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第一章
英雄、目覚める-03-
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この間宮氏は自衛隊員——兵士、いや士官——のようだし、麻耶さんよりも冷静に俺の言い分を聞いてくれるかもしれない。
まあ……先ほど撃たれはしたが、あれは故意ではないようだし、魔法でいえば低レベルもいいところだ。
それに間宮氏は麻耶さんと違って男だ。
いや……別に俺は男尊女卑という訳ではない。
単に女性に対して苦手意識があるというだけだ。
というのも、俺はオタクであったし、昔からその見た目ゆえに女性からいらぬ誤解を受けた。
特に俺が思春期を迎えた頃——90年代——は、どこかの連続殺人者のせいで、オタク全般の風当たりが強かった。
当然、中高生時代からオタクだった俺はそんな社会の影響をモロに受けた。
まあ……要は同級生の女性からは日々犯罪者扱いを受けたりした。
むろん異世界ではそういうものはなかったのだが……
とはいえ、異世界においても性別の差というものはあった。
やはり女性はその性質上どの種族であっても基本的には男性よりも警戒心が強かった。
異世界において、アウトサイダーの俺はどの街でもだいたい何らかのトラブルに見舞われたのだが……。
思い返せば、その発端は女性からの誤解が遠因だった気がする。
この世界に戻ってきても、鈴羽さんからあらぬ誤解を受けて、さっそくトラブったしな……。
と、俺は間宮氏を横目にしてツラツラとそんなことを考えていたのだが……。
それにしても……間宮氏。
いくら何でも俺から離れすぎていないか……。
間宮氏は扉付近……というかそこに張り付いていた。
そして、顔を背けていて、俺の方をまるで見ようともしない。
先程までの麻耶さんとはあまりにも対照的である。
まあ……兵士ならば慎重さがあるのは当然のことなのだが……。
これではおちおち話もできない。
しかたがない……こちらから切り出すか。
「あの——」
「な、なんだ!?」
俺がそう声を上げると間宮氏は、声を裏返させて、素っ頓狂な声を張り上げる。
そればかりか、その体を飛び上がらんはがりに身をよじらせている。
俺はその極端な反応に思わずびっくりしてしまう。
いくら何でも警戒しすぎじゃないか……。
だいたい先ほどの花蓮さんの屋敷では、この人もっと堂々としていた気が……。
だいぶ印象が違うな。
俺はそう訝しがりながらも口を開き、
「いや……少し自分の事情を聞いてもらえれば……誤解も——」
と、俺なりに精いっぱい神妙な面持ちで間宮氏の目を見る。
相手は兵士で、俺は素性不明の囚人……。
とはいえ結局は人と人だ。
胸襟を開いて面と向き合って、事情を話せば、話が好転することはある。
異世界でもこういうケースは何度もあったし、相手が人でないこともあった。
少なくとも、いきなり拷問されたりしてない以上、相手も俺の言い分を聞く気が……
「や、やめろ!! み、見るな!! そ、その目でわたしを……ああ……ダ、ダメ!! また……」
間宮氏は、俺からさらに後ずさり、かん高い声を上げる。
一瞬、それは女性の声かと錯覚するほどであった。
間宮氏はその場に内股姿でへたり込んでしまう。
そして、惚けたような表情を浮かべて、虚空を見つめている。
が……あまりにも間宮氏の様子が異様だったので、さすがに声をかけない訳にもいかない。
「あ、ああ……な、なんてこと……また……わたしは……」
間宮氏はこちらの声は聞こえてないようであった。
ただ顔を赤らめて、うわ言めいたことをつぶやいて、下を向いている。
この状態をどうしたものかと考えあぐねていると、突然部屋が揺れる。
いや……部屋ではない建物全体が揺れている。
ついで、耳には警報音が鳴り響く。
と、部屋の扉が開け放たれ、
「三尉! 緊急事態です!」
間宮氏の部下とおぼしき男が入ってくる。
間宮氏は異常が起きたと同時によろめきながらであったが、既に立ち上がっていた。
そのため、部下の男の前では間宮氏はややぎこちないまでも平静を保っていた。
倒れるくらいに体調が悪かったにもかかわらず、この立ち直りはさすが軍人……いや士官といったところか……。
「な、何があったのだ」
「いや……それが……休眠状態だった研究体が突然覚醒して……」
「なに! やつらが……あのモンスターたちが!? 馬鹿な……。22年間ずっと動いていなかったのに。なぜ突然……いや今はそれはいい。それで状況は?」
「協会の警備部隊がなんとか対応していますが……相手はあの大型のモンスターです。このままでは被害はさけられないかと……」
「……会長は?」
「それが……報告するなり、すぐに『わたしが対応する』と言って出ていかれてしまって。一応止めたのですが」
「……当然だろうな。麻耶さん……いや会長にとってヤツは、そしてわたしも……」
「三尉?」
「いや……なんでもない。いずれにせよ至急行動を起こす必要がある。我々も出るぞ」
「了解です。ところで三尉……こ、こいつはどうしますか?」
二人が横目で俺の方を見る。
その視線は出来れば見たくない、触れたくない……そんな感じであった。
「や、やむを得ない! こ、こいつはこのままここで留置する!」
「で、ですが……か、監視もなく——」
「い、今は緊急事態で会長……いや協会内の人員保護が何よりも優先される。だいたい監視などしていても……こいつが本気になれば——」
「……そ、そうですね。り、了解しました」
そして、間宮氏と部下はさっさと部屋から出ていこうとする。
去り際、間宮氏は、
