俺が人間になれるまで

しの

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過呼吸(黒川目線)

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今日は朝から葛木の様子がおかしい。いつもなら登校してから、昨日あったことを山田や伊藤に真っ先に話に行くのに、今日は静かに席に座っている。あと、クラスメイトからの挨拶にも反応が鈍い。今日は体調が悪いのか?葛木は俺のことを少し怖いと思っている節があるから、あまり話しかけにくいがやばそうならそれとなく聞いてみようと思いつつ様子を見ていた。

昼になった。いつも通り葛木の席に向かう、他の2人が楽しそうに話している中、明らかに葛木だけが苦しそうな顔をしていた。俺は話し下手だから積極的に会話に参加していないのはいつものことだが、いつも明るく振る舞う葛木が話に入ってこないのはおかしい。2人も少し疑問に思っているようだ。
「陽太は勉強どう?」
山田がそれとなく話を振る。
「俺か~。勉強、ね、勉強。」
涙声でそう答える葛木。
「大丈夫?」
思わずそう尋ねるが、聞くが早いか
「ごめん!ちょっとトイレ行ってくる!」と言うと教室を出て行ってしまった。
「あんなとこ見たことないから、心配だね。黒川見に行ってくれるか?」
呆然としてた俺に伊藤が声をかけてくれた。
きっと、山田や伊藤は普段からよく話すから逆に俺の方がいいと思ったんだろう。

「葛木、いる?」
トイレに向かうと、荒い呼吸だけが聞こえる。
「葛木?葛木!!大丈夫?鍵開けられる?」
返事がない。呼吸は少し落ち着いてきたように感じるが、逆に恐怖を感じる。
「葛木?」
緊急事態だからと心の中で言い訳をして壁からよじ登り個室の中に入る。と、苦しそうな顔をして葛木が倒れていた。
左手で握り込んでいた手首は爪の痕で真っ赤になっている。跡をよく見ると、さっき付けられたであろう赤い傷から茶色くなっている傷まであった。
いつも明るく振る舞う葛木だが、かなり追い詰められている様子が感じられる。親密ではないにしろ、一年から一緒なのに気づけなかった自分に腹が立つ。
もう少し、身体の状態を見たかったがあまり遅くなると授業にも影響すると思い、葛木を背負って個室から出た。
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