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第201話
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「王と王妃は北方諸国の王に招かれ、不在なの。だから今この城に家族はこれだけ」
侍女たちの手で料理が運ばれてくると、ジュリア皇女がワイングラスを手に取ってそう言った。
「招かれた、ね。本当は僕らを置いて逃げたんじゃないのかい? 魔王が怖くてさ」
人形の髪を撫でながら、アギト皇子が不気味に笑う。
「馬鹿な。何を」
顔色を変えて皇女が兄を睨みつけた。
「だってそうだろ。財政難とかで、この国にはもうろくな兵力だってない」
「だからじゃないの。お父様とお母様は、北方諸国との軍事同盟の再構築を・・・」
「いずれにせよ。備えは必要だ。少なくとも、俺の親衛隊は健在だ。当面はそれでなんとかするしかない」
それまで無言だったブライトが口を挟んだ。
「それにしても兄貴、その人形は何だ。つがいのオメガはどうしたんだ?」
「アリスちゃんを人形呼ばわりするな」
急にアギトが怒りの表情を顔に浮かべた。
「オメガ? あんな役立たずはもう死んじゃったよ。僕の番はこのアリスちゃんだけだ。ブライト、おまえも旅先で変なオメガを拾ってきたようだけど、いい加減目を覚ませ。そいつらは所詮けがらわしい下賤の生き物だ。人の精を夜な夜な吸って育つ、夢魔みたいなものなんだ」
皇子横目で僕を睨み据えている。
それは、ぞっとするほど冷たい、明らかに憎悪の籠った目つきだった。
僕は豪奢な椅子の中で身をすくめた。
なぜだか嫌な予感がしてならなかったのだ。
侍女たちの手で料理が運ばれてくると、ジュリア皇女がワイングラスを手に取ってそう言った。
「招かれた、ね。本当は僕らを置いて逃げたんじゃないのかい? 魔王が怖くてさ」
人形の髪を撫でながら、アギト皇子が不気味に笑う。
「馬鹿な。何を」
顔色を変えて皇女が兄を睨みつけた。
「だってそうだろ。財政難とかで、この国にはもうろくな兵力だってない」
「だからじゃないの。お父様とお母様は、北方諸国との軍事同盟の再構築を・・・」
「いずれにせよ。備えは必要だ。少なくとも、俺の親衛隊は健在だ。当面はそれでなんとかするしかない」
それまで無言だったブライトが口を挟んだ。
「それにしても兄貴、その人形は何だ。つがいのオメガはどうしたんだ?」
「アリスちゃんを人形呼ばわりするな」
急にアギトが怒りの表情を顔に浮かべた。
「オメガ? あんな役立たずはもう死んじゃったよ。僕の番はこのアリスちゃんだけだ。ブライト、おまえも旅先で変なオメガを拾ってきたようだけど、いい加減目を覚ませ。そいつらは所詮けがらわしい下賤の生き物だ。人の精を夜な夜な吸って育つ、夢魔みたいなものなんだ」
皇子横目で僕を睨み据えている。
それは、ぞっとするほど冷たい、明らかに憎悪の籠った目つきだった。
僕は豪奢な椅子の中で身をすくめた。
なぜだか嫌な予感がしてならなかったのだ。
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