14 / 26
第十三話
しおりを挟む
「いらっしゃい」
「お邪魔します、看板を見て気になって来ました」
怪しげな店に入ると中にはマントと帽子を身に着けた、ミステリアスな風貌の老婆がいた
座るように促された俺達は手前に用意された二つの椅子に座る
「お若いねぇ、カップルかい?」
「違います。私と先輩は結婚を前提に交際をしているカップルです。普通のカップルと一緒にするなんて言語道断です」
「そ、そうかい……随分と情熱的な子なんだねぇ」
「まあ、ははっ、……白、一々細かい所まで言わなくていいから」
「いいえ……この事実は絶対なんですから、勘違いされたら困ります。しっかり訂正しないと」
うわー、白のめんどくさい所が出てきたよ
白って俺が絡むことに対しては良くも悪くも、一切妥協しないんだよなぁ……
でも、こんな時に必ず成功する対処法がある
それは――
「んっ、……頭、撫でてくれてる……あっ、……ふふっ、先輩の手……気持ちいい……んっ、……んぁ……、幸せぇ……」
「そのことは俺たち二人が認識していればいいだろ?」
「あっ、あっ、そこっ、……い、いいっ、……もっと、してぇ……」
「おい、聞いているのか?」
「は、はいぃ……聞いていますよ……」
「そうか」
「あ……、もう終わっちゃった」
「随分見せつけてくれるねぇ……そんなに仲がいいなら、かなり長い間付き合っているのかい?」
「いえ、先輩と付き合ったのは最近ですよ……愛の大きさは時間で決まるものではないのです」
「いいことを言うねぇ……それで、どっちから告白したんだい?」
「私です」
「おや、お嬢さんから告白したのかい……坊やは見た目に寄らず、奥手なんだねぇ」
「そうなんです!いまだに私、先輩から体を求められたことないんですから!」
なんか、このままいったら話が変な方に脱線しそうだな
「……話はこれくらいにして、早速占ってもらえませんか?」
「いいよ、じゃあまず二人の年齢と誕生日を教えてごらん」
「年は十六歳で誕生日は九月三日です」
「私は十五歳で誕生日は四月二十日です」
へー、白の誕生日って四月二十日だったんだ……四月二十日――って、
「白って今日が誕生日だったのか!?」
「ええ、まあ」
「すまん、俺、誕生日のこと知らずに、何も用意出来てなくて……」
「別にいいですよ、誕生日を祝ってもらえた経験なんてほとんどありませんから」
だったら尚更、俺が誕生日を祝うことの重要性と楽しさを白に伝えるべきだったんだろ……
「プレゼントは用意出来ていないが、その分も今日はとことん楽しませてやるから……あと、何か気に入った物があったらプレゼントさせてくれ」
「そもそも言ってなかった私に問題があるのに……もう、そんなに気にするなんて……先輩は、どれだけ私のことが好きなんですか?」
「ああ、一番好きに決まっているだろ」
「も、もう……先輩ったら……」
「言わせておいて照れるなよ」
「だ、だってぇ……」
「こほんっ、……それでは、占いを始めるよ」
「「お願いします」」
老婆は手前の水晶を撫でまわすようにして占っている
そして、しばらくしてから口を開き始めた
「二人の縁は……互いを理解し合える相性のいい関係……」
「やっぱり先輩と私は相性抜群でしたねっ、」
「ああ……みたいだな」
「他にも、自然体でいられる……、本当に家族のような関係が築けるとも出ているね、あとは……恋愛の延長線上に結婚があると捉えている。交友関係はどちらかというと狭く、大切な人と深い関係を構築しようとする二人は、遊びの恋愛として付き合う事はないから、不安を感じることはない……」
「凄い……っ、凄いですよ先輩っ、この人……いや、この先生の言うことは正しいですよ!」
「そうか?さっきの会話を参考にして、それっぽいことを言っているだけにも思えるが……」
「結婚してからも、愛する伴侶を一途に想い続け、温かな家庭をつくる事ができる……だけど……」
「何ですか?先生」
「お嬢さん、貴女の後ろに巨大な影が迫っている……」
「巨大な……影?」
「そう、とても大きく根本的な……お嬢さんと関係の深い、逃れられない闇……」
「私と関係の深い根本的な闇……」
