異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
上 下
55 / 153
第一章

英雄、目覚める-03-

しおりを挟む
 この間宮氏は自衛隊員——兵士、いや士官——のようだし、麻耶さんよりも冷静に俺の言い分を聞いてくれるかもしれない。



 まあ……先ほど撃たれはしたが、あれは故意ではないようだし、魔法でいえば低レベルもいいところだ。



 それに間宮氏は麻耶さんと違って男だ。



 いや……別に俺は男尊女卑という訳ではない。



 単に女性に対して苦手意識があるというだけだ。



 というのも、俺はオタクであったし、昔からその見た目ゆえに女性からいらぬ誤解を受けた。



 特に俺が思春期を迎えた頃——90年代——は、どこかの連続殺人者のせいで、オタク全般の風当たりが強かった。



 当然、中高生時代からオタクだった俺はそんな社会の影響をモロに受けた。



 まあ……要は同級生の女性からは日々犯罪者扱いを受けたりした。



 むろん異世界ではそういうものはなかったのだが……



 とはいえ、異世界においても性別の差というものはあった。



 やはり女性はその性質上どの種族であっても基本的には男性よりも警戒心が強かった。



 異世界において、アウトサイダーの俺はどの街でもだいたい何らかのトラブルに見舞われたのだが……。



 思い返せば、その発端は女性からの誤解が遠因だった気がする。



 この世界に戻ってきても、鈴羽さんからあらぬ誤解を受けて、さっそくトラブったしな……。



 と、俺は間宮氏を横目にしてツラツラとそんなことを考えていたのだが……。



 それにしても……間宮氏。



 いくら何でも俺から離れすぎていないか……。



 間宮氏は扉付近……というかそこに張り付いていた。



 そして、顔を背けていて、俺の方をまるで見ようともしない。



 先程までの麻耶さんとはあまりにも対照的である。



 まあ……兵士ならば慎重さがあるのは当然のことなのだが……。



 これではおちおち話もできない。



 しかたがない……こちらから切り出すか。



「あの——」



「な、なんだ!?」



 俺がそう声を上げると間宮氏は、声を裏返させて、素っ頓狂な声を張り上げる。



 そればかりか、その体を飛び上がらんはがりに身をよじらせている。



 俺はその極端な反応に思わずびっくりしてしまう。



 いくら何でも警戒しすぎじゃないか……。



 だいたい先ほどの花蓮さんの屋敷では、この人もっと堂々としていた気が……。



 だいぶ印象が違うな。



 俺はそう訝しがりながらも口を開き、



「いや……少し自分の事情を聞いてもらえれば……誤解も——」



 と、俺なりに精いっぱい神妙な面持ちで間宮氏の目を見る。



 相手は兵士で、俺は素性不明の囚人……。



 とはいえ結局は人と人だ。



 胸襟を開いて面と向き合って、事情を話せば、話が好転することはある。



 異世界でもこういうケースは何度もあったし、相手が人でないこともあった。



 少なくとも、いきなり拷問されたりしてない以上、相手も俺の言い分を聞く気が……



「や、やめろ!! み、見るな!! そ、その目でわたしを……ああ……ダ、ダメ!! また……」



 間宮氏は、俺からさらに後ずさり、かん高い声を上げる。



 一瞬、それは女性の声かと錯覚するほどであった。



 間宮氏はその場に内股姿でへたり込んでしまう。



 そして、惚けたような表情を浮かべて、虚空を見つめている。



 が……あまりにも間宮氏の様子が異様だったので、さすがに声をかけない訳にもいかない。



「あ、ああ……な、なんてこと……また……わたしは……」



 間宮氏はこちらの声は聞こえてないようであった。



 ただ顔を赤らめて、うわ言めいたことをつぶやいて、下を向いている。



 この状態をどうしたものかと考えあぐねていると、突然部屋が揺れる。



 いや……部屋ではない建物全体が揺れている。



 ついで、耳には警報音が鳴り響く。



 と、部屋の扉が開け放たれ、



「三尉! 緊急事態です!」



 間宮氏の部下とおぼしき男が入ってくる。



 間宮氏は異常が起きたと同時によろめきながらであったが、既に立ち上がっていた。



 そのため、部下の男の前では間宮氏はややぎこちないまでも平静を保っていた。



 倒れるくらいに体調が悪かったにもかかわらず、この立ち直りはさすが軍人……いや士官といったところか……。



「な、何があったのだ」



「いや……それが……休眠状態だった研究体が突然覚醒して……」



「なに! やつらが……あのモンスターたちが!? 馬鹿な……。22年間ずっと動いていなかったのに。なぜ突然……いや今はそれはいい。それで状況は?」



「協会の警備部隊がなんとか対応していますが……相手はあの大型のモンスターです。このままでは被害はさけられないかと……」



「……会長は?」



「それが……報告するなり、すぐに『わたしが対応する』と言って出ていかれてしまって。一応止めたのですが」



「……当然だろうな。麻耶さん……いや会長にとってヤツは、そしてわたしも……」



「三尉?」



「いや……なんでもない。いずれにせよ至急行動を起こす必要がある。我々も出るぞ」



「了解です。ところで三尉……こ、こいつはどうしますか?」

 

 二人が横目で俺の方を見る。

 その視線は出来れば見たくない、触れたくない……そんな感じであった。



「や、やむを得ない! こ、こいつはこのままここで留置する!」



「で、ですが……か、監視もなく——」



「い、今は緊急事態で会長……いや協会内の人員保護が何よりも優先される。だいたい監視などしていても……こいつが本気になれば——」



「……そ、そうですね。り、了解しました」

 

 そして、間宮氏と部下はさっさと部屋から出ていこうとする。

 

 去り際、間宮氏は、



「い、いいか! そ、そのまま大人しくしていてくれ! ぜ、絶対に動かないでくれ!」

 

 と、念を押すようにやはり俺から目をそらしながらそう言って、足早に離れていく。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...