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プロローグ
-04- オッサン、炎上に怯える
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俺はその羽根をしみじみと眺める。
というのも、このマジックアイテムは異世界で散々見たことがあるからだ。
俺もダンジョンを脱出する際によく使っていた。
それにしても、やっぱり現実世界に現れたダンジョン関連のアイテムや魔法体系は俺がいた異世界とほとんど同じだな……。
俺はそんなことを考えていると、『雷鳴の狂戦士』がヤケにバカでかい声を出す。
「な!? 美月ちゃん! 何考えているんだよ! そんな超レアなアイテムをこんなホラ吹きのオッサンにわたすなんて! 『帰還の羽根』は人数分しかないんだぜ!」
「美月……本当にいいんですの。その人に『帰還の羽根』を渡してしまったら、もしもの時の脱出手段がなくなってしまいますわよ」
「花蓮さん。大丈夫です。その時は二人がアイテムを使ってください。わたしは残りますから」
「……ふう……覚悟を決めているようですわね。こうなったら美月には、言うだけ無駄……ですわね……。それならもう何も言わないわ」
「いやいや花蓮さん。明らかにおかしいでしょ! こんな奴になんでレアアイテムを無料で渡すんだよ! 最低でも金はもらっておくべきでしょ! こっちは命を救ってやるんだからさ!」
「龍太。もういいでしょ。これがわたしが出来る精一杯の妥協よ。もしアイテムを無償で渡すのに反対だっていうなら、この人を警護しながら上に戻るわ」
「ったくよぉ……わかったよ! 勝手にしろよぉ! まったく……もったいねえ!!」
「ダンジョンの支配者たち」の面々のやり取りを眼の前で見ながら、俺は先ほどからとある疑問が膨らむばかりであった。
なぜ『帰還の羽根』をここまでレア扱いするのだろうか……と。
『帰還の羽根』は確かに便利アイテムではあるが、貴重なものではない。
というのも、帰還魔法の「リターン」を覚えた後は、「帰還の羽根」はほぼ用済みとかしてしまう。
そして、「リターン」は中級者程度であれば誰もが覚えることができる魔法である。
俺がそう訝しげに「帰還の羽根」を見ていると、『流麗の剣姫』はその美しい顔に笑みを浮かべながら、
「気にしないで遠慮せずに使ってください。もちろんお金なんて請求しませんから、初心者の保護はわたしたちのようなベテランパーティーの当然の責務ですから」
と言う。
他の二人のメンバー、『雷鳴の狂戦士』と『癒やしの織姫』もそれぞれ思い思いの表情を浮かべながら、俺のことをじっと見ている。
いつものように『リターン』を使って戻るつもりだったが、とてもそんなことを言える雰囲気ではない。
『流麗の剣姫』の澄んだ瞳と目が合い、俺はますますいたたまれなくなり、結局その場の空気に押されて、
「で、では……あ、ありがたく使わせてもらいます」
と、ボソリと言い、彼らが奥へと向かうのを見守る。
やがて、彼らが完全に視界から消えた後で、俺はもらった『帰還の羽根』をまじまじと見る。
どう見ても前の世界で見た『帰還の羽根』と同じだよなあ……。
彼らがいなくなった今、『リターン』で戻ってもよかったが、どうにもそれは人としてやってはいけないことな気がする……。
結局、俺は実に25年ぶりくらいに『帰還の羽根』を使用して、ダンジョンを脱出した。
そして、俺はダンジョン入り口まで戻ってくる。
自分の家——築年40年の木造アパート——に戻り、動画を編集しながら、俺は先ほどの疑問を考えていた。
それにしても、「帰還の羽根」がレアアイテム扱いなのは何故なんだ?
もしや……この世界の冒険者はいわゆるゲームのような縛りプレイをしているのか?
