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プロローグ
-05- オッサン、S級冒険者たちの救助に向かう
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たしかストーントロールだったか。
まあ……「ダンジョンの支配者たち」ならこの程度のモンスターは瞬殺だろう。
と……俺は呑気に見ていたのだが……。
何故か「ダンジョンの支配者たち」の面々は三人ともかなり悲痛な表情を浮かべているように見える。
特に『雷鳴の狂戦士』などは、酷く狼狽しているようで今にも泣き出しそうな顔をしている。
「龍太! 落ち着きなさい。焦ってはますます事態は悪化するだけだわ」
「う、うるせえ! こ、こんな状況で落ち着いてなんかいられるか! 俺はまだ死にたくねえんだよぉ!!」
「龍太くん。冷静になりなさい。あなたには剣技がありますわ。それに、今のあなたの剣は、ダンジョンで発掘された最高峰の物質で出来た剣ですわ。きっとあのモンスターにも効くに違いないですわ」
『流麗の剣姫』と『癒やしの織姫』が、それぞれ駄々をこねる子供をあやすかのように落ち着いた口調で『雷鳴の狂戦士』に語りかけている。
「そ、そうだった……お、俺には剣技があった……。よ、よし……やってやるぜ」
『雷鳴の狂戦士』はそう意気を上げると、剣を大上段にかまえてしばし力を溜めるかの如く、間を取っていた。
そして、1拍の後で、「くらいやがれぇ!!」と叫びながら、ストーントロール目掛けて突進していく。
棒立ちのストーントロールに『雷鳴の狂戦士』が放った剣技が直撃する。
凄まじい剣撃音が響くとともに、剣とゴーレムを覆う硬い岩石との衝突でまばゆいばかりの光が映像として映し出される。
『雷鳴の狂戦士』は手応えを感じたのだろうか、
「よ、よっしゃぁ!! やってやったぜぇ!! ざまあ見やがれ! クソモンスターがあ!! S級冒険者をなめるなよぉ!!」
とガッツポーズをして大騒ぎをしている。
俺は、『雷鳴の狂戦士』が使った予期せぬ剣技に驚き、呆然としていた。
あ、あれって……「チャージアタック」だよな……。
剣士が覚える最初期の技の一つである。
攻撃力は通常攻撃に毛の生えた程度のものではあるが、その分消耗する体力もほとんどないから、技をほとんど覚えていない初心者の時分には一応それなりに役には立つ。
といってもそれは本当に最初期であり、すぐにお役御免になる。
他に威力に優れる剣技は山のようにある……というか剣技の中では「チャージアタック」はもっとも威力が低い。
なんであえてこの場面で「チャージアタック」を……。
と……俺が訝しげに見ていると、『雷鳴の狂戦士』の叫び声が聞こえる。
「お、おい!! う、うそだろぉ!! な、なんで傷一つないんだよ!」
ストーントロールは、『雷鳴の狂戦士』の一撃を受けてもビクともしていない。
それはそうだろう……と俺は思う。
というのも、トロール系のモンスターは基本的に物理防御に特化しているからだ。
だが、逆に魔法防御力は皆無であるから、攻略の難易度的には雑魚モンスター扱いである。
俺は、てっきり『雷鳴の狂戦士』がまた配信を盛り上げるために演技をしているのかと思っていたが、どうにもそうは見えない。
なにせ、『雷鳴の狂戦士』は腰が抜けるとほどビビり上がってしまい、ついには、
「い、嫌だぁ!! し、死にたくねえよ!! 俺はまだこんなところで死にたくねえ!!」
と絶叫する始末なのである。
さらに、あろうことか、『雷鳴の狂戦士』は、『流麗の剣姫』を突き飛ばすように、相対するモンスターに背を向けてそのまま逃げ出してしまう。
「ち、ちょっと! 龍太! ま、待ちなさい! 前衛のあなたがいなくなったら花蓮さんが——」
『雷鳴の狂戦士』が戦線から離脱した影響で、彼の後ろにいた『癒やしの織姫』がストーントロールに全面に立つ形になってしまう。
ストーントロールは咆哮を上げて絶好のターゲットを見つけたかの如く、『癒やしの織姫』に猛然と襲いかかる。
「いやああ!!!!」
『癒やしの織姫』の凄まじい絶叫とともに、映像は再び暗転する。
俺も含めて視聴者の誰もがこの事態に騒然としていた。
コメントもいつになく動揺している。
俺は、次々と流れるコメントを見ながら、心臓がバクバクと脈打っていた。
この段になって、俺はようやく気づいたのだ。
これは演技ではない。
理由は不明だが彼らは酷く調子が悪いのか、本当に窮地に陥っているのだと……。
同時に自分自身に酷く腹を立てていた。
なにやってんだ! 俺は! 同じ冒険者が危険な目にあっているのに、呑気に動画を見ている場合じゃないだろ!
