異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

陸上自衛隊特殊作戦群サイド-04-

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 事前に聞いていた話しではあったが、麻耶は現場に同行したい旨を希望していた。



 いや……希望というよりは命令か……。



 麻耶は自身の部屋で何やら束になったレポートを忙しそうに見ていた。



 そして、麻耶は綾音を横目で見るなり、



「三尉、今回については……わたしも同行します」



 そうあっさりと言う。



 無駄だと思いつつも綾音は、翻意を促すために進言する。



「会長。いくらあなたとはいえ……危険です。我々だけで行動したいのですが」



「現場にはわたしの……友人たちがいるの。彼女たちを可能な限り危険な目にはあわせたくないわ」



「……対象に洗脳されている疑いがある二名の民間人の女性ですか……。会長のご友人だったとは……。心中お察しいたします。ですが……我々も最大限、民間人に危害が及ぶような行動はさけます。ですから——」

 

 麻耶は綾音の言葉を遮り、



「三尉、あなたたちの実力は十分信用しています。でもそれと今回のことは別だわ。このことはわたしの信念の問題です」

 

 と、きっぱりと言う。

 

 麻耶はじっと綾音の目を見る。

 

 綾音は麻耶の様子を見て、これ以上話しても、説得するのは不可能だとすぐに察した。



 綾音も譲らない性格ではあるが、麻耶はそれ以上である。

 

 それに麻耶の過去を知る綾音にとっては今回の彼女の行動はある意味で当然とも思えた。



 大切な人間を失うことを何よりも怖れている麻耶……。

 そんな彼女にとって、友人たちの保護を他人に全て委ねるのは耐えられないことなのだろう。



 綾音もその心情は痛いほどわかってしまうから、それ以上は何も言えなかった。



 麻耶もまた綾音と同様に22年前の悲劇を引きずっているのだから……。



 綾音は、ふうとため息をひとつつく。



 部下たちには余計な気苦労をかけてしまうな……。



「会長のご意向はわかりました。ですが、可能な限り、会長は対象から離れていてください。我々が対象を確保してから、ご友人たちと話していただければ——」



「ええ。わかっています」

 

 と、麻耶は素直にうなずく。



 が……綾音は内心では麻耶がそんなタマの女性ではないとも思っていた。

 

 綾音は、今回の麻耶の強引な行動について、かねてからの懸念事項を払拭するためのものだと考えていた。



 つまり、国内において野放図に行われている外国の工作員——たいてい彼らは異能者だ——の諜報活動に歯止めをかけること——。



 そのために、対異能者に対する陸自部隊の実戦投入という既成事実をつくる……そんな思惑である。

 

 むろんしたたかな麻耶のことだからそれも大きいのだろうが……。

 

 もしかしたら、友人たちを救いたいという思いの方が強かったのかもしれない。

 

 それならば、なおさらモニター越しの後方で待機……なんてことを麻耶はしないだろう。



 綾音は今度はあえて聞こえるくらいの大きなため息をつく。



「あら? どうしたの? 三尉? なにか心配ごとでも?」



「いえ……特には」

 

 麻耶はやや含みを帯びた笑みを浮かべながら、綾音を見る。



「フフ……そう。ならいいわ」

 

 麻耶は綾音の懸念もよくわかっているはずだ。

 

 それでいながら、麻耶は結局行動してしまうのだ



 まったく……この人は確信犯だから困る……。



 そう心の中で愚痴りながらも、綾音は麻耶に対して悪い感情は持っていない。



 というのも、麻耶はダンジョン協会の会長という立場でありながらも、常に現場目線で事に当たることを綾音はよく知っているからだ。



 だからこそ綾音も麻耶のこうした危険な行為をしぶしぶながら受け入れてしまうのだが……。



「ところで……三尉。その格好は何なの?」



 麻耶が眉根を寄せて、怪訝な顔をしている。



「なにか問題でもありますか? 私服ですから人目も引いていないと思いますが……」

 

 今の綾音は、制服姿ではなく私服姿である。

 

 綾音がわざわざ制服から私服に着替えてきたのにはむろん理由がある。



 協会の事務所に陸自の制服姿で乗り込むのは色々と人目をひいてしまうからだ。



 協会と陸自の関係はある意味で公然の秘密に近いものがある。



 が……それでも堂々と協会内で陸自の制服姿で歩き回っていらぬ波風を立てる必要はない。



 この国では「建前」が何よりも重要なのだし。



 てっきり麻耶も同じ考えだと思っていたのだが……。

 

 麻耶は綾音の全身を上から下まで見た後で、呆れたようなため息を漏らす。



「はあ……三尉。あなたも若い女性なのだから……。もう少しなんというか……おしゃれをしたらどうなの?」

 

 確かに今の綾音の服装はお世辞にも洒落たものではない。



 デニムのジーンズにTシャツといった出で立ちである。

 

 それにショートカットの髪をキャップでまとめているから、女性らしさは皆無である。

 

 今の綾音を見たら、女性ではなく男性と思うかもしれない。



「はあ……ですが、わたしはこういう服しか持っていませんし」

 

 綾音は当たり障りのない受け答えをする。



 が……しかし、内心ではそれを麻耶には言われたくないと思っていた。

 

 麻耶は綾音と違いフォーマルな服装を一応している。



 そして、綾音は麻耶と会うときはたいてい同じ格好をしている。



 綾音は以前麻耶が、『服を考えるのが手間だから同じ服を何着も持って着回しているのよ』と言っていたことを思い出していた。



 それでも、麻耶のスタイルの良さと美貌によって、周りからはお洒落なキャリアウーマンに見られるのかもしれないが……。



 それはなにか違う気がする。



釈然としない顔を浮かべていたのが悪かったのか、さらに麻耶が言う。



「三尉、あなたもいい年をした女性なのだし、少しは将来のことも考えたらどうなのかしら。そんな格好ではますます男がよりつかないでしょ」

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