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第453話
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森を抜けると、今度は陰鬱な空気の漂う湿地帯だった。
生い茂る葦に似た植物の合間合間に、鈍い光を反射する水面が見えている。
鉛色の空には黒々とした雲塊が重苦しく垂れこめ、時々雲間から稲妻が空と大地を光の矢でつなぐ。
その一瞬の光に照らされて浮かび上がるのは、行く手に横たわる山並みとその麓に立つ一本の塔だ。
地面から生えた巨大な槍に大蛇が絡みついたようなそのフォルムこそ、僕らが目指す魔王の住処、黒の塔である。
「空気がなんだか生臭いな」
葦の群生の中にかろうじて残る道を歩きながら、ブライトが言う。
ブライトは黒革の上着の下は裸で、下半身に貼りつくレギンスだけを身に着けている。
意志を持ったように蠢く植物たちが尖った葉先で股間を嬲るからだろう。
レギンスの前は、刺激に反応した男性生殖器の形をくっきりと浮き彫りにしている。
僕はといえばミニスカートタイプの経帷子を穿いてはいるものの、下着はなしで性器はむき出しだ。
これももとはと言えば、ブライトの求めにすぐ応じられるようにという配慮である。
「生臭いというより、ひどく淫靡な匂いがします。まるで発情したケモノが全身から発するような…」
「上級魔族が近くに潜んでいるのかもしれないな。ま、それならそれで、力試しにちょうどいい」
僕のエキスを多量に飲んだからなのか、ブライトは自信ありげだった。
実際に、ラファエルと闘った時と比べても、躰が一回りも二回りも大きくなったような感じなのだ。
むき出しの手足の筋肉も過酷な修練を積んだ格闘士のそれのように、見違えるほど逞しくなっている。
僕と交接して互いの体液を分け合えば分け合うほど、ブライトは強者として生まれ変わるようだった。
僕がブライトのエキスを摂取することで、より優秀なヒーラーへと進化するように…。
異変が起こったのは、湿地帯を渡り切り、赤茶色の地肌が露出した石切り場に足を踏み入れた時だった。
崖に開いた洞窟のひとつから、黒いコートを身にまとった長身の男が、忽然と姿を現したのである。
「きさまらか。魔王様を討伐するとか抜かす、雑魚勇者どもとは」
男は奇妙な外観をしていた。
フードの下から象の鼻のような器官が伸びており、更に右腕が鞭、左手は五本の指の先端が吸盤になっている。
よく見ると、顔の中央部から生えたその長い鼻は、先がハート形に膨らんだ男根そのものだ。
「ラファエルが世話になったようだが、俺はあんな小僧とは違う。今度はこのブエル様が相手だ」
僕の大脳の皺と皺の隙間に潜り込んだあの触手が、小刻みに震動し始めるのがわかった。
それに応じて、両耳の穴から脳汁が垂れてくる。
「ブライト、ヤバいよ」
僕は傍らの恋人にささやいた。
「こいつ、全身兵器だ。それも、性技に特化した・・・」
「のぞむところさ」
ブライトがレギンスの前を押し下げ、いきなり下半身を露出した。
猛々しい肉の鉄槌が、肥大した赤兜の先で新たな敵を指し示す。
「これは要らない。持っててくれ」
背中に背負ったバスターソードを外すと、その重い大剣を無造作に僕の胸に押し付けた。
生い茂る葦に似た植物の合間合間に、鈍い光を反射する水面が見えている。
鉛色の空には黒々とした雲塊が重苦しく垂れこめ、時々雲間から稲妻が空と大地を光の矢でつなぐ。
その一瞬の光に照らされて浮かび上がるのは、行く手に横たわる山並みとその麓に立つ一本の塔だ。
地面から生えた巨大な槍に大蛇が絡みついたようなそのフォルムこそ、僕らが目指す魔王の住処、黒の塔である。
「空気がなんだか生臭いな」
葦の群生の中にかろうじて残る道を歩きながら、ブライトが言う。
ブライトは黒革の上着の下は裸で、下半身に貼りつくレギンスだけを身に着けている。
意志を持ったように蠢く植物たちが尖った葉先で股間を嬲るからだろう。
レギンスの前は、刺激に反応した男性生殖器の形をくっきりと浮き彫りにしている。
僕はといえばミニスカートタイプの経帷子を穿いてはいるものの、下着はなしで性器はむき出しだ。
これももとはと言えば、ブライトの求めにすぐ応じられるようにという配慮である。
「生臭いというより、ひどく淫靡な匂いがします。まるで発情したケモノが全身から発するような…」
「上級魔族が近くに潜んでいるのかもしれないな。ま、それならそれで、力試しにちょうどいい」
僕のエキスを多量に飲んだからなのか、ブライトは自信ありげだった。
実際に、ラファエルと闘った時と比べても、躰が一回りも二回りも大きくなったような感じなのだ。
むき出しの手足の筋肉も過酷な修練を積んだ格闘士のそれのように、見違えるほど逞しくなっている。
僕と交接して互いの体液を分け合えば分け合うほど、ブライトは強者として生まれ変わるようだった。
僕がブライトのエキスを摂取することで、より優秀なヒーラーへと進化するように…。
異変が起こったのは、湿地帯を渡り切り、赤茶色の地肌が露出した石切り場に足を踏み入れた時だった。
崖に開いた洞窟のひとつから、黒いコートを身にまとった長身の男が、忽然と姿を現したのである。
「きさまらか。魔王様を討伐するとか抜かす、雑魚勇者どもとは」
男は奇妙な外観をしていた。
フードの下から象の鼻のような器官が伸びており、更に右腕が鞭、左手は五本の指の先端が吸盤になっている。
よく見ると、顔の中央部から生えたその長い鼻は、先がハート形に膨らんだ男根そのものだ。
「ラファエルが世話になったようだが、俺はあんな小僧とは違う。今度はこのブエル様が相手だ」
僕の大脳の皺と皺の隙間に潜り込んだあの触手が、小刻みに震動し始めるのがわかった。
それに応じて、両耳の穴から脳汁が垂れてくる。
「ブライト、ヤバいよ」
僕は傍らの恋人にささやいた。
「こいつ、全身兵器だ。それも、性技に特化した・・・」
「のぞむところさ」
ブライトがレギンスの前を押し下げ、いきなり下半身を露出した。
猛々しい肉の鉄槌が、肥大した赤兜の先で新たな敵を指し示す。
「これは要らない。持っててくれ」
背中に背負ったバスターソードを外すと、その重い大剣を無造作に僕の胸に押し付けた。
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