俺は気づいた時には家を飛び出していて、ダンジョンに向かっていた。
◆◆配信実況のコメント欄◆◆
『おい……これってマジでヤバいだろ』
『誰かダンジョン協会に通報しろよ!』
『最下層のモンスターヤバすぎるな……。「ダンジョンの支配者たち」でも歯が立たないなんて』
『にしても「雷鳴の狂戦士」最低だな……。仲間見捨てて逃げるなんて』
『前からアイツは嫌いだった。見栄っ張りで自慢ばかりだったし』
『てかお前ら……よくこんな時に呑気にコメントしてるな! 何かしろよ! 美月ちゃんや花蓮さんの命がマジにヤバいんだぞ!』
『俺だって……なんとかしたいけど……。何もできねえだろ……』
『ダンジョン協会には通報した! もう協会も把握していて動いているって』
『今からダンジョン協会の冒険者が行っても間に合わねえだろ!』
『通報しても、助けに行くのは無理だろ。最下層なんだし、そもそも時間がたりない』
『そもそも「ダンジョンの支配者たち」でも勝てないモンスターじゃどうしようもないだろう。二次被害を生むだけ』
『《¥10,000》 祈るしかないな……。なんとか美月ちゃんと花蓮さんが無事であるように……とりあえず俺はスパチャする……』
『《¥5,000》 俺も……』
『金出してもしょうがないだろ!』
『お、おい……画面が復活したぞ!』
『み、美月ちゃんだ!』
まあ……「ダンジョンの支配者たち」ならこの程度のモンスターは瞬殺だろう。
と……俺は呑気に見ていたのだが……。
何故か「ダンジョンの支配者たち」の面々は三人ともかなり悲痛な表情を浮かべているように見える。
特に『雷鳴の狂戦士』などは、酷く狼狽しているようで今にも泣き出しそうな顔をしている。
「龍太! 落ち着きなさい。焦ってはますます事態は悪化するだけだわ」
「う、うるせえ! こ、こんな状況で落ち着いてなんかいられるか! 俺はまだ死にたくねえんだよぉ!!」
「龍太くん。冷静になりなさい。あなたには剣技がありますわ。それに、今のあなたの剣は、ダンジョンで発掘された最高峰の物質で出来た剣ですわ。きっとあのモンスターにも効くに違いないですわ」
『流麗の剣姫』と『癒やしの織姫』が、それぞれ駄々をこねる子供をあやすかのように落ち着いた口調で『雷鳴の狂戦士』に語りかけている。
「そ、そうだった……お、俺には剣技があった……。よ、よし……やってやるぜ」
『雷鳴の狂戦士』はそう意気を上げると、剣を大上段にかまえてしばし力を溜めるかの如く、間を取っていた。
そして、1拍の後で、「くらいやがれぇ!!」と叫びながら、ストーントロール目掛けて突進していく。
棒立ちのストーントロールに『雷鳴の狂戦士』が放った剣技が直撃する。
凄まじい剣撃音が響くとともに、剣とゴーレムを覆う硬い岩石との衝突でまばゆいばかりの光が映像として映し出される。
『雷鳴の狂戦士』は手応えを感じたのだろうか、
「よ、よっしゃぁ!! やってやったぜぇ!! ざまあ見やがれ! クソモンスターがあ!! S級冒険者をなめるなよぉ!!」
とガッツポーズをして大騒ぎをしている。
俺は、『雷鳴の狂戦士』が使った予期せぬ剣技に驚き、呆然としていた。
あ、あれって……「チャージアタック」だよな……。
剣士が覚える最初期の技の一つである。
攻撃力は通常攻撃に毛の生えた程度のものではあるが、その分消耗する体力もほとんどないから、技をほとんど覚えていない初心者の時分には一応それなりに役には立つ。
といってもそれは本当に最初期であり、すぐにお役御免になる。
他に威力に優れる剣技は山のようにある……というか剣技の中では「チャージアタック」はもっとも威力が低い。
