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第354話

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 信じられない。

 でも、信じるしかなかった。

 現にそれは、目の前で起こっているのだ。

 ブライトが、生きている。

 いや、生かされている、というべきか。

 僕のエキスによって。

 あんな姿になってまで。

 ああ、でも、なんてこと・・・。

 肉汁の海の中で、太く長い丸太のような物体がぴくりと震え、溶け残った皮膚やら肉片やらの残滓を振り落とす。

 -アアアアアアアア・・・。

 くびれた首をもたげて、目のないつるりとした”貌”が上を向く。

 ズルッ。

 身をくねらせて、動いた。

 肉汁の中から、短い手足が現れる。

「おいで・・・ブライト」

 ペットにするように、手を叩き、呼びかけてみた。

 ーアアアアアアアア・・・。

 こうべをめぐらせ、生き物が僕のほうを見る。

 それは、明らかに生きていた。

 異形の生命体、とでも呼んだらいいのか。

 全体のフォルムは、成人男性の生殖器官そっくりだ。

 それも、興奮して限界まで勃起した時のペニスの形である。

 いや、この際はっきりと、ブライトの勃起男根そのもののフォルムと言ってしまおう。

 あの愛しい肉棒が、今まさに僕の眼前に蘇ったのだ。

 ただ、サイズが桁違いだった。

 体長は、成人男性一人の頭と胴を足したぐらい。

 そのゴツゴツした巨大な肉の丸太に赤ん坊のソレのような短い手足が生えていて、その四肢を懸命に動かしながら、僕の声に反応して、じりじりと地面の上を這ってくる。

「ああ、ブライト・・・」

 両手を伸ばす代わりに、僕は大地にペタンとお尻をつけ、大きく股を開いてブライトを待ち受けた。

 言葉を交わしたわけでもないのに、彼が求めることが瞬時にわかったからだった。
 
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