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プロローグ
-01- オッサン、超人気配信者のS級冒険者の美女と出会う
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それにしても……俺の動画配信はまったくバズらない。
毎日欠かささずダンジョンの中に潜り、その模様を長時間配信しているのに、視聴者はほとんどいない。
「いいね」もない。
当然コメントもほぼない。
まるで、俺は存在していない「空気」のようだ。
こう過疎が続くとさすがの俺も考える。
「なぜだろう?」と……。
まだ誰も踏破したことがないダンジョンの最下層に行って、その模様をくまなく配信したのに……。
ついでに、ダンジョン最下層に生息しているこの世界ではまた未発見とされているモンスターを気絶させて、その模様をこれまたじっくりと時間をかけて配信したのに……。
それなのに、誰も俺の配信を見てくれない。
いや……まあ俺の見た目が冴えない40代のオッサンというのはあるだろうが、まさかここまで厳しいとはな……。
俺は深くため息をつく。
配信を始めた当初は、最初は苦労してもその内、段々と再生数は増えていくものと思っていた。
しかし、現実は厳しい。
俺の配信はまったくバズらない。
やっぱりアレか……。
モンスターとのバトルがないからかもしれないな……。
だが、この世界のダンジョンに出現するモンスターのレベルだと俺を見た瞬間にすごい勢いで逃げちゃうしな……。
まあ……追いかけるのは全然苦労せずに出来るけど、モンスターだって生き物だ。
危害を加える意思がなく、逃げているモンスターを追いかけ回して、叩くのはなあ……。
しかも、それを晒して配信するのはどうにも心が痛む。
何より前の世界で誓った不殺の約束もある。
今の俺の力だと、この世界のモンスターを殺めずに気絶させるのってすごい大変なんだよな……。
ダンジョンの最下層のモンスター相手で、やっとギリギリでなんとか殺めずに気絶させることができたが……。
それにしても……あのモンスターには悪いことしたな……。
すごい勢いで逃げ回っているところを無理やり追いかけて気絶させて、配信したのに、動画は再生回数100行かなかったし……。
しかし、このままじゃあ……ダメだな。
動画配信の収益もゼロだし、そろそろ俺の貯蓄もそこをついてしまう。
……俺も異世界では英雄と言われていたのにな……
こんな情けないところを異世界の仲間たちが見たらさぞかしがっかりするだろうな。
俺は25年前にいわゆる異世界に転移して、そこで魔族やら魔王やらとずっと闘ってきた。
途中何度も死にかけたり、随分と酷い目にもあってはきたが、仲間にも恵まれてついに異世界での役割を終えることができた。
——まあ……説明すると長くなりすぎるので省くが、いわゆる『魔王』みたいなもんを倒すことができ、異世界の平和を取り戻すことができた。
異世界転移ってのは禁忌の大魔法ゆえに一方通行が原則らしい。
が……あちらの人々が、「英雄」の俺のためにと……大分ムチャをしてくれて、もう一度その禁忌の大魔法を使ってくれた。
そういう訳で俺は、25年ぶりにこの世界に帰還したのだ。
正直なことを言えば、あまりこの世界に戻りたいとは思っていなかった。
こっちには家族もいないし、俺は転移する前は単なる社畜リーマンであまり良い思い出はこの世界にはない。
が……まあ俺も40代になり、歳を取ったのだろう。
いわゆる故郷を懐かしむという感情が強くなった。
そういう訳で散々悩んだ挙げ句にこの世界に戻ることを決意したのである。
そして、戻ってきてどうやって生計を立てるかと考えていたところに、ふとニュースを見ると、なんとこの世界でも25年前に「ダンジョン」が出現しているというじゃないか。
しかも、そのダンジョンを糧にしている人間たち——冒険者——がいる……と知った。
まさに天職だと思い、仕事を見つけもせずに一目散にダンジョンに飛び込んだはいいが……。
まあ……色々と誤算があった。
まさかこの国に出現したダンジョンがそろいもそろってここまで低難易度のものだとは思わなかった。
だから……という訳なのだろうか。
この世界の冒険者は、ダンジョン攻略そっちのけで、「動画配信」をやっている。
まあ……こんなに低難易度のダンジョンでは、取れる素材も出現するモンスターのドロップ品も二束三文だろうしな……。
という訳で俺も仕方がなく「動画配信」をはじめたはいいが……まあ……今話した通りの過疎っぷりである。
俺は、もう一度今日の動画の再生数を確認し、またしても深いため息をつく。
まあ……いつまでも愚痴っていても仕方がない。
そろそろアパートに戻って動画編集でもするか……。
そんなことを思いながら、ふとダンジョンの上層部との連結階段を見ると、ちょうど階段を降りてくるパーティーと出くわした。
俺はそのパーティーを見て驚きのあまりに、その場に立ち尽くしてしまった。
というのもそのパーティーは誰もが知る超有名な配信者、「ダンジョンの支配者たち」だったからだ。
「ダンジョンの支配者たち」は魔法剣士、戦士、ヒーラー、の三人パーティーで、特に魔法剣士の女性が超人気で、登録者数はなんと1000万を超えている。
パーティーの面々は全員がS級冒険者——この世界にも冒険者の等級はあり、この世界ではまだ駆け出しの俺の等級はF級である——である。
まさに今の俺にとっては雲の上の存在であり、同時に目指すべき憧れの対象である。
「え!? こんな最下層に人!? あなた!? こんなところでひとりでいったい何をしているんですか!?」
スマホ越しでしか見たことがない超有名配信者の「流麗の剣姫」こと二条院美月が大きな目を見開いて驚きの顔を浮かべている。
―――――――――――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
しばらくは毎日二回(8時、17時)更新します!