「でも……心配は要らない、そこの坊やが必ず貴女を守ってくれるのだから……」
白に何か大きな危険が迫っていて、そこから白を助けるのは俺……
半信半疑な話だが一応警戒しておくか
「先輩……」
「不安がるなよ、例えその話が本当でも俺が白を守るから大丈夫だ」
「頼りにしてます……先輩っ、」
「ああ、任せろ」
「占いはこれで終わりだけど……お二人さん、パワーアイテムに興味あるかい?こういうのなんだけど……」
老婆はテーブルの上に石や数珠などの如何にもな商品を置いていく
だが正直、こういう商品を買おうとは全く思わない
「こういうのはいいです。お代だけ払ったら出ていくんで……」
「……あっ、先輩、ちょっと待って下さい……」
「何だ?」
「さっき、誕生日だから欲しいものがあったら買ってくれるって、言いましたよね」
「確かに言ったが……まさか、この石が欲しいのか?」
「違いますよっ、……これです」
「お嬢さん見る目があるねぇ……それは、縁結びの指輪だよ」
「……指輪?……しかも二個も、これって……ぺ、ペアリング……」
「先輩とお揃いのものが欲しくて……ダメ……ですか?」
「ダメじゃない……これ、二つ買います」
「かしこまりぃ、指輪二つと診断料を合わせて……」
支払いを済ませると、白が受け取った指輪をもってこちらに体を向けて指を差し出してきた
「指輪を……はめていただけますか?」
「いいぞ」
「……先輩っ、ありがとうございます!」
「喜んでくれてよかったよ」
「嬉しいなんて言葉じゃ表せられない位に、嬉しくて……まだ、初デートは始まったばかりなのに……もう、幸せが一杯で……溢れちゃいそうです……先輩っ、大好きです!」
「知ってるよ……」
指輪を眺めた白は優しく、そして静かに、幸福を嚙みしめるかのようにして微笑んだ
この先、俺はこの時を何度も思い出すことになる
恐らく、この時が最後だったからだ……俺が白に――――することができた最後のチャンスがあったのは――
「お邪魔します、看板を見て気になって来ました」
怪しげな店に入ると中にはマントと帽子を身に着けた、ミステリアスな風貌の老婆がいた
座るように促された俺達は手前に用意された二つの椅子に座る
「お若いねぇ、カップルかい?」
「違います。私と先輩は結婚を前提に交際をしているカップルです。普通のカップルと一緒にするなんて言語道断です」
「そ、そうかい……随分と情熱的な子なんだねぇ」
「まあ、ははっ、……白、一々細かい所まで言わなくていいから」
「いいえ……この事実は絶対なんですから、勘違いされたら困ります。しっかり訂正しないと」
うわー、白のめんどくさい所が出てきたよ
白って俺が絡むことに対しては良くも悪くも、一切妥協しないんだよなぁ……
でも、こんな時に必ず成功する対処法がある
それは――
「んっ、……頭、撫でてくれてる……あっ、……ふふっ、先輩の手……気持ちいい……んっ、……んぁ……、幸せぇ……」
「そのことは俺たち二人が認識していればいいだろ?」
「あっ、あっ、そこっ、……い、いいっ、……もっと、してぇ……」
「おい、聞いているのか?」
「は、はいぃ……聞いていますよ……」
「そうか」
「あ……、もう終わっちゃった」
「随分見せつけてくれるねぇ……そんなに仲がいいなら、かなり長い間付き合っているのかい?」
「いえ、先輩と付き合ったのは最近ですよ……愛の大きさは時間で決まるものではないのです」
「いいことを言うねぇ……それで、どっちから告白したんだい?」
「私です」
「おや、お嬢さんから告白したのかい……坊やは見た目に寄らず、奥手なんだねぇ」
「そうなんです!いまだに私、先輩から体を求められたことないんですから!」
なんか、このままいったら話が変な方に脱線しそうだな
「……話はこれくらいにして、早速占ってもらえませんか?」
「いいよ、じゃあまず二人の年齢と誕生日を教えてごらん」
「年は十六歳で誕生日は九月三日です」
「私は十五歳で誕生日は四月二十日です」
へー、白の誕生日って四月二十日だったんだ……四月二十日――って、
「白って今日が誕生日だったのか!?」
「ええ、まあ」
