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第90話
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地面に突き刺さるように生えて来たのは、棘だらけの”肢”だった。
大きく折れ曲がったそれは、蜘蛛の脚に酷似していた。
まるで鋼でできているかのように黒光りする八本の肢がだしぬけに触手の切断面から生え、アラクネを持ち上げたのだ。
「フフフ、かかってこい。色男」
脚の中央で腕組みしながら、魔性の女が嗤った。
衣装からこぼれおちそうな紡錘形の乳房が、組んだ腕の上から周囲を睥睨している。
「それがきさまの本体か。醜いな。醜すぎる」
ブライトが挑発するように言い切った。
「なんだと?」
その一言で、アラクネのこめかみに怒りの青筋が浮き上がる。
「このあたしが醜いだと? 魔王様の側室すらをも務めるこのあたしが?」
まなじりが鋭角に吊り上がり、これまでの余裕が嘘のように、顏を真赤にして怒り狂っている。
「醜いものを醜いと言って何が悪い。きさまら魔族は総じて醜悪だ。おそらく魔王の美観が歪んでいるからだろう」
「おのれ、あたしを侮辱するだけでなく、魔王様までも…許せん」
シャーッ!
アラクネの真っ赤な唇の間から、獲物を威嚇する蛇を思わせる息が漏れた。
「そっちから来ぬならあたしから行くぞ。このオスアルファめが、ズタズタに切り刻んでくれるわ!」
開いた八本の肢が風を起こすように動き―。
次の瞬間、アラクネが予想外の攻撃に打って出た。
大きく折れ曲がったそれは、蜘蛛の脚に酷似していた。
まるで鋼でできているかのように黒光りする八本の肢がだしぬけに触手の切断面から生え、アラクネを持ち上げたのだ。
「フフフ、かかってこい。色男」
脚の中央で腕組みしながら、魔性の女が嗤った。
衣装からこぼれおちそうな紡錘形の乳房が、組んだ腕の上から周囲を睥睨している。
「それがきさまの本体か。醜いな。醜すぎる」
ブライトが挑発するように言い切った。
「なんだと?」
その一言で、アラクネのこめかみに怒りの青筋が浮き上がる。
「このあたしが醜いだと? 魔王様の側室すらをも務めるこのあたしが?」
まなじりが鋭角に吊り上がり、これまでの余裕が嘘のように、顏を真赤にして怒り狂っている。
「醜いものを醜いと言って何が悪い。きさまら魔族は総じて醜悪だ。おそらく魔王の美観が歪んでいるからだろう」
「おのれ、あたしを侮辱するだけでなく、魔王様までも…許せん」
シャーッ!
アラクネの真っ赤な唇の間から、獲物を威嚇する蛇を思わせる息が漏れた。
「そっちから来ぬならあたしから行くぞ。このオスアルファめが、ズタズタに切り刻んでくれるわ!」
開いた八本の肢が風を起こすように動き―。
次の瞬間、アラクネが予想外の攻撃に打って出た。
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