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第107話

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 小山に見えたのは、アラクネのなれの果てだった。

 ぐちゃぐちゃに折れ曲がった触手と脚に囲まれ、その奥であの美魔女がうつろに目を開けたまま死んでいる。

 アラクネの躰は内側から爆発したみたいに、内臓が外に飛び出していた。

 しかも、ただ飛び出ているだけでなく、湯気を放ちながら、グズグズ溶け始めている。

 あの無敵の強さを誇っていたこの魔族に、いったい何が起こったのだろう?

「だ、誰がやったの?」

 わけがわからず、僕は周囲を見回した。

 けれど、あたりに人の気配はない。

 ただ、夜明けを迎えた森の中で、鳥たちが鳴き始めているだけだ。

 助けが来たのだろうか。

 僕が射精の恍惚感に溺れて意識を失っているうちに、ブライトを探しに来た王国の騎士団がやってきて、アラクネを倒してくれたのだろうか?

「ねえ、僕らのほかに、誰かいるの?」

 もう一度、か細い声で叫んだ時だった。

「誰も居やしないさ」

 小山のようなアラクネの死骸に遮られた前方から、声がした。

 その声を耳にしたとたん、僕の両目から熱い涙が溢れ出した。

 ま、まさか、そ、そんなー。

 涙をぬぐいもせず、僕は魔族の死骸の後ろから現れた人影を凝視した。

 間違いない。

 その人影の正体は…。

「ブライト……生きていたんだね」
 
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