「すまん、俺、誕生日のこと知らずに、何も用意出来てなくて……」
「別にいいですよ、誕生日を祝ってもらえた経験なんてほとんどありませんから」
だったら尚更、俺が誕生日を祝うことの重要性と楽しさを白に伝えるべきだったんだろ……
「プレゼントは用意出来ていないが、その分も今日はとことん楽しませてやるから……あと、何か気に入った物があったらプレゼントさせてくれ」
「そもそも言ってなかった私に問題があるのに……もう、そんなに気にするなんて……先輩は、どれだけ私のことが好きなんですか?」
「ああ、一番好きに決まっているだろ」
「も、もう……先輩ったら……」
「言わせておいて照れるなよ」
「だ、だってぇ……」
「こほんっ、……それでは、占いを始めるよ」
「「お願いします」」
老婆は手前の水晶を撫でまわすようにして占っている
そして、しばらくしてから口を開き始めた
「二人の縁は……互いを理解し合える相性のいい関係……」
「やっぱり先輩と私は相性抜群でしたねっ、」
「ああ……みたいだな」
「他にも、自然体でいられる……、本当に家族のような関係が築けるとも出ているね、あとは……恋愛の延長線上に結婚があると捉えている。交友関係はどちらかというと狭く、大切な人と深い関係を構築しようとする二人は、遊びの恋愛として付き合う事はないから、不安を感じることはない……」
「凄い……っ、凄いですよ先輩っ、この人……いや、この先生の言うことは正しいですよ!」
「そうか?さっきの会話を参考にして、それっぽいことを言っているだけにも思えるが……」
「結婚してからも、愛する伴侶を一途に想い続け、温かな家庭をつくる事ができる……だけど……」
「何ですか?先生」
「お嬢さん、貴女の後ろに巨大な影が迫っている……」
「巨大な……影?」
「そう、とても大きく根本的な……お嬢さんと関係の深い、逃れられない闇……」
「私と関係の深い根本的な闇……」
「でも……心配は要らない、そこの坊やが必ず貴女を守ってくれるのだから……」
白に何か大きな危険が迫っていて、そこから白を助けるのは俺……
半信半疑な話だが一応警戒しておくか
「先輩……」
「不安がるなよ、例えその話が本当でも俺が白を守るから大丈夫だ」
「頼りにしてます……先輩っ、」
「ああ、任せろ」
「占いはこれで終わりだけど……お二人さん、パワーアイテムに興味あるかい?こういうのなんだけど……」
老婆はテーブルの上に石や数珠などの如何にもな商品を置いていく
だが正直、こういう商品を買おうとは全く思わない
「こういうのはいいです。お代だけ払ったら出ていくんで……」
「……あっ、先輩、ちょっと待って下さい……」
「何だ?」
「さっき、誕生日だから欲しいものがあったら買ってくれるって、言いましたよね」
「確かに言ったが……まさか、この石が欲しいのか?」
「違いますよっ、……これです」
「お嬢さん見る目があるねぇ……それは、縁結びの指輪だよ」
「……指輪?……しかも二個も、これって……ぺ、ペアリング……」
「先輩とお揃いのものが欲しくて……ダメ……ですか?」
「ダメじゃない……これ、二つ買います」
「かしこまりぃ、指輪二つと診断料を合わせて……」
支払いを済ませると、白が受け取った指輪をもってこちらに体を向けて指を差し出してきた
「指輪を……はめていただけますか?」
「いいぞ」
「……先輩っ、ありがとうございます!」
「喜んでくれてよかったよ」
「嬉しいなんて言葉じゃ表せられない位に、嬉しくて……まだ、初デートは始まったばかりなのに……もう、幸せが一杯で……溢れちゃいそうです……先輩っ、大好きです!」
「知ってるよ……」
指輪を眺めた白は優しく、そして静かに、幸福を嚙みしめるかのようにして微笑んだ
この先、俺はこの時を何度も思い出すことになる
恐らく、この時が最後だったからだ……俺が白に――――することができた最後のチャンスがあったのは――
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです
.
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる