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第十話
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翌朝――白の部屋
「ケホッ……コホッ……せ、んぱい……」
「おう、来たぞ」
俺は一度家に帰ってから再び看病に来た
しかし、目算の通りとでもいうべきか……一日たっても白の容態は一向に回復していない
「今日も来ていただいて……すみません」
「気にするな」
「けほっ……小学生の時に風邪をひいて休んだ時はすぐに治ったんですけど……」
「安心しろ、きっと良くなる……冷却シートを変えるぞ」
「はい……お願いします」
俺は白の額の冷却シートを取り替える
あんなに冷えていたシートは熱を吸っていて生温かった
「ん、……冷たくて、気持ちいい……です」
「それはよかった」
「何から何まで、先輩に頼ってばかりですみません」
「こんな時まで何かされる方が迷惑だ」
「でも……」
「でもじゃない、やれる時にやれることをしてくれればいい……だからもし、俺が体調を崩したときは」
「はい!私が必ず元気にしてみせます……!」
「それは頼もしいな、いつでも安心して風邪をひける」
「うふふっ、安心して風邪をひけるって……ふふっ、何ですか、もう……」
ほんの少し声を出して笑った白は汗で頬が紅潮していてエロ可愛かった
「ストレスや疲労がたまっていたんだろう、この機会に思いっきり休め」
「先輩はどうしてそこまで私に優しくしてくれるんですか?」
「好きだからな」
「……私のことをいつ好きになってくれたんですか?」
「いつ……と言われると難しいな、気がついたら白のことが好きになっていて、自然と頭に浮かぶようになっていた」
「私も大体同じです……先輩のことが一日中頭から離れないないです」
その状態は大体同じというんだろうか……
「正直に伝えたいことがあるんです……先輩、」
「何だ?」
「私は私が本当に先輩のことが好きなのかわからないんです」
「……どういうことだ?」
「初めは私を唯一、暴力から守ってくれた人だから……私だけを向いてくれるようにする為に強引に彼女になって、それから恋人らしい事もしました……」
「そうだな」
「でも、この気持ちは好きっていうよりも暴力から守ってくれる先輩に依存しているだけなのかなって思うんです……」
「別に、好きって気持ちと依存って気持ちは両立するんじゃないか?」
「そうだとしても、私が持っているこの感情は先輩が私に向ける感情とは何か違う気がするんです……」
「それを言ったら、俺だって白がいない生活なんて考えられない……依存してんのも好き同士なのも似てると思うが」
「そう……ですね」
その後も看病は続いたが夜になったので俺は一度家に帰った
そして――
◆◆
――翌朝
「……ん?」
何者かに超近距離から見つめられ続けているような感覚を肌で感じた俺は目覚めた
「って、白!?」
「すみません先輩、少しでも先輩のお顔を眺めていたくて、早く来すぎてしまいました」
「それはいいが、熱は大丈夫なのか?」
「先輩のおかげでもうすっかり良くなりました!、ですが……」
「何だ?」
「先輩の寝顔に夢中になりすぎて、まだ朝食が用意できていません……」
「何だと?」
「すみません先輩っ、今すぐにお作りしま」
「病み上がりが無理するな、今日は作らなくていい」
「だ、駄目でしょうか?」
「朝からいきなりいつも通りに動いて、またぶり返したりしたらどうするんだ」
「もう、心配していただかなくても大丈夫だとは思いますが……」
「大丈夫でもなければ丈夫でもねぇ、今日は俺が作る」
「ですが、流石に三日続けて先輩に頼り続けるのは」
「出来上がるまでそこのベットで寝ていろ」
聞き分けの悪い白の制止を振り切って部屋を出た俺は朝食の準備に取り掛かった
◆◆
――バン、と豪快に扉を閉めた彼は朝食を用意すると言って部屋から出ていった
私がやると言ったのに、病み上がりに任せるわけにはいかないと聞き入れてはくれなかった
「はあっ、……はぁ、はぁ……」
彼が部屋から出て行ったことで、いよいよ抑えきれなくなった鼓動が騒ぎ始めて呼吸も一気に荒くなる
熱い、熱い、……もう、風邪による熱はないはずなのに熱くて熱くて仕方がない
「……はっ、……はぁ、はあっ、はぁ……なに……これ、知らない……知らない知らない……!!」
私は知らない、未だかつて感じたことのないこの感情にどう向き合えばいいのかを
私は知らない、心臓からあふれ出すこの止めることのできない熱く大きな気持ちを
熱い、熱い、どうすればいいんだろう
幸せすぎて死んでしまいそうだ
口の中が乾いていくのを感じる……
でも、私の体の一部はそれに反比例して真逆の状態になっていく……
「はぁ、はぁ、……ああ、う、ううぅ、……はあっ、はぁ、」
胸の中に抱いた衝動と新たに産まれた感情が衝突する――
そして
重なり合って
混ざり合って
誰よりも優しい彼のことを求め続ける
