上 下
11 / 48
第二章

第十一話

しおりを挟む
「悟くんの席は美羽さんの隣だから……美羽さん、しっかりとエスコートしてあげてね」



「はい!行こう、悟」



「うん」



 俺は美羽の後について行って、一緒に席に向かう。



 俺の席は窓際の一番後ろの席だった




 席に着き、ホームルームが終わると前の席に座っていた女子が立ち上がって話しかけてきた



「初めまして、私の名前は水島 結衣みずしまゆい。あなたの護衛生徒の一人よ……悟くん、これからよろしくね」



 華奢でスポーティーな雰囲気がある結衣からは、しっかり者な印象を受けた




「よろしく結衣……というか、俺の護衛生徒って美羽一人だけじゃなかったんだ」




 続いて、右ななめ前の席の女子にも話しかけられる



「男子生徒一人につき、三人以上の女子生徒を護衛として付ける。それが規則だから……ちなみに、私もあんたの護衛生徒の一人だよ、名前は朝倉 美月あさくら みつき。よろしくね、悟」



 美月は清楚せいそで端正たんせいな顔立ちをしていて、透明感のある美しい容姿をしている。上品でクールな雰囲気を漂わせていて、少し近寄りがたいイメージだ。




「こちらこそよろしく、仲良くしてくれると嬉しいよ。美羽以外の友達も欲しいと思ってたんだ」



「悟、友達は私一人だけがいれば十分でしょ?なんで、わざわざ他の子とも仲良くなろうとするの?……悟には私だけでいいじゃん」



 美羽は頬をプクーっと膨らませ、いかにも『私は怒ってます!』みたいな反応を見せた



 だけど、それが逆に可愛いらしい




「悟くんと美羽ちゃんは付き合ってるの?」



 美羽とやり取りをしていると結衣が興味ありげな顔で聞いてきた




「いや、付き合ってはないけど」



「私と悟はこれから付き合うんだから、拡大解釈すればもう婚約していると言ってもいいかも……」



 美羽が訳のわからないことを言い出したので、聞かなかったことにして流すことにした




「もう、美羽ちゃんは本当に悟くんの事が大好きなんだね……たしかに、なんか悟くんを見てると守ってあげたくなっちゃうな……カッコいいってだけじゃなくて……何か、こう……お腹の下あたりに……クル、感じ……あれ?……私、ちょっと変かも……」



 結衣はそんなことをつぶやきながら、俺のことをかなり熱のこもった目でジーっと見てきた




「そんなに見つめて……結衣、もしかして俺のこと好きになった?」



 結衣があまりにもガン見してきたので、俺は冗談半分で聞いてみた




「は、はぁ!?そ、そんなんじゃ、ないし!……って、ちょっと美月っ、悟くんも、ニヤニヤするな!!」



 結衣は顔を赤らめて、目に見えて動揺しはじめた




「ごめんごめん、冗談だよ」



 俺がからかうようにそう言うと、結衣は少しムッとした表情になる



「か、勘違いしないでよねっ、私はあくまでも護衛として、気になってるだけだから!」




「じゃあ、俺が他の子と仲良くなっても問題ないってこと?」



「べ、別にっ、悟くんが誰と仲良くなろうと……私の生活にはなんの影響もないし、嫉妬するようなことも絶対にないんだから!」



「結衣、流石に動揺しすぎ」



 美月はそんな結衣の反応を見て、新しいおもちゃを見つけた子供のように嬉しそうな表情をしている



「べ、別に動揺なんて……もう!ちょっと、トイレに行ってくる!」



 そう言って結衣は教室を出て行った




「あーあ、結衣、気になってるのならもっと素直になればいいのに」



 美月は少し呆れたようにそうつぶやいた




「美月は結構大人びてるよな、なんか……もう色々と経験してる、って感じ」



 俺は冷静な美月を見て、思わず思ったことを口に出してしまった




「へー、あんたには私がそう見えるんだ……じゃあ、私が本当に大人かどうか……試してみる?」




「試すって、からかわないでくれ」



「心配しなくても大丈夫だよ、あんたの貞操には手を出さないから……」



 美月は少しいたずらっぽく笑ってそう言ってきたが、何故かその顔はどこか悲しげにも見えた

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな? これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。 ※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。 「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

処理中です...