俺が人間になれるまで

保健室

気がつくと横になっていた。清潔感のある白のシーツに独特な柄の天井。保健室だろう。
「葛木くん、起きたかな。」
俺がごそごそ動く音で気づいたのか、保健室の先生が様子を見にきた。少しふくよかな、長く勤めてるらしい先生。
「ありがとうございます。大丈夫です。迷惑かけてすみません。」
「あらあら～、貧血かな？」
黒川は過呼吸だったことを伝えてないらしい。
優しい声色、俺を気遣ってくれてる雰囲気は伝わるし、きっと同じような生徒をたくさん見てきたんだろうなと言うことがわかる。
「迷惑かけてすみません。大丈夫です。」
なんとか笑顔で答えられた。ほんとはもう無理って縋りつきたい、という心の声を無視して差し当たりない回答をする。まだ耐えられる、大丈夫。
「そういう時期だからね、寝不足とかもあるのかな～。なにかあったら先生とかお友達とかに相談しなね。
そしたら、ちょっと休んだらまた戻ろっか。お友達も待ってくれてるしね。」
お友達…?そう思うと机の向こうに黒川が座っていた。
「あの子がここまで運んできてくれたのよ～～。葛木くん、いいお友達をもったね。」
いつもの無表情に少し心配を混ぜた顔の黒川。他人にとんでもない迷惑をかけてしまった。てか、涙でぐちゃぐちゃの顔も、固まった手も全部見られたってこと？まず俺鍵かけてたのにどうやって入ったんだ？？？
頭にはクエスチョンマークばかりの俺。
「葛木、放課後空いてるか？」