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第291話

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 皇女の懸念も無理はない。

 カーテンの隙間から垣間見える茜色の空を、無数の何かが飛んでいる。

 おそらく、コウモリのように羽を広げた飛翔タイプの魔獣か魔族の集団だろう。

 バシッ、バシッ。

 キイキイキイッ!

 そのうちに、ガラスを叩く音と気味の悪い鳴き声が聞こえ始めた。

 見ると、ネズミのような顏をした魔族たちが、翼を畳んで窓に取りつき、僕らのほうを覗き込んでいる。

 急がなきゃ。

 さすがの僕も蒼ざめた。

 ガラス窓を破られたらおしまいだ。

「カイン、アベル、窓を破られたら、あんたたちがやつらを迎え撃つのよ」

 皇女が巨漢二人に命令を下す。

 なるほど、この部屋の中で肉弾戦に耐えられそうなのは、あのふたりの大男しかいない。

「ふたりが時間を稼いでいる間に、レムはブライトを逝かせなさい。いいわね?」

 皇女の言葉が終わるか終わらぬかのうちだった。

 突如としてガラス窓が割れ、破片が内側に飛び散った。

 獣臭い匂いが夏の宵の微風に乗って部屋に広がり、またたくまに耳障りな鳴き声が周囲に満ち満ちた。

「ヤバいよ姉さん、来やがった!」

 頭を抱えて書き物机の下に潜り込もうとするアギト皇子。

 複数の羽ばたきの音がして、たちまち周りが黒い影に囲まれた。

 早くしなきゃ!

 僕はブライトのペニスを喉元深く呑み込んだ。

 そうしておいて、顏を烈しく上下に動かし、太くて長い肉バナナをじゅるじゅるしゃぶり始めた。

 が、遅かった。

 ふいに首根っこに痛みが走ったかと思うと、躰が宙に浮いたのだ。

 口からブライトのペニスが吐き出される。

 宙づりにされる躰。

「うまそうなガキだ」

 耳元で生臭い息が匂った。

「ちょっくら味見してやるとするか」

 魔族だった。

 僕はブライトを覚醒させる前に、あろうことか、魔族のひとりに捕まってしまったのである。
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