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第303話

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 ブライトの言う通りだった。

 今は感涙にむせんでいる暇はない。

 まずはこの混乱をなんとかせねば。

 魔族たちの乱入で、広間は阿鼻叫喚の修羅場と化していた。

 樹木タイプの女魔族が腕代わりに生えた無数の蔦を駆使して、カインを宙吊りにしている。

 カインは身体中の穴という穴に蔦を突っ込まれ、明らかに瀕死の状態だ。

 その足元では、鰐タイプの四足歩行魔族が、耳まで裂けた口にアベルの躰を半分呑み込んでいる。

 アベルは鋭い牙で腹を食いちぎられ、鰐の口の中で血まみれになって息絶えていた。

「ひどい・・・」

 僕は吐き気を覚えて口を手で覆った。

 用心棒のアベルとカインがあのざまでは、心配なのは、あのふたりだ。

 僕を陥れようとした憎いふたりではあるけれど、同じ人間として、放っておくことはできなかった。 

「アギト皇子と、ジュリア皇女は・・・?」

 僕の言葉に、ブライトが目を動かした。

 その視線の先にあるモノを見て、僕はヒッと喉から悲鳴を漏らした。

 壁に、潰れた西瓜のようなものがはりついている。

 ぺちゃんこになって血潮を噴き出したそれは、よく見ると、アギト皇子の頭部だった。

「なんてこと・・・」

 僕は絶句した。

 じゃあ、皇女はどこだ?

 まさか、彼女まで?

 その時、どこからかかすかな女の泣き声が聞こえてきた。

 喧騒の中でも意外にはっきり響いてきたそれは、間違いなく、ブライトの姉、ジュリア皇女のものだった。

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