いじめから助けた学校一のS級美少女を数合わせで部活に入れただけなのに

森 拓也

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第九話

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 俺は受け取っていた合いかぎを使って白の家に入り、真っ先に白の部屋に入った


「入るぞ、コンビニで色々買ってきた」

「げほっ……はぁ、はぁ、……せ、先輩……どうして……」

「まずは冷却シートを貼れ」

「ありがとう、ございます」

「……次は水だ、飲め」

「水まで……こほっ、いただきます……けほっ、こほっ、」

 ……白が苦しんでいる所を見ると俺自身も苦しくなる

 変われるなら変わってやりたいがそういうわけにもいかない


「ここまでしていただいたら、私は大丈夫ですから……けほっ、……先輩は学校に行ってください……げほっ、ごほっ、」

「今日は白に何と言われようと、付きっきりで看病してやる」

「そこまでして……けほっ……いただかなくても……ほ、本当に、大丈夫ですから……」

「大丈夫じゃないだろ、病人が遠慮なんてするな」

「いえ、大丈夫です……こほっ、もうこれ以上先輩に迷惑をおかけする訳には、……はぁ、はぁ、いきません……」

「いいか?白……これは俺がやりたくてやっていることだ。だからおとなしく看病されてろ……いいな」

 俺は有無を言わせない強い口調で白に釘を刺した

 少し脅すような感じになってしまったが無理をして動かれて悪化されるよりはましだ


「……はい」

「キッチン借りるぞ」

 俺はキッチンに行き、おかゆと飲みやすくて栄養価の高いスープを作りながら白のことを考える

 時期的に考えても恐らくはただの風邪だろうがかなりの高熱が出ている

 決して軽い症状ではない……病院に連れていくことも視野に入れるべきだろう

 それに、あの様子からしても直ぐに治せそうな感じではない……


 ここまで来たからには俺も覚悟を決めないとだな



 ◆◆

「白、入るぞ」

「はい……はぁ、はぁ、……」

「おかゆとスープを作ってきた」

「わざわざ持ってきていただかなくても……」

「遠慮するのもいい加減にしろ」

 俺はベットの隣にあるテーブルにトレーを置いて白に料理を差し出すが、白は浮かない顔をしている


「ああ、もしかして俺に食べさせて欲しかったのか?」

「い、いいんですか?」

「……ほら、口開けろ」

「はい……ん、柔らかくて美味しい……です」

「そうか、良かった」

 白は料理を一通り食べることができた

 食べる力が残っているなら病院に行かずとも治せるだろう


「薬を飲んだら後は寝ていろ」

「薬まで……先輩、ありがとう……ございます」

 冷却シートを貼って、消化にいいものを食べて、薬を飲んだら寝る……を繰り返させる

 看病する何て言っても結局、俺にできることなんてこれくらいのことしかない



 ◆◆

 ――数時間後

「はぁ、はぁ、先輩……まだ、いてくれていますか?」

「ああ、ここにいる」

 目の前の白は苦しそうな息をしている

 顔色は悪く、何度も咳をしたからか声が酷くかすれている


「先輩が隣にいると……安心します……げほっ、げほっ、」

「大丈夫……じゃないよな」

「は……い、本当は……ちょっと……だけ……つらい、です……頭が痛くて、熱くて、なのに体は寒くて……けほっ、こほっ、」

「すまん、俺に出来るのはこれだけだ」

「十分過ぎるくらいに助けてもらっていますよ、だから……そんなことはいう必要ない……です」

「他に何かして欲しいこととかあったらいつでも言えよ」

「なら一つ……話を聞いてもらえますか?」

「ああ、いいぞ」

「私……不安なになるときがあるんです」

 白はより顔を暗くしながらしながら口を開いた


「いつだ?」

「……先輩と離れていると、不安になるんです……この幸せがいつか壊れて消えてしまうと考えると……どうしても不安になるんです」

「……」

「私は他の人とは違います……こんな白い髪と赤い目……先輩は優しくて強くてカッコよくて……こほっ、私なんかが釣り合うはずがないんです……」

「そんなことは、ない……!」

「先輩ならそう言ってくれると思っていても……けほっ、素敵な先輩はいつか、私を捨てて他の女性のところに行ってしまうんじゃないかって……そう考えてしまって、不安で……」

「……」

「そうなっても仕方がないって、受け入れるしかないって分かっています……この夢のような日々から目覚めたら……私は、元の惨めな私に戻っていて……そこには先輩はいなくて……けほっ、また暴力を振るわれて……けほっ、」

 よもや、白がここまで思い詰めていたとは……

 知らなかったとは言え、散々偉そうなことを言っておいて……これでは、恋人失格だな


「だから、これは……罰なんです……私なんかがこんなに幸せな生活を送ってしまって……けほっ、私なんかがこんなに幸せに生きていいはずがないのに……」

「もう、そんなことは考えなくていい」

「あ……頭、」

 俺は汗で額に張り付いた髪を離しながら白の頭を撫でる

 すると、白は力が抜けたように微笑んだ


「不安な時は連絡をくれたらいつでも寄り添う……だから、これからは辛いことがあったらすぐに話してくれ……白を苦しめるその闇から、必ず俺が白を救ってみせる……!!」

「先輩はいつもそうやって優しくしてくれて……私にひどいことをしたことなんてありませんでしたよね……」

「白、俺を信じてとことん頼れ」

「はいっ、……早く風邪なんか治して私、先輩のお役に立てるように頑張ります!……だから、何があっても私を見捨てないでください、嫌いにならないでください……」

「当たり前だ、俺が白を嫌って捨てるはずがないだろ」

「せん、ぱい……すぅ、すぅ」

 その後、安堵の表情を浮かべて白は再び眠りについた
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