なんであえてこの場面で「チャージアタック」を……。
と……俺が訝しげに見ていると、『雷鳴の狂戦士』の叫び声が聞こえる。
「お、おい!! う、うそだろぉ!! な、なんで傷一つないんだよ!」
ストーントロールは、『雷鳴の狂戦士』の一撃を受けてもビクともしていない。
それはそうだろう……と俺は思う。
というのも、トロール系のモンスターは基本的に物理防御に特化しているからだ。
だが、逆に魔法防御力は皆無であるから、攻略の難易度的には雑魚モンスター扱いである。
俺は、てっきり『雷鳴の狂戦士』がまた配信を盛り上げるために演技をしているのかと思っていたが、どうにもそうは見えない。
なにせ、『雷鳴の狂戦士』は腰が抜けるとほどビビり上がってしまい、ついには、
「い、嫌だぁ!! し、死にたくねえよ!! 俺はまだこんなところで死にたくねえ!!」
と絶叫する始末なのである。
さらに、あろうことか、『雷鳴の狂戦士』は、『流麗の剣姫』を突き飛ばすように、相対するモンスターに背を向けてそのまま逃げ出してしまう。
「ち、ちょっと! 龍太! ま、待ちなさい! 前衛のあなたがいなくなったら花蓮さんが——」
『雷鳴の狂戦士』が戦線から離脱した影響で、彼の後ろにいた『癒やしの織姫』がストーントロールに全面に立つ形になってしまう。
ストーントロールは咆哮を上げて絶好のターゲットを見つけたかの如く、『癒やしの織姫』に猛然と襲いかかる。
「いやああ!!!!」
『癒やしの織姫』の凄まじい絶叫とともに、映像は再び暗転する。
俺も含めて視聴者の誰もがこの事態に騒然としていた。
コメントもいつになく動揺している。
俺は、次々と流れるコメントを見ながら、心臓がバクバクと脈打っていた。
この段になって、俺はようやく気づいたのだ。
これは演技ではない。
理由は不明だが彼らは酷く調子が悪いのか、本当に窮地に陥っているのだと……。
同時に自分自身に酷く腹を立てていた。
なにやってんだ! 俺は! 同じ冒険者が危険な目にあっているのに、呑気に動画を見ている場合じゃないだろ!
俺は気づいた時には家を飛び出していて、ダンジョンに向かっていた。
◆◆配信実況のコメント欄◆◆
『おい……これってマジでヤバいだろ』
『誰かダンジョン協会に通報しろよ!』
『最下層のモンスターヤバすぎるな……。「ダンジョンの支配者たち」でも歯が立たないなんて』
『にしても「雷鳴の狂戦士」最低だな……。仲間見捨てて逃げるなんて』
『前からアイツは嫌いだった。見栄っ張りで自慢ばかりだったし』
『てかお前ら……よくこんな時に呑気にコメントしてるな! 何かしろよ! 美月ちゃんや花蓮さんの命がマジにヤバいんだぞ!』
『俺だって……なんとかしたいけど……。何もできねえだろ……』
『ダンジョン協会には通報した! もう協会も把握していて動いているって』
『今からダンジョン協会の冒険者が行っても間に合わねえだろ!』
『通報しても、助けに行くのは無理だろ。最下層なんだし、そもそも時間がたりない』
『そもそも「ダンジョンの支配者たち」でも勝てないモンスターじゃどうしようもないだろう。二次被害を生むだけ』
『《¥10,000》 祈るしかないな……。なんとか美月ちゃんと花蓮さんが無事であるように……とりあえず俺はスパチャする……』
『《¥5,000》 俺も……』
『金出してもしょうがないだろ!』
『お、おい……画面が復活したぞ!』
『み、美月ちゃんだ!』
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