



 それならば、この女たちに期待したいところだが……。



「……敬三様?」



「ご主人様……どうされたのですか?」

 

 女たちは戸惑いの表情を浮かべている。

 

 やはりこいつらではダメだ。

 

 しかたがない。



 魔法は諦めて、直接攻撃するか。



 まあいい……そもそも俺は魔法が苦手だ。

 

 細かな加減ができないから、いつも楽しむ間もなく屠ってしまう。

 

 俺はアイテムボックスを使用して、適当な武器を取り出そうとする。

 

 だが、アイテムボックスは発動しなかった。

 

 なるほど……小賢しいな。

 

 暗示は完全にとけたと思ったが、まだ無意識レベルではかかっているということか。

 

 が……問題はない。

 

 武装していなくとも、デスナイトごとき素手でも十分だ。



 さて……やるか。



 と、不意に女……花蓮といったか……が、俺の手を取る。



 その手はわずかに震えていた。



「敬三様……どうされたんですの?」

 

 そして、その曇のない眼でじっと俺を心配そうに見つめてくる。

 

 この目は嫌いだ。

 

 俺の脳裏にあの裏切り者の女を思い出させる。



「お前らは黙ってここで大人しくしていろ」

 

 俺はそう言って、女の手を乱暴に離して、デスナイトへと向かう。

 

 俺は自身の拳に力をこめながら、デスナイトに接近する。

 

 近くでは先ほどの部隊の連中が、必死に交戦しているが、ほとんど全滅に近い状況だ。

 

 立っているのはわずかに二人程度か。

 

 それにしても、なんという脆弱な連中だ。

 

 これなら、もう少し待っていればよかったかもしれないな。

 

 と、デスナイトがようやく俺の接近に気づいたのか、俺の方へ向き直る。

 

 が……デスナイトの動きはあまりにも遅い。

 

 既に俺は拳をやつの腹部に叩き込んでいた。

 

 いくらデスナイトとはいえ、俺は素手なんだから、さすがに少しは楽しめると思ったのだが……。

 

 次の瞬間、俺の拳はデスナイトの鎧を貫通していた。

 

 こんなに脆いものなのか。

 

 純粋に強化をした俺の肉体の攻撃力に運動エネルギー——スピード——が上乗せされれば、デスナイトの装甲は打ち破れるとは思っていたが。

 

 それにしても……こんなに簡単とは興ざめもいいところだ。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...