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第411話

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 けれどー。

 敵は予想外に敏捷だった。

 その点では、ブライトより一枚上、といってよかったかもしれない。

 鋭いブライトの蹴りを瞬時にして見切ると、巨体に似合わぬ素早さでそれをよけ、代わりに丸太のような右腕を振り回したのである。

「うわっ!」

 蹴りを弾かれ、ブライトがたたらを踏んだ。

 そこへ、間髪を入れず突進する黒い影。

「な、何をする?」

 わめくブライト。

 魔物は正面からブライトを抱き上げると、毛むくじゃらの腕をその躰に回し、凄まじい力で締めつけ始めたのだ。

「あぐ、ぐぐぐ・・・」

 魔物の腕の中で、裸に近い恰好のブライトが反り返る。

 みしっ。

 嫌な音がした。

 ブライトの背骨が軋む音だ。

「や、やめ、ろ・・・あ、ああああ・・・」

 ブライトのつま先が地面を離れ、化け物熊に抱きしめられた躰が徐々に宙に浮き始める。

 みしっ。

 みしみしみしっ。

 更に骨が軋みを上げると、

「うぐ・・・ぐはあ・・・」

 どぼっ。

 半開きになったブライトの口から鮮血が溢れ出た。

「ブライト・・・」

 僕は動けなかった。

 苦しむつがいの表情から目が離せない。

 身体じゅうが熱病に罹ったように熱かった。

 けど。

 僕にはわかっていた。

 この感覚は、決して恐怖からもたらされるものじゃない。

 これは・・・。

 股間にひどく重いしこりが生じてしまっていた。

 男性器に血流が注ぎ込まれ、勃起現象が始まっているのだ。

 つがいのアルファであるブライトが痛めつけられれば痛めつけられるほど、僕は性的に興奮してしまう。

 その悲しい性が、再燃したのだった。

 ミニひだスカートふうの経帷子を割って、勃起したペニスの先っちょが覗いている。

 包皮の剥けたその先端は、早くも透明汁で濡れ光り、更なる刺激を待ちわびて白い湯気を上げていた。

 ペニスと陰嚢の間に息づく女性器がじっとり湿って、飢えた二枚貝のように淫靡に息づいているのがわかった。

 ヒート期のオメガはた易く欲情してしまう。

 僕は右手を経帷子の中に突っ込み、猛り立つ熱い肉棒を握った。

 左手はむろん薄いシャツの上から胸のポッチをまさぐっている。

 バキッ!

 バキバキバキッ!

「ギャアアアアアアッ!」

 その時、異音とともにブライトの喉から絶望の悲鳴がほとばしり、次の瞬間、僕は視界が真っ赤に染まるのを目の当たりにしたのだった・・・。
 



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