苦しくて寂しい
だけど、どこか暖かくて幸せな感情
これが――
「ケホッ……コホッ……せ、んぱい……」
「おう、来たぞ」
俺は一度家に帰ってから再び看病に来た
しかし、目算の通りとでもいうべきか……一日たっても白の容態は一向に回復していない
「今日も来ていただいて……すみません」
「気にするな」
「けほっ……小学生の時に風邪をひいて休んだ時はすぐに治ったんですけど……」
「安心しろ、きっと良くなる……冷却シートを変えるぞ」
「はい……お願いします」
俺は白の額の冷却シートを取り替える
あんなに冷えていたシートは熱を吸っていて生温かった
「ん、……冷たくて、気持ちいい……です」
「それはよかった」
「何から何まで、先輩に頼ってばかりですみません」
「こんな時まで何かされる方が迷惑だ」
「でも……」
「でもじゃない、やれる時にやれることをしてくれればいい……だからもし、俺が体調を崩したときは」
「はい!私が必ず元気にしてみせます……!」
「それは頼もしいな、いつでも安心して風邪をひける」
「うふふっ、安心して風邪をひけるって……ふふっ、何ですか、もう……」
ほんの少し声を出して笑った白は汗で頬が紅潮していてエロ可愛かった
「ストレスや疲労がたまっていたんだろう、この機会に思いっきり休め」
「先輩はどうしてそこまで私に優しくしてくれるんですか?」
「好きだからな」
「……私のことをいつ好きになってくれたんですか?」
「いつ……と言われると難しいな、気がついたら白のことが好きになっていて、自然と頭に浮かぶようになっていた」
「私も大体同じです……先輩のことが一日中頭から離れないないです」
その状態は大体同じというんだろうか……
「正直に伝えたいことがあるんです……先輩、」
「何だ?」
「私は私が本当に先輩のことが好きなのかわからないんです」
「……どういうことだ?」
「初めは私を唯一、暴力から守ってくれた人だから……私だけを向いてくれるようにする為に強引に彼女になって、それから恋人らしい事もしました……」
「そうだな」
「でも、この気持ちは好きっていうよりも暴力から守ってくれる先輩に依存しているだけなのかなって思うんです……」
「別に、好きって気持ちと依存って気持ちは両立するんじゃないか?」
「そうだとしても、私が持っているこの感情は先輩が私に向ける感情とは何か違う気がするんです……」
「それを言ったら、俺だって白がいない生活なんて考えられない……依存してんのも好き同士なのも似てると思うが」
「そう……ですね」
その後も看病は続いたが夜になったので俺は一度家に帰った
そして――
◆◆
――翌朝
「……ん?」
何者かに超近距離から見つめられ続けているような感覚を肌で感じた俺は目覚めた
「って、白!?」
「すみません先輩、少しでも先輩のお顔を眺めていたくて、早く来すぎてしまいました」
「それはいいが、熱は大丈夫なのか?」
「先輩のおかげでもうすっかり良くなりました!、ですが……」
「何だ?」
「先輩の寝顔に夢中になりすぎて、まだ朝食が用意できていません……」
「何だと?」
「すみません先輩っ、今すぐにお作りしま」
「病み上がりが無理するな、今日は作らなくていい」
「だ、駄目でしょうか?」
「朝からいきなりいつも通りに動いて、またぶり返したりしたらどうするんだ」
「もう、心配していただかなくても大丈夫だとは思いますが……」
「大丈夫でもなければ丈夫でもねぇ、今日は俺が作る」
「ですが、流石に三日続けて先輩に頼り続けるのは」
「出来上がるまでそこのベットで寝ていろ」
聞き分けの悪い白の制止を振り切って部屋を出た俺は朝食の準備に取り掛かった
◆◆
――バン、と豪快に扉を閉めた彼は朝食を用意すると言って部屋から出ていった
私がやると言ったのに、病み上がりに任せるわけにはいかないと聞き入れてはくれなかった
「はあっ、……はぁ、はぁ……」
彼が部屋から出て行ったことで、いよいよ抑えきれなくなった鼓動が騒ぎ始めて呼吸も一気に荒くなる
熱い、熱い、……もう、風邪による熱はないはずなのに熱くて熱くて仕方がない
「……はっ、……はぁ、はあっ、はぁ……なに……これ、知らない……知らない知らない……!!」
私は知らない、未だかつて感じたことのないこの感情にどう向き合えばいいのかを
私は知らない、心臓からあふれ出すこの止めることのできない熱く大きな気持ちを
熱い、熱い、どうすればいいんだろう
幸せすぎて死んでしまいそうだ
口の中が乾いていくのを感じる……
でも、私の体の一部はそれに反比例して真逆の状態になっていく……
「はぁ、はぁ、……ああ、う、ううぅ、……はあっ、はぁ、」
胸の中に抱いた衝動と新たに産まれた感情が衝突する――
そして
重なり合って
混ざり合って
誰よりも優しい彼のことを求め続ける
苦しくて寂しい
だけど、どこか暖かくて幸せな感情
これが――
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