異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
上 下
48 / 153
第一章

陸上自衛隊特殊作戦群サイド-02-

しおりを挟む
 なるほど異能を持つ冒険者は、個としての能力は我が隊員よりも優れているのかもしれない。



 が……彼らは所詮素人——冒険者——である。



 国を守るために、日々、人を制圧し、殺す技術を磨いている我々とはまるで覚悟が違う。



 しかも、対象の精神支配下にあるS級冒険者もA級冒険者もいずれも女らしい。



 それならばなおさら大した脅威ではないだろう。



「精神操作魔法の使い手の諜報員に……S級とA級の冒険者……しかも女か」



 部下の一人が、たったいま間宮が心の中で思ったことと全く同じことをつぶやく。



 それはつまり、間宮の能力が無意識の内に発動していることを意味している。



 わたしもまだまだ能力の制御が未熟だな……。



 わたしが部下に対して無意識に自身の思考に染めてしまっているのか。



 間宮はこめかみに手を当てて意識を集中させる。



 と……先ほどの部下の一人が、我に返ったように、はっと顔を上げて、



「あ……申し訳ありません。隊長の前で女性を侮る発言など——」



「ふ……いいさ。わたしもお前と同じことを思っていたのだからな」



 間宮綾音(あやね)は女性である。

 

 これは通常決して有り得ることではない。



 いわゆるフィクション——小説、アニメ、漫画——の中では女性兵士の存在は特段珍しいことではない。



 だが、現実の軍組織においてそれはありえない。



 むろん女性に対しても徴兵制を導入している国——イスラエル、ノルウェー、スウェーデンなど——は少ないながらも存在する。



 そして、日本においても自衛隊の実に1割近くが女性である。



 だが、これら女性兵士たちのほとんどは後方支援の任務についている。



 彼女たちが実戦に出ることは現代においてもほぼないといってよい。



 そして、綾音が所属するのは陸上自衛隊の特殊作戦群であり、それはいわゆる「特殊部隊」と言われる存在であり、選りすぐりの最強の実働部隊である。



 その特殊部隊の小隊長を「女性」が務めるなどということは日本に限らず世界のいずれの軍でも本来ならばありえないことなのだ。



 ありえないことを可能にする力……人々はダンジョン出現以来その力のことを異能と呼ぶ。



 そして、綾音が現在の職位にいる——ありえないことを可能にした——のはやはり彼女が持つ異能のおかげである。



 綾音は自身の身体能力全般を恒常的に上昇させる戦闘系スキル——エンハンスボディ——を保有している。



 それゆえ綾音は女性でありながら男性の特殊部隊の隊員以上の能力を有している。



 だが、それだけ——エンハンスボディだけ——では綾音は今の地位につくことはできない。



 冒険者ならば、綾音はひとつの異能だけで、十分に活躍していた——最低でもA級冒険者になれた——だろう。



 冒険者はパーティを組むことはあっても、所詮「個」の能力が何よりも優先される。



 それに、対して軍というのは「組織」である。



 そこでは、「個」よりも「集団」が優先される。



 つまり、綾音が異能により並外れた身体能力を有していても、綾音が「女」である以上、上層部があえて綾音を特殊部隊の隊員……ましてや隊長にするメリットは乏しい。



 むろん他の部隊ならば、それで事足りる。



 綾音はそもそも防衛大出身であるから、士官になるのはある意味で当然である。



 「花」がある女性士官を加えるだけで、対外的な「広報」や「宣伝」としては役に立つだろう。



 そう……実戦から離れた後方部隊ならばそれで十分である。



 だが、特殊作戦群の部隊は実戦部隊だ。



 そこで求められるのはただひとつ……敵を制圧、殺傷させることができる圧倒的な実力のみである。



 そんな部隊に女性がいても何かメリットがあるのだろうか。



 基本的に特殊部隊の隊員は全てが男性で構成されている。



 そんな中に、仮に能力が優れていたとしても、女性が一人いたらどうなるのか。



 当然、部隊内の規律は乱れるだろう。



 むろん……特殊部隊の隊員はエリート中のエリートであり、他の隊員の模範となるべき人々である。



 そんな彼らは本来であれば同僚が女性であろうとも、その実力が確かなら男性の時と同様に振る舞うべきである……。



 それは理想論だ。



 はたして女性を優秀な兵士——相手をためらうことなく殺傷できる者——として信頼することができるだろうか。



 表面上はいくらでも取り繕うことはできる。



 だが……真に追い詰められた時——そして実働部隊の現場は常にそうだ——自分の命を……背中を女性に預けられるだろうか。



 わずかな不信が戦場では死を招く。



 一瞬の逡巡が、生死に直結する状況下で、多様性やポリコレなどいう綺麗事は、百害あって一利なしだ。



 そうしたことを唱えることができるのは、銃後にいるもの……安全が確約されているものに許される特権である。



 その者が女性であるから、心の底にわずかに信用できない気持ちがあれば、それだけ隊全体としてはマイナスになる。



 しかも、幸か不幸か綾音は女性として、非常に美しい容姿に恵まれてしまった。



 いくら彼女が女性性を可能な限り、消そうと努めても、それは否が応なく、隊員たちに影響を与えてしまう。



 だから当初は、綾音が、いくら個人として優秀な実績をおさめても、過酷な訓練を乗り越えても、彼女は部隊員になることはできなかった。



 しかし、綾音は、最終的に女性であるがゆえに必然的に生じるこれらの非常に大きなハンディキャップを乗り越えることになる。



 それは、彼女のたゆまぬ努力や頑張りのおかげ……などという綺麗事ごとではもちろんない。



 彼女を小隊長にさせたのは、やはり異能……綾音の第二のスキルにある。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...