例えば、「リターン」を使用しないという暗黙の業界ルールでもあるのだろうか。
それなら、「帰還の羽根」の需要が上がり、レア扱いになるのもうなずける。
とすると、俺は実は知らず知らずの内にルール違反を繰り返していたのでは……。
今まで俺はダンジョンから戻る際には全て「リターン」を使っていて、普通にその様子も配信していたが……。
俺は自分がいままで配信した動画を見る。
案の定、俺が「リターン」を使っている模様はしっかりと配信されていた。
やばい……ルール違反で炎上するかも……。
と、慌ててコメントを見るが、幸いといってよいのかいつも通り再生数が数十という過疎っぷりなので、コメントはほとんどついていなかった。
『てか……このオッサンなんでダンジョンから出るとこだけ編集してるの?』
『ダンジョンで一瞬から出るところだけ丁寧に編集されているのが謎w』
『他は編集皆無で長時間流しっぱなしなのにな』
よかった……。
なぜか極少数の視聴者も俺が「リターン」を使っているとは思っていないらしい。
編集でカットしていると誤解してくれているようだ。
俺がそうほっとひと安心していると、動画アプリに通知が入る。
「ダンジョンの支配者たち」のライブ配信が始まったとの通知だった。
俺は早速その動画をワクワクしながら見る。
先ほど実際に会っているだけにいつにもまして、俺のテンションは高くなっていた。
これでは完全に単なる一視聴者だが、「ダンジョンの支配者たち」のライブ配信はそれだけ見る者たちを魅了するのだから仕方がない。
しかし……動画の様子がおかしい。
先ほどからずっと真っ暗で、音声は雑音ばかりだ。
「ダンジョンの支配者たち」がこんな初歩的なミスをするなんて少なくとも俺が見たライブ配信では一度もない。
コメントもざわつきはじめていた。
そこに突如として、絶叫が響き渡る。
「こ、こんなのぉぉ!! 勝てっこねえょぉぉ!!」
聞き覚えのある若い男の声だった。
『雷鳴の狂戦士』……なのか?
同時に、映像も流れ出す。
配信用のドローンが地面に落ちているのか、下からのアングルで、「ダンジョンの支配者たち」と一匹の巨大なモンスターが相対している姿が映し出される。
うん? あれって昨日俺が気絶させた奴じゃないか……。
というのも、このマジックアイテムは異世界で散々見たことがあるからだ。
俺もダンジョンを脱出する際によく使っていた。
それにしても、やっぱり現実世界に現れたダンジョン関連のアイテムや魔法体系は俺がいた異世界とほとんど同じだな……。
俺はそんなことを考えていると、『雷鳴の狂戦士』がヤケにバカでかい声を出す。
「な!? 美月ちゃん! 何考えているんだよ! そんな超レアなアイテムをこんなホラ吹きのオッサンにわたすなんて! 『帰還の羽根』は人数分しかないんだぜ!」
「美月……本当にいいんですの。その人に『帰還の羽根』を渡してしまったら、もしもの時の脱出手段がなくなってしまいますわよ」
「花蓮さん。大丈夫です。その時は二人がアイテムを使ってください。わたしは残りますから」
「……ふう……覚悟を決めているようですわね。こうなったら美月には、言うだけ無駄……ですわね……。それならもう何も言わないわ」
「いやいや花蓮さん。明らかにおかしいでしょ! こんな奴になんでレアアイテムを無料で渡すんだよ! 最低でも金はもらっておくべきでしょ! こっちは命を救ってやるんだからさ!」
「龍太。もういいでしょ。これがわたしが出来る精一杯の妥協よ。もしアイテムを無償で渡すのに反対だっていうなら、この人を警護しながら上に戻るわ」
「ったくよぉ……わかったよ! 勝手にしろよぉ! まったく……もったいねえ!!」
「ダンジョンの支配者たち」の面々のやり取りを眼の前で見ながら、俺は先ほどからとある疑問が膨らむばかりであった。
なぜ『帰還の羽根』をここまでレア扱いするのだろうか……と。
『帰還の羽根』は確かに便利アイテムではあるが、貴重なものではない。
というのも、帰還魔法の「リターン」を覚えた後は、「帰還の羽根」はほぼ用済みとかしてしまう。
