いじめから助けた後輩を数合わせで部活に入れただけなのに異常に懐いてきてもはや怖いんだが

森 拓也

文字の大きさ
上 下
13 / 21

見切りをつけた勝利宣言

しおりを挟む
 自宅で夜ご飯を食べていると――ピンポーン、とチャイムが鳴った


「先輩!」

「白……その傷、どうしたんだ!?」

「助けてください……!!」


 玄関を開けると傷だらけの白と泣いている彰がいた為、とりあえず家に入れて三人でテーブルに座わった


「で、誰にやられたんだ?」

「母親です……今日、久しぶりに家に来たと思ったら……機嫌が悪くて暴力を振るわれました」

「何だと……その母親は今、どこにいるんだ?」

「今はまだ家にいると思います」

「そのことを祖父母は知っているのか?」

「いえ、言いたくなくて言えていません」

「どうして頼らないんだ?」


「母親は祖父母の前だといい母親を演じているので……このことを知ったら、きっと悲しみます……祖父母の助けがなければ彰も私も今まで生きてこられなかった……お世話になっている祖父母を悲しませたくなくて……」


「……」


「だから、知られたくないんです。それに、こんな事を隠していたことがばれたら……きっと嫌われてしまうから」


「白、俺は会ったことはねぇが……話を聞く限りじゃ絶対にそんなことで祖父母は白を嫌いにならないと思うし、むしろ……このことを知らずにいるほうが後々辛いだろう」


「でも、祖父母は母親がいい母親だと信じていて」


「だとしても、今の二人の状態をみれば必ず考えは変わる……それに、俺に母親から二人を引き離す策がある」

「本当ですか?、でも……警察に行ったら私と彰は離れ離れにされるかも」

「大丈夫だ、また一緒に暮らせるようにしてやる」

「そんなことが出来るんですか?」

「ああ、俺を信じて任せろ……必ず二人を助けてみせる」

「先輩……」

「だから母親のことは俺に任せてここにいろ」


 白と彰に応急処置をした俺は家を出た




 ◆◆

 白のアパート――


 俺がドアチャイムを押すと程なくして、ぼさぼさの髪の女性が缶ビールを片手に出てきた


「ん……ああ、アンタが彼氏?」

「そうです、あなたが白と彰に暴力をふるったと聞いて来ました」

「だったら何?」

「虐待をしたことを認めるんですね」

「虐待?人聞きが悪いなぁ……私はただ聞き分けの悪い子供にしつけをしただけだよ」

「あれは明らかにしつけの範疇を超えていた、明らかな虐待だ」

「んー、で?ムカついて殴って何が悪いの?」

「それ……本気で言ってます?」

「大体、子供なんて親の所有物でしょ?私のものをどう扱おうが私の勝手でしょ」


「……」


「それにたった一回でそんな大袈裟な」

「回数なんて関係ない、やったことの重みがわかっていないんですか!」

「重み?わかりませーん」

「なら……もうあなたと話すことは何もありません」

「あっそ、邪魔だからさっさと消えて」


 俺はその後、白の母親とのやり取りを録音していたスマホと傷ついた二人を連れて白の祖父母の家に行った




 ◆◆

 白の祖父母の家――


「貴方の子供が貴方の孫にしたことを話しに来ました」


 白の話によると、祖父母は母親が良い母親だと信じているとのことなので先に決定的な証拠を掴みに行った


 ちなみに真っ先に警察に行かなかったのは二人が別々な場所に引き取られる可能性があったからだ


「すまなかった……」


 証拠も合わせてすべて話すと白の爺さんは頭を下げた


「頭を上げたください」


「知らなかったで済まされる話じゃない、これからは私たちが二人の事を必ず守り、育てると誓う……あの大バカ娘のことも合わせて、後のことは任せてくれ」



「はい、特に二人のことをお願いします……」


 白の爺さんは白の母親の親とは思えないくらいにまともだった


 白も彰も信用しているし後のことは全部任せてしまっても問題ないだろう




 ◆◆

 数日後――


 最近俺と白は昼休みに一緒に学校の中庭のベンチで昼食を食べている


 今日は白が弁当を作ってきてくれると言っていたので手ぶらできた


「先輩、お弁当を作ってきました!」

「おう、ありがとな」

「ハンバーグ弁当です、どうぞ」


 俺は差し出された弁当を受け取り箱を開ける


 中にはハンバーグのほかにつけ合わせに相性のいいポテトと彩りの良い野菜のトマトやブロッコリーも添えてあり、バランスのいい弁当だった


「いただきます」

「味は……どうですか?」

「最高においしい」

「本当ですか?」

「ああ、完璧だ」

「やったぁ……!」


 隣に座る白はにっこりと笑った。そのあまりの可憐さに俺の目は釘付けになる


「あれからまた、先輩の好みの味を研究してみたんです」

「凄いな、俺の好みぴったりの味だ」

「改善点があれば言ってくださいね」

「この料理に口出しできるほどの実力は俺にはない」

「そんなことはありませんっ、先輩の料理は……えっ、と……素敵です!」

「……無理に褒めようとしなくていい」

「あの、一つお願いを聞いて貰っていいですか?」

「ああ、」

「……もう少しだけ、近くに座ってもいいですか?」

「いいぞ」

「ありがとうございます……!」


 白がさらに近くに移動して座った、距離が近すぎて互いの体がほとんど密着している……

 俺はいいが、この近さを白はどう思っているんだろうか


「狭くはないか?」

「むしろ、このくらいくっついていた方がいいです……!!」

「ならいいが」

「……先輩の体あったかくて好きぃ……」

「俺も白の体が好きだぞ」

「先輩の今の言葉……普通にセクハラみたい、……です」

「お前が言うんかい……それで、あの後はどうなったんだ?」

「彰と祖父母の家に引っ越すことになりました」

「母親は?」

「祖父母がもう二度と近づけないようにしてくれました」

「そうか」

「これも全部先輩のおかげです……もう何回助けてもらったことか」

「俺は約束を守っただけだ、男に二言はねぇ」

「私、たまに思うんです……いじめられていてよかったと」

「何故だ?」

「だって、あの日まであそこであんな扱いを受けていたから私は先輩に会うことが出来たんです」

「そう言われても何とも言えないが……まあ、これからもよろしくな」

「はい、これからもよろしくお願いします!先輩……!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...