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「いいね」もない。
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こう過疎が続くとさすがの俺も考える。
「なぜだろう?」と……。
まだ誰も踏破したことがないダンジョンの最下層に行って、その模様をくまなく配信したのに……。
ついでに、ダンジョン最下層に生息しているこの世界ではまた未発見とされているモンスターを気絶させて、その模様をこれまたじっくりと時間をかけて配信したのに……。
それなのに、誰も俺の配信を見てくれない。
いや……まあ俺の見た目が冴えない40代のオッサンというのはあるだろうが、まさかここまで厳しいとはな……。
俺は深くため息をつく。
配信を始めた当初は、最初は苦労してもその内、段々と再生数は増えていくものと思っていた。
しかし、現実は厳しい。
俺の配信はまったくバズらない。
やっぱりアレか……。
モンスターとのバトルがないからかもしれないな……。
だが、この世界のダンジョンに出現するモンスターのレベルだと俺を見た瞬間にすごい勢いで逃げちゃうしな……。
まあ……追いかけるのは全然苦労せずに出来るけど、モンスターだって生き物だ。
危害を加える意思がなく、逃げているモンスターを追いかけ回して、叩くのはなあ……。
しかも、それを晒して配信するのはどうにも心が痛む。
何より前の世界で誓った不殺の約束もある。
今の俺の力だと、この世界のモンスターを殺めずに気絶させるのってすごい大変なんだよな……。
ダンジョンの最下層のモンスター相手で、やっとギリギリでなんとか殺めずに気絶させることができたが……。
それにしても……あのモンスターには悪いことしたな……。
すごい勢いで逃げ回っているところを無理やり追いかけて気絶させて、配信したのに、動画は再生回数100行かなかったし……。
しかし、このままじゃあ……ダメだな。
動画配信の収益もゼロだし、そろそろ俺の貯蓄もそこをついてしまう。
……俺も異世界では英雄と言われていたのにな……
こんな情けないところを異世界の仲間たちが見たらさぞかしがっかりするだろうな。
俺は25年前にいわゆる異世界に転移して、そこで魔族やら魔王やらとずっと闘ってきた。
途中何度も死にかけたり、随分と酷い目にもあってはきたが、仲間にも恵まれてついに異世界での役割を終えることができた。
——まあ……説明すると長くなりすぎるので省くが、いわゆる『魔王』みたいなもんを倒すことができ、異世界の平和を取り戻すことができた。
異世界転移ってのは禁忌の大魔法ゆえに一方通行が原則らしい。
が……あちらの人々が、「英雄」の俺のためにと……大分ムチャをしてくれて、もう一度その禁忌の大魔法を使ってくれた。
そういう訳で俺は、25年ぶりにこの世界に帰還したのだ。
正直なことを言えば、あまりこの世界に戻りたいとは思っていなかった。
こっちには家族もいないし、俺は転移する前は単なる社畜リーマンであまり良い思い出はこの世界にはない。
が……まあ俺も40代になり、歳を取ったのだろう。
いわゆる故郷を懐かしむという感情が強くなった。
そういう訳で散々悩んだ挙げ句にこの世界に戻ることを決意したのである。
そして、戻ってきてどうやって生計を立てるかと考えていたところに、ふとニュースを見ると、なんとこの世界でも25年前に「ダンジョン」が出現しているというじゃないか。
しかも、そのダンジョンを糧にしている人間たち——冒険者——がいる……と知った。
まさに天職だと思い、仕事を見つけもせずに一目散にダンジョンに飛び込んだはいいが……。
まあ……色々と誤算があった。
まさかこの国に出現したダンジョンがそろいもそろってここまで低難易度のものだとは思わなかった。
だから……という訳なのだろうか。
この世界の冒険者は、ダンジョン攻略そっちのけで、「動画配信」をやっている。
まあ……こんなに低難易度のダンジョンでは、取れる素材も出現するモンスターのドロップ品も二束三文だろうしな……。
という訳で俺も仕方がなく「動画配信」をはじめたはいいが……まあ……今話した通りの過疎っぷりである。
俺は、もう一度今日の動画の再生数を確認し、またしても深いため息をつく。
まあ……いつまでも愚痴っていても仕方がない。
そろそろアパートに戻って動画編集でもするか……。
そんなことを思いながら、ふとダンジョンの上層部との連結階段を見ると、ちょうど階段を降りてくるパーティーと出くわした。
俺はそのパーティーを見て驚きのあまりに、その場に立ち尽くしてしまった。
というのもそのパーティーは誰もが知る超有名な配信者、「ダンジョンの支配者たち」だったからだ。
「ダンジョンの支配者たち」は魔法剣士、戦士、ヒーラー、の三人パーティーで、特に魔法剣士の女性が超人気で、登録者数はなんと1000万を超えている。
パーティーの面々は全員がS級冒険者——この世界にも冒険者の等級はあり、この世界ではまだ駆け出しの俺の等級はF級である——である。
まさに今の俺にとっては雲の上の存在であり、同時に目指すべき憧れの対象である。
「え!? こんな最下層に人!? あなた!? こんなところでひとりでいったい何をしているんですか!?」
スマホ越しでしか見たことがない超有名配信者の「流麗の剣姫」こと二条院美月が大きな目を見開いて驚きの顔を浮かべている。
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