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2話

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 僕の問いに、困惑した様子で答えてくる。

「えっと…?……ふち駅の近くだけど…」

「…………ふちえき…」
そう言われて、周りを見てみると確かに電柱に表示されている地域名に『縁市』と書かれているのを見つける。

 聞いたこともない名前だった。
もしかしたら、違う県にはあったりするかもしれないが………そんな遠くまで歩いた覚えはない。

どうやって、こんな知らない場所に来てしまったのか…………。


「…………なんなの?」

 僕が混乱した姿に戸惑う彼女。
知り合いでもない赤の他人だ…………、だけど知り合いよりかはマシだろう。

「………色々……聞かせてください」

 今起きている出来事で、死にたいという考えが消え……とにかくこの場所について知らなければという考えが頭を満たした。

もし、もしも…………ここが僕の知っている場所じゃなくて……知ってる人が来れない場所なのだとしたら……っ。

 
 この際、夢でもいいから僕を……僕が嫌う人達に会わなくて済むようになりたい。

彼女の言う希望とは、違ってはいるが…少し、ほんの少しだけ期待する自分が居た。




……………………………。

























「はぁ………ちょっと面倒な子拾って来ちゃった…」

 私こと、朝日鳴海あさひ なるみは今少し後悔をしていた。

下校後、友達と遊びに行ったその帰り……暗くなった街中でおかしな様子な人を発見した。
あろうことか、その何処かの学生服を着た人は橋に足をかけて飛び込もうとした。

放って置くことも出来ず、かと言って寒い中外で話をする事も嫌だった私は……その子を連れてネカフェへと来ていた。


 どうやら、もう自殺をしようという考えはない様子で、ここに着いた途端にパソコンで何かを調べ始めた。

「……あの子が聞いてくること、良くわからなかったからな。」

 誰もが知っているような事を聞いてきたり、今度は聞いたこともない話題について聞いてきたり………。
とにかく、なんて答えたら良いのかわからなかった。


「……………」

 ドリンクバーから二人分の飲み物を汲んで、自分達の個室へと戻ってくる。

まだ調べ物をしているみたいだ。



「……………ねぇ、飲み物」

「…っ………ありがとう……ゴザイマス…」

 私に気がついて無かったのか、は身体を震わせてゆっくりと振り向くと、恐る恐るといった感じで差し出したコップを手に取る。

「……………」

 一口飲んで、また調べ物を始める。

「………なんでだろ」

「っ………」

考えが口に出てしまった。

こうも、私に怯えたようにされると少し申し訳なくなってしまうから止めてほしい。

 いや、そんなことよりも。


 どうして、どうして私は彼女の姿にこんなにも夢中になってしまうのか……。
肉が少なく、あまりご飯を食べてないように見える体型に、髪で目が隠れたあの顔にも………自然と目が行ってしまう。


「………っ……」

 私の本能が、彼女と一緒にいたいと言ってる………。もしかすると、ここまで彼女を助けようとしているのは無意識にそう感じていたからかも………。



……………。

「………」

「っ!な、なに?」

びっくりした……。

 自分の考えに没頭していると、いつの間にか彼女がこっちを見ていた。
初めて合ったその瞳には、光を一切映してないように見えた。

「…………いえ」







 何だったんだろう……。




































数時間後………。



「………ん…?あ、寝ちゃってた…」

 何をする事もなく、遊んだあとの疲れでいつの間にか寝てしまっていた。

「……よかった、あんま経ってない」

 何時間も寝ていたら利用料金が高くなってしまう所だった。
あの子はどうしてるかな…。

 隣の個室にいるはずの彼女、キーボードを打つ音がなくなっているということは、私と同じで寝ちゃったのかな…?



「ねぇ、おきてる?」

コンコン。

 周りに聞こえないよう音を抑えて聞いた。


………………………………。


「……………?」

 本格的に眠ってしまってるのか、反応がない。

「開けるよ?」

キィ………


ゆっくりと扉を開ける。

そこには、突っ伏して眠る彼女の姿が……………

「………あれ」

無かった。

























「はぁっ、はぁっ……」

僕は、走っていた。

 数時間、この場所の………いや、この『世界』の事を調べてかった事。

 今まで死にたい想いを押し殺して生きてきた場所とは異なる場所。
ここはそことは違う『世界』だった。

 簡単に言うと、ここは『男女比がおかしい世界』。
数万人に一人といった確率でしか『男』が産まれない。

この世界に、僕は存在しない人物で…僕を知る人間は居ない。
そうしると、嬉しさが溢れてきた。




「…………っ」

それと同時に、これからどうしよう……という不安と焦りが出てきていた。

 身分も、この世界のお金も持っていない自分には、どう生きていけばいいのか分からない。
これがもし、普通の世界ならばなんとかできたかもしれなかったが………この世界で『男』の僕はかなり不味い存在。






 まず、僕は世間に知られてはいけない存在だということ。

知られれば、政府が『保護』という名の『誘拐』をしにやって来る。
そして、『奴隷』のように強い身分を持つ女性に扱われてしまうのだ。

 そのことは、色々なネットニュースに載せられていて………偉い身分の人に仕えていたという人物の不満の声や、その様な場面を目撃したという人たちの声が上がっている………らしい。

全ては、ネットニュースで書かれていた本当が嘘か分からないものだったが……、街中に貼られた批判の声や、もしそんな世界ならばそうなってしまうのではないか……という考えから、そうではない。と決めつける事は出来なかった。


 そうなれば、僕は存在を隠して生きていった方が良いだろう。


だが、どうやって?


「…………っ」

身分がなければアルバイトも出来ないだろう。
そもそも、存在を隠しながらそんな事をするなんて、矛盾する行動だ。




カナエは、足を止めて俯きながら考える。



……………………やっぱり、死ぬしか無いのだろうか。


 今までの人生から逃れられたと思っていたのに、希望は去って、結局は死ぬ以外に選択肢がないのかと絶望する。





そんなとき、一人の女の子に声を掛けられた。







「あの…」


 突然背後から掛けられた声に、身体を震わせる。

それは、人に声を掛けられた恐怖だけではなく………この世界の事を知って、男である危険性を知ったあとから来る恐怖もあっての震えだった。


「……っ」

「ま、待ってください!」

 逃げようと走り出したその腕をガッシリと身体で掴まれてしまった。

触れる感覚的に、その声の人物が自分よりも少し小柄な人だと分かる。


「………あ…の///……わたし、知ってるんです。その…///…おばあちゃんが隠し持ってた本で…見て…///」

「っ!!」

まずい。
そう感じて、逃げようとしていた身体を振り向かせて彼女の口を塞ごうと手を伸ばした。



「……男の…人…………ですよね?…///」


 知られしまった。


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