そして、「リターン」は中級者程度であれば誰もが覚えることができる魔法である。
俺がそう訝しげに「帰還の羽根」を見ていると、『流麗の剣姫』はその美しい顔に笑みを浮かべながら、
「気にしないで遠慮せずに使ってください。もちろんお金なんて請求しませんから、初心者の保護はわたしたちのようなベテランパーティーの当然の責務ですから」
と言う。
他の二人のメンバー、『雷鳴の狂戦士』と『癒やしの織姫』もそれぞれ思い思いの表情を浮かべながら、俺のことをじっと見ている。
いつものように『リターン』を使って戻るつもりだったが、とてもそんなことを言える雰囲気ではない。
『流麗の剣姫』の澄んだ瞳と目が合い、俺はますますいたたまれなくなり、結局その場の空気に押されて、
「で、では……あ、ありがたく使わせてもらいます」
と、ボソリと言い、彼らが奥へと向かうのを見守る。
やがて、彼らが完全に視界から消えた後で、俺はもらった『帰還の羽根』をまじまじと見る。
どう見ても前の世界で見た『帰還の羽根』と同じだよなあ……。
彼らがいなくなった今、『リターン』で戻ってもよかったが、どうにもそれは人としてやってはいけないことな気がする……。
結局、俺は実に25年ぶりくらいに『帰還の羽根』を使用して、ダンジョンを脱出した。
そして、俺はダンジョン入り口まで戻ってくる。
自分の家——築年40年の木造アパート——に戻り、動画を編集しながら、俺は先ほどの疑問を考えていた。
それにしても、「帰還の羽根」がレアアイテム扱いなのは何故なんだ?
もしや……この世界の冒険者はいわゆるゲームのような縛りプレイをしているのか?
例えば、「リターン」を使用しないという暗黙の業界ルールでもあるのだろうか。
それなら、「帰還の羽根」の需要が上がり、レア扱いになるのもうなずける。
とすると、俺は実は知らず知らずの内にルール違反を繰り返していたのでは……。
今まで俺はダンジョンから戻る際には全て「リターン」を使っていて、普通にその様子も配信していたが……。
俺は自分がいままで配信した動画を見る。
案の定、俺が「リターン」を使っている模様はしっかりと配信されていた。
やばい……ルール違反で炎上するかも……。
と、慌ててコメントを見るが、幸いといってよいのかいつも通り再生数が数十という過疎っぷりなので、コメントはほとんどついていなかった。
『てか……このオッサンなんでダンジョンから出るとこだけ編集してるの?』
『ダンジョンで一瞬から出るところだけ丁寧に編集されているのが謎w』
『他は編集皆無で長時間流しっぱなしなのにな』
よかった……。
なぜか極少数の視聴者も俺が「リターン」を使っているとは思っていないらしい。
編集でカットしていると誤解してくれているようだ。
俺がそうほっとひと安心していると、動画アプリに通知が入る。
「ダンジョンの支配者たち」のライブ配信が始まったとの通知だった。
俺は早速その動画をワクワクしながら見る。
先ほど実際に会っているだけにいつにもまして、俺のテンションは高くなっていた。
これでは完全に単なる一視聴者だが、「ダンジョンの支配者たち」のライブ配信はそれだけ見る者たちを魅了するのだから仕方がない。
しかし……動画の様子がおかしい。
先ほどからずっと真っ暗で、音声は雑音ばかりだ。
「ダンジョンの支配者たち」がこんな初歩的なミスをするなんて少なくとも俺が見たライブ配信では一度もない。
コメントもざわつきはじめていた。
そこに突如として、絶叫が響き渡る。
「こ、こんなのぉぉ!! 勝てっこねえょぉぉ!!」
聞き覚えのある若い男の声だった。
『雷鳴の狂戦士』……なのか?
同時に、映像も流れ出す。
配信用のドローンが地面に落ちているのか、下からのアングルで、「ダンジョンの支配者たち」と一匹の巨大なモンスターが相対している姿が映し出される。
うん? あれって昨日俺が気絶させた奴じゃないか……。
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