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第83話

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 階段を下りると、階下は見るも無残に荒らされており、予想通り、マサラおばさんは惨殺されていた。

 四肢をバラバラにされ、首が壁に剥製の水牛の頭部のようにめり込んでいる。

 僕には最後まで冷たく当たる人だったけど、これはあまりといえばあまりの仕打ちだった。

 あのふたりの獣人族がやったに違いなかった。

「むう・・・」

 さすがのブライトも不快げに顔をしかめた。

「なんて酷いことを・・・」

 家を出ると、外は血の匂いと肉の焼けるような匂いでむせ返らんばかりだった。

 見渡す限り横たわる死体。

 どの亡骸も無残に破壊され、五体満足のものを探すのが難しそうなありさまだ。

 家々の大半は焼け崩れて炭と化した柱だけになり、白い煙を上げている。

 村人の生き残りどころか、獣人族の姿も見当たらない。

 略奪を終え、すでに去ってしまったのだろうか。

 だとすれば、僕らにとって、これほどの幸運は他にない。

 いくらブライトが元気を取り戻したとはいえ、単身で獣人族の大群に勝てるわけないからだ。 

 それを見つけたのは、村のはずれの森の前だった。

 明らかに村人のものではないふたつの異形の死骸が、屠場の家畜のように無様に血の海の中につかっている。

「なんだろう…」

 折から雲間から顔を出した月の光に照らし出され、死体の様子が明らかになる。

 その正体に気づくなり、僕はハッと息を呑んだ。

 そんな、あり得ない。

「ブ、ブライト、これ…」

 恐怖で声が震えるのがわかった。

「いったい、誰が・・・?」

 そこに山積みにされていたのは、おびただしい数の獣人族の死骸だったのだ。
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