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第156話
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戸口をくぐって現れた怪人は、異様な風体をしていた。
躰を銀色の全体スーツに包んでいるのも不気味だけど、何より気色悪いのは、その頭部。
長い首の上に、目も鼻もないのっぺらぼうの球体が乗っかっているだけなのである。
ーあれが、カイン?
高い天井に頭頂部がくっつきそうなほどの長身で、重そうな頭を揺らしながら、カインと呼ばれた怪人物は大股にブライトに接近していく。
かたや水牛の被り物を被ったアベルのほうは、その対角線上の位置からブライトを襲おうとしている。
が、ブライトが見ているのはジンだけだ。
切れ長の瞳に怒りの炎を燃え立たせ、稀代のマッドサイエンティストを睨みつけている。
「レムを返せ。その子は俺の”つがい”なんだ。生涯の伴侶を、人体実験の道具にさせるわけにはいかない」
生涯の伴侶・・・。
その言葉に、僕は不覚にも涙ぐんでしまった。
ブライト・・・。
あなたは、そこまで僕のことをー。
まだ、出会って間もない、こんな出来損ないのオメガに過ぎない、この僕を・・・。
「黙れ、変態。やれ、アベル、そして、カイン」
「うがあっ」
「ヒイイッ」
二体の怪人がダッシュした。
突進するアベルのラリア―トを、間一髪、跳び退ってブライトがかわす。
が、着地がまずかった。
下剤の作用と下痢のせいで、足に力が入らないのだろう。
バランスを崩して、ぐらりとよろめいた。
そこに、唸りを上げて横殴りに襲いかかったのは、カインが放った長い首のひと振りだった。
「ぐわあっ!」
真横から、ブライトの腹にカインの紡錘形の頭部が食い込んだ。
予想外の頭突きを食らい、ブライトが弾け飛ぶ。
そのブライトを、体勢を立て直したアベルが背後から受け止め、羽交い絞めにした。
「や、やめろ・・・」
近づくカインを凝視するブライトの端正な顔に、恐怖の表情が刻まれた。
躰を銀色の全体スーツに包んでいるのも不気味だけど、何より気色悪いのは、その頭部。
長い首の上に、目も鼻もないのっぺらぼうの球体が乗っかっているだけなのである。
ーあれが、カイン?
高い天井に頭頂部がくっつきそうなほどの長身で、重そうな頭を揺らしながら、カインと呼ばれた怪人物は大股にブライトに接近していく。
かたや水牛の被り物を被ったアベルのほうは、その対角線上の位置からブライトを襲おうとしている。
が、ブライトが見ているのはジンだけだ。
切れ長の瞳に怒りの炎を燃え立たせ、稀代のマッドサイエンティストを睨みつけている。
「レムを返せ。その子は俺の”つがい”なんだ。生涯の伴侶を、人体実験の道具にさせるわけにはいかない」
生涯の伴侶・・・。
その言葉に、僕は不覚にも涙ぐんでしまった。
ブライト・・・。
あなたは、そこまで僕のことをー。
まだ、出会って間もない、こんな出来損ないのオメガに過ぎない、この僕を・・・。
「黙れ、変態。やれ、アベル、そして、カイン」
「うがあっ」
「ヒイイッ」
二体の怪人がダッシュした。
突進するアベルのラリア―トを、間一髪、跳び退ってブライトがかわす。
が、着地がまずかった。
下剤の作用と下痢のせいで、足に力が入らないのだろう。
バランスを崩して、ぐらりとよろめいた。
そこに、唸りを上げて横殴りに襲いかかったのは、カインが放った長い首のひと振りだった。
「ぐわあっ!」
真横から、ブライトの腹にカインの紡錘形の頭部が食い込んだ。
予想外の頭突きを食らい、ブライトが弾け飛ぶ。
そのブライトを、体勢を立て直したアベルが背後から受け止め、羽交い絞めにした。
「や、やめろ・・・」
近づくカインを凝視するブライトの端正な顔に、恐怖の表情が刻まれた。
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