「い、いいか! そ、そのまま大人しくしていてくれ! ぜ、絶対に動かないでくれ!」
と、念を押すようにやはり俺から目をそらしながらそう言って、足早に離れていく。
まあ……先ほど撃たれはしたが、あれは故意ではないようだし、魔法でいえば低レベルもいいところだ。
それに間宮氏は麻耶さんと違って男だ。
いや……別に俺は男尊女卑という訳ではない。
単に女性に対して苦手意識があるというだけだ。
というのも、俺はオタクであったし、昔からその見た目ゆえに女性からいらぬ誤解を受けた。
特に俺が思春期を迎えた頃——90年代——は、どこかの連続殺人者のせいで、オタク全般の風当たりが強かった。
当然、中高生時代からオタクだった俺はそんな社会の影響をモロに受けた。
まあ……要は同級生の女性からは日々犯罪者扱いを受けたりした。
むろん異世界ではそういうものはなかったのだが……
とはいえ、異世界においても性別の差というものはあった。
やはり女性はその性質上どの種族であっても基本的には男性よりも警戒心が強かった。
異世界において、アウトサイダーの俺はどの街でもだいたい何らかのトラブルに見舞われたのだが……。
思い返せば、その発端は女性からの誤解が遠因だった気がする。
この世界に戻ってきても、鈴羽さんからあらぬ誤解を受けて、さっそくトラブったしな……。
と、俺は間宮氏を横目にしてツラツラとそんなことを考えていたのだが……。
それにしても……間宮氏。
いくら何でも俺から離れすぎていないか……。
間宮氏は扉付近……というかそこに張り付いていた。
そして、顔を背けていて、俺の方をまるで見ようともしない。
先程までの麻耶さんとはあまりにも対照的である。
まあ……兵士ならば慎重さがあるのは当然のことなのだが……。
これではおちおち話もできない。
しかたがない……こちらから切り出すか。
「あの——」
「な、なんだ!?」
俺がそう声を上げると間宮氏は、声を裏返させて、素っ頓狂な声を張り上げる。
そればかりか、その体を飛び上がらんはがりに身をよじらせている。
俺はその極端な反応に思わずびっくりしてしまう。
いくら何でも警戒しすぎじゃないか……。
だいたい先ほどの花蓮さんの屋敷では、この人もっと堂々としていた気が……。
だいぶ印象が違うな。
俺はそう訝しがりながらも口を開き、
「いや……少し自分の事情を聞いてもらえれば……誤解も——」
と、俺なりに精いっぱい神妙な面持ちで間宮氏の目を見る。
相手は兵士で、俺は素性不明の囚人……。
とはいえ結局は人と人だ。
胸襟を開いて面と向き合って、事情を話せば、話が好転することはある。
異世界でもこういうケースは何度もあったし、相手が人でないこともあった。
少なくとも、いきなり拷問されたりしてない以上、相手も俺の言い分を聞く気が……
「や、やめろ!! み、見るな!! そ、その目でわたしを……ああ……ダ、ダメ!! また……」
間宮氏は、俺からさらに後ずさり、かん高い声を上げる。
一瞬、それは女性の声かと錯覚するほどであった。
間宮氏はその場に内股姿でへたり込んでしまう。
そして、惚けたような表情を浮かべて、虚空を見つめている。
が……あまりにも間宮氏の様子が異様だったので、さすがに声をかけない訳にもいかない。
「あ、ああ……な、なんてこと……また……わたしは……」
間宮氏はこちらの声は聞こえてないようであった。
ただ顔を赤らめて、うわ言めいたことをつぶやいて、下を向いている。
この状態をどうしたものかと考えあぐねていると、突然部屋が揺れる。
いや……部屋ではない建物全体が揺れている。
ついで、耳には警報音が鳴り響く。
と、部屋の扉が開け放たれ、
「三尉! 緊急事態です!」
間宮氏の部下とおぼしき男が入ってくる。
間宮氏は異常が起きたと同時によろめきながらであったが、既に立ち上がっていた。
そのため、部下の男の前では間宮氏はややぎこちないまでも平静を保っていた。
倒れるくらいに体調が悪かったにもかかわらず、この立ち直りはさすが軍人……いや士官といったところか……。
「な、何があったのだ」
「いや……それが……休眠状態だった研究体が突然覚醒して……」
「なに! やつらが……あのモンスターたちが!? 馬鹿な……。22年間ずっと動いていなかったのに。なぜ突然……いや今はそれはいい。それで状況は?」
「協会の警備部隊がなんとか対応していますが……相手はあの大型のモンスターです。このままでは被害はさけられないかと……」
「……会長は?」
「それが……報告するなり、すぐに『わたしが対応する』と言って出ていかれてしまって。一応止めたのですが」
「……当然だろうな。麻耶さん……いや会長にとってヤツは、そしてわたしも……」
「三尉?」
「いや……なんでもない。いずれにせよ至急行動を起こす必要がある。我々も出るぞ」
「了解です。ところで三尉……こ、こいつはどうしますか?」
二人が横目で俺の方を見る。
その視線は出来れば見たくない、触れたくない……そんな感じであった。
「や、やむを得ない! こ、こいつはこのままここで留置する!」
「で、ですが……か、監視もなく——」
「い、今は緊急事態で会長……いや協会内の人員保護が何よりも優先される。だいたい監視などしていても……こいつが本気になれば——」
「……そ、そうですね。り、了解しました」
そして、間宮氏と部下はさっさと部屋から出ていこうとする。
去り際、間宮氏は、
「い、いいか! そ、そのまま大人しくしていてくれ! ぜ、絶対に動かないでくれ!」
と、念を押すようにやはり俺から目をそらしながらそう言って、足早に離れていく。
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